団体の五輪メンバー決定 主将の田中琴乃「みんなと乗り越えてきたからこそ、ロンドンでは輝ける」=新体操・フェアリージャパン

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新体操「フェアリージャパン」の五輪代表メンバーに選ばれた6人。田中琴乃(一番右)以外は全員初出場となる 【スポーツナビ】

 日本体操協会は29日、ロンドン五輪に出場する新体操女子団体チーム「フェアリージャパンPOLA」の代表メンバーを発表し、主将の田中琴乃(日本女子体育大)ら6名の選手が会見を行った。

 ロンドンを目指して現在のチームが結成されてから約2年半。ロシアを拠点に厳しい合宿生活を送り、2011年の世界選手権で2大会連続の五輪出場権を獲得した。しかし、本番まであと3カ月に迫った5月、ブルガリアで開催されたW杯で主力メンバーの遠藤由華(日本女子体育大)が演技中に左足を骨折。遠藤は手術を受けて再起を目指したが、6月5日に代表候補から外れることが決まった。
 チームは急きょ、個人で代表を逃した山口留奈(イオン)ら3名の補充メンバーを加え、最終選考が行われるクロアチア合宿に出発。山崎浩子強化本部長が「最後の最後の日までどうなるか分からなかった。フェアリーという名前はついていますが“サバイバル”ジャパン、という状態でした」と語るほど、激しい代表争いが繰り広げられた。
 最終的に選ばれたのは、オリジナルメンバーの6名。コシノヒロコさんがデザインした「音符柄」と「滝柄」の2種類のコスチュームに身を包んで登場し、笑顔を見せた。

 ロンドン五輪の新体操競技は大会終盤の8月9日にスタート。団体は9日と10日に予選、最終日の12日に決勝が行われる。「まずは決勝に残る」(山崎強化本部長)ことを目標とするフェアリージャパンは、ボールで「セビリアの理髪師」、リボン・フープではクロアチア合宿の直前に変更したばかりという、北野武監督の映画「座頭市」のプログラムを演じる。

<フェアリージャパンPOLA・代表メンバー>

田中琴乃 20歳(日本女子体育大)
松原梨恵 18歳(国士舘大/ALFA)※初出場
サイード横田仁奈 18歳(国士舘大/ふじしま体操クラブ)※初出場
深瀬菜月 18歳(光明相模原高/秋田新体操クラブ)※初出場
畠山愛理 17歳(大原学園高/東京ジュニア新体操クラブ)※初出場
三浦莉奈 18歳(藤村女子高/ウーマンズ体操クラブ)※初出場

山崎強化本部長「苦しいときの方が力が出ることを確信」

フェアリージャパンを率いる山崎浩子強化本部長は、アクシデントを乗り越えて代表をつかんだ選手らにエールを送った 【スポーツナビ】

「今年5月、ブルガリアの大会で遠藤選手が競技中にけがをしてしまいました。その時のショックと言ったら……私を含めてスタッフ、そして選手にとって大きな大きなショックでした。なにしろ主力メンバーですから、これからどうなるのかと、本当に不安に駆られました。しかしながら、その穴を埋めようとこれまでのメンバーは必死に戦いました。
 そして、インナ(インナ・ビストロワ)コーチから、個人競技の選手、これからに続く選手含めてテストをして欲しいと言われ、国立スポーツ科学センターに集めて合宿を行いました。そこで3名に絞り、6月8日からのクロアチアの合宿に3名を加えた9名を連れて行きまして、インナコーチがメンバーを決定する、という策に入りました。

 ボールの方は田中琴乃が遠藤のポジションを埋めました。リボン・フープでは、誰が入るのか、日々本当に入れ替わりながらやりました。私たちも最後の最後の日まで、どうなるのか分からずに、練習を見守るしかありませんでした。
 でも、その新しい団体補充候補の選手たちが一生懸命に頑張ってくれたおかげで、遠藤がいなくなったというマイナスのエネルギーよりも、ここは頑張らなければ新メンバーに取られてしまうかもしれない、という現メンバーたちの頑張り、そして新メンバーたちも絶対に(代表を)取ってやるという大きな頑張り、それによって、フェアリーという名前は付いてますけど、“サバイバル”ジャパンというような状態で日々過ごしています。
 
 でも、平たんな道よりも、やっぱり苦しいときの方が力が出るということを確信しました。そのような中でつかみ取ったポジション、メンバーの座。これはかけがえのない大切なものであり、選手たちにとっても大きな自信となったと思います。そして、今回残念ながらメンバーには入れなかった選手たちも、たくさんの経験をして、これからの新体操人生に大きな力になると思います」

田中琴乃「明るさを忘れずに、楽しみながら演技をしたい」

唯一の五輪経験者となった田中は「練習をしっかりとして、堂々とフロアに乗りたい」と力強く語った 【スポーツナビ】

「北京オリンピックから続いて2度目の出場になるのですが、これまでの経験をもとに、残りの1カ月、どれだけ自分たちとの戦いを乗り越えていけるかだと思います。その中でも苦しいことに負けるのではなく、私たちの長所である明るさを忘れずに、楽しみながら演技をしたいです。メダルが目標ですが、メダルに値する練習をしっかりとして、堂々とフロアに乗りたいと思います。
 
 2007年の世界選手権の時、チームメートに『やり切る!』という言葉をもらったのですが、団体のチームメートからもらったこの言葉を大切にしています。やり切るためには、それまでの練習を全力でやり切らなければ本番でやり切ることができないので、それを大切にしたいと思います。

(この2カ月弱はとても濃い時間だったが、振り返ると?)
「いろんな事があって、喜怒哀楽がいろいろあったんですけど、やっぱりつらいことがあった後には喜びが待ってますし、喜びに向かってみんなが前進してきています。日々楽しいことばかりではないと思うので、つらいことがあって、みんなと乗り越えてきた2カ月半があるからこそロンドンでは輝けるんではないかと、私は信じています」

<了>
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