オランダで刺激的な日々を過ごす高木善朗=次々と若手が台頭するユトレヒトの環境とは

中田徹

「1年間を通して向上心がなくならない環境」

出場機会が限られているが、高木(中央)はハードワークを続け、前向きに次の出番を待つ 【写真:VI Images/アフロ】

 そこで川島のエピソードをぶつけてみた。彼がイタリアで、若い選手たちの伸びシロのスゴさに驚いたことを。高木も最近、それに関して思うところがあったようだ。

「それは単純にレベルが高いのと、アヤックスの選手を見ていて思うのは……。例えばツーロンでオランダ代表だったジョディ・ルコキは、今季のCLでレアル・マドリー戦に出ている。通用するとか、しないじゃなく、高いレベルに放り込まれて、そこで壁にぶち当たるから、そこでもう一回やろうと思う。1年間を通して向上心がなくならない環境なんだと思います。出たいと思っていたCLに出たら壁にぶち当たって、リーグ戦ではもっとできることが増えていく。

 ユトレヒトも下位相手、同じぐらいのチーム相手にはできても、アヤックスにはまったく通用しないとか、PSVには試合に勝っても“一対一”ではどうだったんだとか僕も含めてみんなが考える。ファン・ボメル(PSV)とのマッチアップは、去年まで世界のトップレベルでやって来た選手とのもの。何もやらしてもらえずというのを経験して、次やる時には……みたいなことで頑張ろうというんじゃないですかね。最近、僕はそう思いました」

次世代の若手が導くユトレヒトの明るい未来

 2シーズン前、ユトレヒトは主力選手が根こそぎ上位チームに奪われた。当時の彼らはヨーロッパリーグでセルチックに4−0で勝利、ナポリと0−0、3−3、リバプールとは0−0、0−0と大健闘をした。

「過去のユトレヒトの映像を見るとドリース・メルテンスとかケビン・ストロートマン(ともにPSV、前者はベルギー代表、後者はオランダ代表)とか、リッキー・ファン・ウォルフスウィンケル(現スポルティング・リスボン)、ミケル・フォルム(現スウォンジー、オランダ代表)らがいた。彼らは2シーズン前の選手。ユトレヒトの選手は後で『良いメンバーがいたなあ』と言われるぐらい成長する。僕も単純に映像を見ていて『豪華だなあ』と思いましたね。
 
 今のユトレヒトの主力メンバーは、当時のベンチにいた。 だから、2年前のメンバーと同じようになるため、みんな向上心があるんだと思います。今は本当に良い方向に向かっていますね」と高木が語る話は夢が広がる。

「調子がいいとね、ひょっとして行けるんじゃないかって。上位チームも食っちゃえ食っちゃえって。うちは去年から上位には結構強いんでね。ユトレヒトはどこの上位チームが相手でもあまり苦手意識が無い、珍しいチームだと思う」

 29日、リザーブリーグでユトレヒトはフェイエノールト/エクセルシオールを5−2で破り、高木もフル出場を果たした。

 実は、彼らは2カ月前、フェイエノールト/エクセルシオールに1−5のスコア以上の惨敗を喫していた。前述の6人に続く若手選手たちがまた、ユトレヒトの中で育ち始めている。高木は今、そんな環境で揉まれている。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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