オランダで刺激的な日々を過ごす高木善朗=次々と若手が台頭するユトレヒトの環境とは

中田徹

新戦力の台頭により好調なユトレヒト

高木(左)がプレーするユトレヒトは若手の台頭が目立つ。互いに切磋琢磨しながら急成長を遂げている 【写真:VI Images/アフロ】

 ユトレヒトが好調だ。10節を終え4位アヤックス、5位フェイエノールトと勝ち点18で並んで6位なのだ。すでに首位トゥエンテを除く、全上位チームと対戦しているだけに価値ある順位だ。

 下馬評は低かった。昨季は11位という不振に終わったが、資金難から補強はほとんどなし。唯一、GKロビン・ラウテルが新戦力だった。ヤン・ワウタース監督の手腕に対するクラブ首脳陣の信頼も低かった。
 
 ところが、DFファン・デル・マーレル、ファン・デル・ホールン、デイヴィ・ブルトハウス、MFアヌアル・カリ、アダム・サロタ、トミー・オアーが突然ブレークを果たした。彼らは昨季、高木善朗とともにリザーブリーグとトップチームを行ったり来たりしながら、一軍定着を目指していたメンバーだ。
 
 この6人がグッと伸びたおかげで、ユトレヒトは補強をすることもなく選手層が厚くなった。もちろん、今季から採用している4−4−2フォーメーションがハマったことも大きいが、やはり新戦力の台頭あっての今の順位だろう。
 
 ヨーロッパは、短期間における若手選手の伸びシロが日本と違う――それは川島永嗣がプロになりたての頃、経験したことだった。19歳のとき、パルマに留学した川島は、「自分もイタリアでやれるな」と自信をつけた。しかしその1年後、もう一度、パルマを訪れてみると、一緒に練習をしていた若手GK陣の成長曲線が驚くほど急で「ヨーロッパの環境は違う」と驚いたのだという。今のユトレヒトを見ていると、川島のエピソードが頭をよぎる。

同世代のブレークに刺激を受ける高木

 10月26日、ユトレヒトはフローニンゲンを1−0で下した。高木は残り10分からトップ下として途中出場。プレー時間の割にはボールタッチも多く、元気そうにプレーしていた。しかし、今季の高木はようやくこれで4試合目の出場。すべて途中出場で、通算出場時間は55分に過ぎない。

「チームは完成しつつあり、理想に近付いていると思う。システムは4−4−2。リザーブチームは4−3−3なので、そこでやっている選手は戸惑いがあると思うけど、監督が熱心にコーチングするので、そこでカバーしています」と好調ユトレヒトを振り返る高木。
 
 では、自分自身はどうだろう。この日はPSV戦以来、実に1カ月半振りの出場だったのだ。
「出番が増えつつあるところで、けが(太もも)をした。そこから出場機会が減ったので、そこは反省点ですね。でも 去年の今ごろはほとんど途中出場が無かったので、そこは去年より成長できたのかな。あとはやっぱりスタメンをとりにいかないといけないと思います。最近、練習試合で点を取ったり、先週のリザーブリーグでアシストしたりとか、コツコツやってるのを評価してもらえてるのかなと思います」
 
 高木は、同世代の仲間がブレークしていることをどう思っているのか。
「俺は弾かれちゃって(苦笑)。チームとしては良い傾向だと思いますし、若い選手同士で切磋琢磨(せっさたくま)すればこういう良い結果にもつながると思う。若いんでね、勢いに乗るといけちゃうところもある。その勢いに乗り遅れないように、というところです。今は、彼らも疲れ始めている。チャンスは絶対来る。次に向けてやっていきたいです」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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