重友梨佐 24歳の新ヒロイン誕生 天満屋から4大会連続の五輪出場へ=大阪国際女子マラソン

中尾義理

天満屋から4大会連続の五輪出場なるか

26キロ付近から遅れ始めた福士。五輪はトラック種目で目指すことになりそうだ 【写真は共同】

 沿道やテレビの前で観戦した人の中で、「重友梨佐」の名前を聞いて、どれだけの人がピンときただろうか。24歳の重友は岡山・興譲館高出身の実業団6年目。高校3年時に全国高校駅伝の2区を区間2位で走り、チームの優勝に貢献した。全国的にはチームメートで全国高校駅伝1区3年連続区間賞の新谷仁美(佐倉アスリート倶楽部)への注目度が高かったが、主将としてチームをまとめたのは重友だった。中学時代から地元・天満屋のピンクのユニフォームにあこがれ、「天満屋でマラソンがしたい」と願い続けてきたという。
 
 天満屋の武冨豊監督は早くから重友に大器の予感を抱いてきた。昨年の名古屋国際女子マラソンで夢を叶える第一歩を踏み出そうとしたが、東日本大震災の影響で大会が中止に。スライド出場した4月のロンドンマラソンは2時間31分28秒で24位と振るわなかった。しかし、昨年9月のハーフマラソンで1時間12分34秒の自己新をマークすると、12月の全日本実業団女子駅伝では最長区間の5区で2年連続区間賞の走り。追い風に乗って挑んだ今回の大阪だった。

「先頭ではなく、追う展開になると思っていました。ペースメーカーがいいリズムをつくってくれて、それにしっかりついていこうと。(26キロ以降)『福士さん、がんばれ』という声が聞こえなくなって『あれ?』と思いながらも、振り返らなかったので後ろの状況は把握できていませんでした」と重友。精神力を問われる独り旅を粘り強く乗り切った。

 シドニーの山口衛里(元天満屋女子陸上競技部でコーチ)、アテネの坂本、北京の中村友梨香に続いて、重友が五輪代表に決まれば、天満屋は4大会連続で五輪に選手を送り込むことになる。武冨監督は「小さいころから『天満屋で』と思ってくれていた子がここまで成長してくれて、ほっとしています」と目を細めた。

福士、ロンドン五輪はトラック種目で

競技場で海外招待選手に抜かれて3位となった野尻は自己記録を32秒更新。ノルディックスキーの五輪代表候補から陸上に転向した異色のキャリアを持つが、「私に与えられた五輪へのチャンスはここ。今日は全力をぶつけられたと思います」とすがすがしい表情を見せた。

「ロンドン五輪はマラソンで」と不退転の決意で臨んだ福士は、転倒を繰り返しながらフィニッシュにたどり着いた4年前ほどではなかったが、今回も大阪で惨敗した。「エネルギー不足さえ気をつければ。これからも失敗するんでしょうね。でもいつか成功したい」と福士。1カ月半後の名古屋再挑戦は「あまり考えていません」。ロンドン五輪へは得意のトラック種目狙いに切り替えることになる。

 日本歴代上位の好記録で優勝した重友は、ロンドン五輪代表“当確”と見ていいだろう。前半はペースメーカーのすぐ後ろを走り、ペースメーカーが外れてからも福士を一度も前に出さず、独り旅でも大崩れしなかった。その堂々たるレース運びも評価を高めた。
 アフリカ勢を核とする世界勢力とはまだ差があるが、2007年11月の野口以来の日本人2時間23分30秒未満の優勝タイム。この日のレースで見せてくれた強さは伸びしろがある。トラックで華々しい記録と実績を持っていても、それをそのままマラソンに持ち込めるわけではない。反対に、トラックで目立たなくても、マラソンで花を咲かせることができる。それが示されたレースだったといえる。

<了>

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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