ウェスタン・カンファレンス、台風の目は若手台頭の宮崎=bjリーグ

柴田愛子

チームの柱が相次いで離脱 苦境を支えた若手の成長

キャプテンとしてチームを引っ張る清水(右) 【(C)MIYAZAKI SHINING SUNS/bj-league】

 宮崎の勝ちパターンは、5人でボールをシェアし、的を絞らせないオフェンス。そして粘り強いディフェンスも持ち味だ。後半20分でディフェンスの要である伊藤拓郎を投入することで、さらに勝負どころで相手の攻撃を抑えることができ、後半の踏ん張りにつながっていた。チームのスタイルが確立されたことで連敗を脱出した宮崎は、勝ち星も続いて調子は上向きだった。しかしそんな矢先、再び試練がチームを襲う。

 12月に入り日本人選手で高さのある小島佑太がけがにより離脱。さらに勝負強い伊藤が左半月板の損傷で長期離脱となってしまう。それとほぼ同じ時期に清水太志郎も騙し騙しプレイしていた腰の具合が悪化。チームの柱が相次いで離脱するという極めて厳しい事態となった。このままではまた開幕当初に戻ってしまうのか……再び訪れた窮地にチームにはマイナスの雰囲気が漂っていたという。

 しかしそこで宮崎が沈んでしまうことはなかった。チームを鼓舞し支えたのは、米澤翼、大石慎之介、月野雅人ら若手の活躍。主力が抜けた穴を埋め、チームに活気を与えたのだ。

 若手中心で戦うこととなった宮崎だったが、大きく負け越すこともなく、ここまで1勝1敗で乗り切ってきた。「彼らは今がチャンスだと思って頑張ってくれた。堂々とプレイするその働きをうれしく思う」と遠山HCもさらなる期待をよせる。

「米澤、大石、月野のいいところは、この状況に満足していない貪欲さだ。だから常に上を目指そうと努力している。スタッツシートには出ない真面目で献身的なプレイがチームに伝染し、周りにもいい影響を与えている」(遠山HC)。数字には表れない彼らの働きが今のチームを支えているのだ。

 若手三銃士の中で、特にめきめきと頭角を現してきたのが米澤。九州産業大卒業後、地元のクラブチームでプレーしていた経歴の持ち主で、宮崎に入団した昨シーズンのプレーイングタイムはわずか27分。ほとんど試合経験のなかった米澤だが、今季は日本人選手で清水選手に次ぐプレーイングタイム・得点でチームを支える活躍を見せる。

「去年はほとんど試合に出られなかった。試合に出たとしても、リバウンドにからめていなかったし、1対1でも飛ばされていた。思っていた以上に通用しない自分がいた」と米澤。周りと比べスピードもパワーも劣っていると痛感させられたという。

 このまま同じように練習していたのではダメだと感じた米澤は、独自にメンタル強化に力を入れ、さらなるスキルアップに取り組んだ。自己評価表を作って具体的な目標を細かく設定し、達成できれば次の目標に向けて努力する。「この方法を始めてからすごくうまくいっていると思うし、目標を達成するたびにさらに前向きになれる。何よりも会場の盛り上がりをコート上で感じられたことが、自分のモチベーションを上げている」。もっとうまくなりたいという貪欲さが、彼の原動力となっているのだ。「目指すのは流れを変えられるプレーヤー。アグレッシブにディフェンスをしたり、先頭切って走ることで、チームに活気をあたえたい」とさらなる飛躍を誓う。

今後の課題はやんちゃなミムズの意識改革?

 チームの底上げが順調に進んでいる中で、新たな課題もある。

 シーズン前半戦では後半に粘りのバスケを見せていた宮崎だが、ここ最近は3Qで失速する傾向にある。「伊藤のけがが不安で彼のプレーイングタイムを20分に抑えていた時は、伊藤が出ていない前半に点が取れていなかった。しかし伊藤が抜けた後は、後半の入りが悪い。そこをなんとか修正しないといけない」と遠山HC。

 伊藤が離脱した後、オニール・ミムズを新たに迎え、新システムに取り組んでいるが、なかなかうまくいかない様子。「ミムズはリバウンド・ブロックショット・得点力のある選手だが、システムに合わせるよりも、まセルフィッシュなプレーが目立つ。彼が勝手に動くことで周りがカバーに追われている。せっかく丁寧に仕上げてきたチームだが、彼の暴走によってシステムどころではなくなってしまうのが問題。さらに上を目指すには彼の能力は必要だが、今のスタイルではだめ。もっとミムズがチームで一番汗をかかなくてはならない」と遠山HCはミムズ選手のやんちゃぶりに頭を悩ます。

 しかし最近いい兆しも見えつつあるようで、彼がチームにフィットした時が、宮崎の本領発揮といえそうだ。

大物食いの宮崎が終盤戦を盛り上げる

 2月29日現在、宮崎はウェスタン・カンファレンス7位だが、興味深いのが時々上位チームを破ることだ。ウェスタン2位の大阪には2勝0敗、イースタンの1位浜松・東三河フェニックス、2位秋田ノーザンハピネッツには1勝1敗。「個々の能力では相手が優っていてもチーム力では負けていないということだ」と遠山HCも自信をのぞかせる。

 しかし反対に20連敗中の高松ファイブアローズに白星をプレゼントしたり、連敗中で調子の悪いチームにも勝ち越せないという不安定さもある。いい意味でも悪い意味でも相手に合わせてしまうのが今の宮崎といえるだろう。
「どんな相手でも集中して丁寧にプレイしようと心掛けなければならない。そこを修正しない限り上へはあがれない」(遠山HC)。

 宮崎は今後、島根スサノオマジック、琉球ゴールデンキングス、大阪、京都ハンナリーズという対戦カードが続く。上位に進出するためにはまずは6位島根との直接対決を制し、その後の上位陣との対戦に弾みをつけたいところ。「上とまだ勝率の差はあるが、終盤もっと混戦してくると思う。その時点で乗り遅れないためには、今の時点で差を詰めておかなくてはいけない」今がチームとして一番踏ん張る時なのだと遠山HCは気を引き締める。

 今シーズンも残すところあと2カ月。逆境を乗り越えてチームとしてさらに成長しつつある宮崎が、今後どんな戦いをみせてくれるか楽しみだ。

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