体操NHK杯で五輪代表決定、金メダルを狙うメンバーは?=代表選考のポイントを解説
五輪団体の金メダルへ練り上げられた男子の選考
世界選手権で個人総合3連覇と別格の内村は五輪代表に内定 【坂本清】
北京五輪まで、体操の団体戦は1チーム6人だったが、ロンドン五輪から5人になった。このため代表選考は、男子が内村以外の4人、女子は5人を決めることになる。
男子の選考方法は、いささか複雑だ。選出の条件をすべて書いていくと、あまりに煩雑になるので、要点だけを見ていくことにしよう。
内村は昨年、世界選手権で個人総合3連覇を達成して内定している。あとの4人の選考は、すでに、4月上旬に行われた全日本選手権から始まっている。
全日本選手権2日間(両日とも各選手が全6種目を演技する)を終えて、選手たちは現在、全日本選手権・合計得点の50%を「持ち点」として保持している。この「持ち点」に、NHK杯2日間の得点をそのまま加算して、得点順に上位から11位以内に入った選手が、ロンドン五輪代表の対象選手となる。
この11人から、どのように代表4人を選ぶのか。これは、日本が団体戦で金メダルを取るために、最も有効な選手が選ばれる可能性を高めるべく、工夫されている。
ロンドン五輪の団体戦決勝は、各チーム5人の中から、種目ごとに3人が演技を行って、その合計点で順位が決まる。内村以外に、どの種目を得意とする選手が入れば、チームとして最も高い得点を記録できるのか(例えば5人全員が平行棒が得意でも、1種目3人しか演技はできないので、戦力が余ってしまうことになる)。これを検討した結果、次のような選考方法が決まった。
ゆかと鉄棒が重点種目
北京五輪代表の沖口は全日本選手権2日目のゆかで1位を獲得 【坂本清】
選考の対象になっている全日本選手権2日間と、NHK杯2日間の演技は、1日ごとに各種目の順位が出る。その中で、ゆか、または鉄棒で、1位を2日間以上取った選手は、優先的に代表に選ばれるのである。
全日本選手権の結果を見ると、ゆかでは1日目に加藤凌平(順大)、2日目に沖口誠(KONAMI)が1位。鉄棒は1日目に水鳥寿思(徳洲会)、2日目に植松紘治(KONAMI)が1位になっている。重点種目で1位を取ったこの4選手は、現在有利な立場にある。
大学1年生で、まだ18歳の加藤は昨年から注目されていた若手。仮に、NHK杯で2日間とも1位を取れば、個人総合の11位以内はほぼ間違いない(全日本選手権2日間合計で2番手)ため、文句なしの代表入りとなる。北京五輪代表の沖口も、ゆかは1日目15.150で3位、2日目15.450で1位と実力を見せている。ただ加藤は1日目15.350で1位、2日目も15.400で2位と、全日本選手権では安定した演技を見せただけに、加藤が一歩リードしている感じではある。
鉄棒で1位を取ったアテネ五輪代表の水鳥と、10年世界選手権代表の植松も有利な立場にはあるものの、個人総合の順位が全日本選手権終了時点で16位と13位。このためNHK杯では、鉄棒で1位を取ると同時に、さらに、個人総合での順位を、通算11位以内まで上げることが、代表入りへの条件になる。
もちろん、NHK杯で、加藤、沖口、水鳥、植松以外の選手が、ゆか、鉄棒で1位を取る可能性もある。全日本選手権とNHK杯の4日間で、1日ごとに違う選手が1位になる――つまり、ゆか、鉄棒、それぞれで、1位を取った選手が4人出る、ということも考えられる。
その場合は、その4人の中から、次のような方法で代表を決める。全日本選手権、NHK杯の4日間で、全6種目とも1位に3ポイント、2位に1ポイントという点数を与え、この点数の合計が、一番多い選手に代表権が与えられるのである。
このようにして、ゆか、鉄棒の得意な選手が1人ずつ選ばれる。