体操NHK杯で五輪代表決定、金メダルを狙うメンバーは?=代表選考のポイントを解説

小川勝

残る2枠は総得点で1人、種目別ポイントで1人選出

山室は日体大の同級生・内村とともに五輪に出場することができるか? 【坂本清】

 代表枠は残り2人。これは、ゆかと鉄棒で選ばれた2人を除いて、まず、日本選手権・全得点の50%と、NHK杯の全得点とを合計した通算個人総合ランキングで、一番上位にくる選手が選ばれる。現時点では、田中3きょうだいの長男、田中和仁(徳州会)が個人総合でトップに立っているため、この枠で代表入りする最右翼だ。

 そして残りの1人は、すでに決まった選手を除いた中から、種目ごとのポイント(1位3ポイント、2位1ポイント)の合計で、最上位の選手が選ばれる。現在、この枠では、つり輪で全日本選手権2日間とも1位、跳馬でも1日目1位だった山室光史(KONAMI)が優位に立っている。日体大時代から、内村の同級生として切磋琢磨してきた山室にとって、一緒にロンドンに行くことは譲れない目標だ。

 そのほか、田中3きょうだいの二男、田中佑典(KONAMI)は平行棒で2日間とも2位を取ってポイントを稼いでおり、3きょうだいでの五輪出場に意欲を燃やしている。 また、昨年世界選手権の日本代表チーム主将の小林研也(KONAMI)は、あん馬でポイントを稼いで、代表権を狙える位置に付けている。この種目別ポイントでの代表争いが、実力的に接近した選手が多いため、最も厳しい戦いになりそうだ。

女子はシンプル、個人総合の上位5選手が五輪へ

女子の五輪代表争いでトップに立つ田中理恵 【坂本清】

 女子の代表選考は、男子よりずっと分かりやすい。日本選手権とNHK杯の成績を、そのまま合計して、個人総合の上位5人がそのまま選ばれる。

 日本選手権を終えた時点で、1位・田中理恵(日体大研究員)、2位・寺本明日香(レジックスポーツ)、3位・美濃部ゆう(朝日生命)、4位・新竹優子(羽衣国際大学)と、ここまでは昨年の世界選手権代表が順当に上位に付けている。そして5位に付けているのが16歳の笹田夏実(帝京高校)。母親は、全日本選手権優勝3回、1980年モスクワ五輪幻の代表だった加納弥生さん。NHK杯で、親子2代の五輪代表を目指すことになる。

 昨年まで全日本選手権を6連覇していた鶴見虹子は、今年1月の合宿で左手甲を亀裂骨折したため、段違い平行棒とゆかで技の難度を落とさざるを得ず、現在7位にとどまっている。まだ日体大1年の19歳だが、前回の北京五輪でも中心的なメンバーだった。本来持っている技のレベルが、日本のトップレベルであることは間違いない。
 現在の得点は105.800で、代表ラインの5位・笹田(108.200)とは2.400の差。女子は全部で4種目だから、NHK杯の2日間、合計8回の演技でこの差を追い付くには、1種目平均で0.3ずつ笹田を上回る必要がある。かなり厳しい状況だが、本来の実力をもってすれば、逆転不可能ではない。

 2位の寺本(109.000)から6位の飯塚友海(107.800=朝日生命)までは、大きな差がない。飯塚は昨年の世界選手権で代表に選ばれながら、団体戦・跳馬の試合前ウォーミングアップで転倒、ひざに裂傷を負って戦線離脱という悔しい経験をしている。それだけに五輪に向けた意欲は高いものがある。事実上、6位の飯塚、7位の鶴見までが代表争いに加わる形になると思われる。

<了>

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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