巻の妹も突破に手応え「チーム力は上がっている」=女子ハンドボール、実力拮抗のアジア予選

小川勝

巻加理奈、なでしこから刺激

五輪アジア予選に向けて「チーム力は上がってきている」と手応えを口にする巻加理奈 【写真:Atsushi Tomura/アフロスポーツ】

 ハンドボールのロンドン五輪女子アジア予選が10月12日から中国の常州で開催され、女子日本代表が36年ぶりの五輪出場に挑む。1位にロンドン五輪出場権が与えられ、2位は来年の世界最終予選に回る。昨年の広州アジア大会で準優勝するなど力を伸ばしている女子日本代表に、1976年モントリオール五輪以来となる五輪出場への期待が高まっている。

 代表メンバーには、サッカーW杯ドイツ大会の日本代表だった巻誠一郎(東京V)の妹、巻加理奈(オムロン)もいる。36年ぶり五輪の可能性と、代表チームの現状について見てみたい。

 なでしこジャパンのW杯優勝に刺激を受けた巻は「続きたいです」と気持ちを高めている。もともと、なでしこジャパンとはアジア大会や、味の素ナショナルトレーニングセンターで一緒になったことがあり、DFの岩清水梓(日テレ・ベレーザ)とは個人的にも親しい。サッカーとハンドボールは、GKをかわしてシュートを決めるという競技性も似ているため、なでしこジャパンの世界一は、ハンドボール女子日本代表にも大きな刺激となった。

「アイスホッケーの体験は大きい」と巻

 今年は東日本大震災の影響で、3月の日本リーグ・プレーオフや、6月の国際大会「ジャパンカップ」が中止になり、選手たちはプレーする機会が少なかった。代表チームは7月の広島国際大会、9月の欧州遠征で強化をはかってきたが、その中で、今年から主力で起用されるようになったのが巻だ。

 試合中、選手交代が自由にできるハンドボールでは、攻撃の局面と守備の局面で、選手が入れ替わることは珍しくない。何人かは「攻撃中心」あるいは「守備中心」でプレーする選手が出てくる。巻は「守備中心」の選手だ。

 巻がハンドボールを始めたのは中学校から。小学校時代は、父親が少年アイスホッケーチームの監督をやっていたため、兄の誠一郎と一緒にアイスホッケーをやっていた。チームの男の子たちがFWをやりたがる一方で、妹の加理奈はDFをやっていた。激しいぶつかり合いで相手FWの攻撃を阻止する――この小学校時代の体験が、のちにハンドボールで役立ったと言う。

 「アイスホッケーの激しさはハンドボールに近い。接触を怖がる人もいるんですけど、私は接触には抵抗がないんですよ。アイスホッケーの体験は大きいと思います」
 身長168センチだから、高さはないが、押されても押し返すフィジカルの強さが持ち味。兄と同様の熱いプレーを見せる。

 女子日本代表の現状について、巻は「走力にしてもウェートトレーニングにしても、昨年のアジア大会の時と比べても、みんな上がってきている。チーム力は上がってきていると思う」と手応えを口にする。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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