予想外の躍進を見せる“ヤングエスパルス”=ゴトビ監督の下で成長する若手選手たち
スタメンの平均は約23歳
チーム内の得点王で若手の台頭を象徴する大前 【写真は共同】
そんな清水のスターティングメンバーには現役高校生の石毛秀樹を始め20代前半の選手が名を連ねるため、スタメンの平均年齢は約23歳とJリーグの中でも群を抜いて若い。それゆえ、最近では多くのメディアで「ヤングエスパルス」と呼ばれることが多くなっている。そのヤングエスパルスが、今年就任2年目となるアフシン・ゴトビ監督の下で大きな躍進を見せている。
振り返れば、2010年シーズンをもって前監督の長谷川健太氏が退任し、多くの主力選手が放出された清水だったが、周囲の心配をよそにここまでの躍進を果たしている。また、加えて言えば今シーズンは夏の移籍期間中にも岩下敬輔、枝村匠馬ら数名の主力選手が移籍。さらに、国内の移籍期間が終わった後の9月に入ってからも、小野伸二がオーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズFCに、アレックスがUAEのアルアインFCへと移籍した。これまでチームを支えてきた主力の放出による戦力ダウンは必至で、通常であればチームの成績も終盤に向け下降線をたどるものだ。しかし、実際はその予想に反して、戦力ダウンするどころか、逆にパワーを増して上位争いに加わっている。全くもって不思議な話だが、この躍進の理由はどこにあるのだろう。
原動力は若さと勢い
また、その若さというパワーがチームに勢いを与えているのは間違いない。リーグ戦で首位争いをしているベガルタ仙台とは9月29日の第27節に対戦したが、「彼らは非常に若返っていて、アグレッシブだし勢いに乗せれば、勢いそのままにプレーをしてくるぞ」と手倉森誠監督はミーティングで選手たちに警戒するよう伝えていたことを試合後の会見で明かした。このことからも分かるように、リーグ屈指の組織的な守備力で定評のある仙台でさえも警戒する清水の若さと勢いが躍進の原動力となっている。一度勢いに乗ってしまえば手に負えないというのが今の清水である。
個々の選手に目を向けても能力の高い選手が育ってきている。技術に優れ得点能力のある大前元紀(12得点)と、鋭いドリブルと強いシュートを放つ高木俊幸(8得点)の両ワイドに加えて、正確なクロスが持ち味の吉田豊、イ・キジェの両SBを加えた4人はリーグ屈指の破壊力を誇っているといえるだろう。ゴトビ監督が掲げるピッチを広く大きく使ったサイドからの攻撃は、大前、高木、吉田、イ・キジェという4人がいてこその戦術だ。また、この4人以外にも、八反田康平、河井陽介、石毛など、テクニックがあり、攻守でアグレッシブに動けて、ハードワークに労を惜しまない若くて活きの良い選手が控えている点も見逃せない。
彼らはプロ1年目や2年目であるにもかかわらず、戦術理解が高く複数のポジションでのプレーが可能であり、指揮官が与えた指示もしっかり全うするという従順さを持ち合わせている。これが、チームを率いてわずか2年という短い時間であるにもかかわらず、指揮官が理想とするチーム作りをここまで急速にできた要因だと想像できる。