重友梨佐 24歳の新ヒロイン誕生 天満屋から4大会連続の五輪出場へ=大阪国際女子マラソン

中尾義理

大阪国際女子マラソンで2時間23分23秒の好タイムで優勝した重友。ロンドン五輪代表に大きく近づいた 【写真は共同】

 女子マラソンに新ヒロイン誕生――。
 ロンドン五輪の陸上女子マラソン代表選考を兼ねた第31回大阪国際女子マラソンは29日、大阪・長居陸上競技場を発着する浪速路で行われ、マラソン2回目の重友梨佐(天満屋)が日本歴代9位となる2時間23分23秒で制した。「すごくうれしい気持ちでいっぱい。五輪は夢の舞台。(代表選出の)アピールができてよかった」と重友が喜ぶように、記録が伴った優勝。現時点でロンドン五輪女子マラソン代表に一番近い存在となった。
 3位でフィニッシュした野尻あずさ(第一生命)が日本人2位で、自己新の2時間24分57秒をマーク。トラック長距離の第一人者・福士加代子(ワコール)は後半失速し、2時間37分35秒の9位に終わった。

新鋭・重友が実力者を振り切り、レースを制す

 今回のレースは、アテネ五輪女子マラソン金メダリストで日本記録(2時間19分12秒)保持者の野口みずき(シスメックス)が4年2カ月ぶりにマラソンに復帰すると表明し、「トラックの女王」と称される福士との初対決が見られることなどで話題を集めた。しかし、野口が大会4日前の25日、左太ももの筋肉炎症のため欠場を発表。北京五輪の出場を回避して以降、度重なる故障を克服し、ロンドン五輪に向けて気持ちも練習量も充実していただけに、なんとも悔やまれる。
 野口はファンに向けて「私は諦めません」と力強いコメントを発表し、ロンドン五輪代表選考の最終レースとなる3月11日の名古屋ウィメンズマラソンに目標を切り替えて調整していくことになった。幸い炎症は軽度だという。復活の快走を待ちたい。

 野口不在のレースで、注目を一身に浴びたのは福士だった。ほかにも昨夏の世界選手権(韓国・テグ)代表の野尻、前回3位の堀江知佳(ユニバーサルエンターテインメント)、アテネ五輪7位の坂本直子(天満屋)、期待の新鋭・重友ら、五輪代表選考レースにふさわしい実力者が名を連ねた。2時間22分台をにらんで、最初の5キロを16分50秒〜55秒のタイムに設定されたペースメーカーがつくことを考えると、レースは自然に高速化することが予想された。
 
 迎えた号砲、ペースメーカーの近いところに重友、先頭集団後方に福士が位置を取った。5キロ16分55秒、10キロ33分48秒と快調なペース。15キロすぎに坂本が脱落すると、勝負は早くも重友、野尻、福士の3人に絞られた。中間点は1時間10分58秒。国内では久々の高速レースだ。たまらず野尻が後退し、重友の後ろに福士がつく形で25キロを通過。2人ともまだ余力のある表情に見えた。
 
 しかし26キロで、福士の動きが急変。ずるずると失速していった。レース後、福士は「エネルギー不足ですかね。25、26キロで脚が重いな、でもなんとかなるかなと思ったんですけど、どんどん固まっちゃって」と苦しい場面を振り返った。
 重友の長い独り旅。30キロ以降でさすがにペースが鈍ったが、競り合う相手がいない状況ながらも踏ん張り、ロンドン五輪への希望をつかんだ。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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