体操金メダリスト・塚原直也、ロンドン五輪の先に見据える夢

矢内由美子

2011年7月の全豪体操選手権の個人総合で優勝した塚原直也(中央)だが、国籍を取得できずにロンドン五輪出場はかなわなかった 【写真は共同】

 2012年夏、ロンドン。世界各国からトップアスリートが集結し、4年に一度のスポーツの祭典が幕を開けた。厳しい国内選考を勝ち抜いて出場権を獲得してきた日本代表選手団も、最高のパフォーマンスを見せるべく、大舞台に臨む。
 中でも内外から高い注目を浴びているのが、体操ニッポンだ。内村航平(KONAMI)を中心とする5人の精鋭たちは、アテネ五輪以来8年ぶりとなる男子団体総合をはじめとする複数の金メダルを目指している。

 栄光の舞台で繰り広げられる感動ドラマは、見る者の魂をとらえて離さない。そして、ロンドン五輪に熱い視線を注ぐ者の中には、夢を追い求めて最後まで戦いを続けながら、その夢がかなわなかった選手もいる。

 塚原直也、35歳。五輪に3度出場している名選手であり、アテネ五輪男子団体の金メダリストでもある彼は、北京五輪の代表選考会で敗れると、翌2009年から活動拠点をオーストラリアへ移し、オーストラリア代表としてロンドン五輪に出ることを目指した。
 ところが、ロンドン五輪の出場資格となるオーストラリア国籍の取得は、滞在日数不足によりかなわなかった。塚原の4度目の五輪出場の夢は、北京に続いてまたしてもかなわなかったのだ。

体型は変わらず、情熱も変わらず

 衰えることのない情熱を胸に秘める男は、どのような思いでロンドン五輪を見つめるのだろうか。

「五輪に対する思いには、やはり以前とは多少の変化があります。年々、現状維持するだけでも必死という毎日になってきていますから。でも、リオデジャネイロ五輪出場に向けて可能性がある限り、あきらめずに体操に取り組んでいくという気持ちに変わりはありません」

 塚原は初めて五輪に出たころとまったく変わらない、穏やかな口調でそう言った。

 変わらないのは柔和な話し方だけではない。見た目では、研ぎ澄まされた肉体にも何ら変化を感じない。肩から上腕にかけての筋肉は隆々と盛り上がり、胸板の厚みも以前と同じだ。体脂肪は今も3パーセント以下を維持している。

「維持するだけでも大変」と言いながらも、「やろうと思えば50歳まででも現役選手としてできそうですよ」と浮かべる笑みも、以前のまま。体操選手としてストイックな食事や練習を続けているのは明白だ。

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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