巻の妹も突破に手応え「チーム力は上がっている」=女子ハンドボール、実力拮抗のアジア予選

小川勝

韓国1強からアジア4強の勢力図へ

広州アジア大会では強豪・韓国を破り、決勝に進出した日本代表 【写真は共同】

 アジアの女子ハンドボールはずっと韓国の独壇場だった。自国開催の1988年ソウル五輪で金メダルを獲得すると、続くバルセロナ五輪でも連覇。96年アトランタ五輪は銀メダル、2004年アテネ五輪銀メダル、08年北京五輪でも銅メダルだった。アジアナンバーワンはもちろんのこと、五輪のメダル常連国だったのである。

 08年9月、日本は「打倒・韓国」を旗印に、その韓国から黄慶泳監督を招へい。「打倒・韓国」=「アジア1位」であり、それはすなわち、五輪出場を意味する。
 以来、韓国のプレースタイル(1対1からフェイントで抜くことを重視する)に対応する戦術とトレーニングが積まれ、昨年11月の広州アジア大会では、準決勝で大会5連覇中だった韓国を29−28で撃破。昨年12月のアジア選手権(カザフスタン・アルマトイ)でも韓国と予選リーグで対戦し、22−22で引き分けた。昨年の2大会では、負けていないのだ。

 しかし、広州アジア大会とアジア選手権の順位は、次のようなものだった。

・アジア大会 : 優勝・中国、2位・日本、3位・韓国、4位・カザフスタン

・アジア選手権 : 優勝・カザフスタン、2位・韓国、3位・中国、4位・日本

 つまり現在のアジアは、韓国の力がやや落ちて、この4カ国で「4強」を形成しているのである。アジア選手権で日本は4位だったが、中国との3位決定戦は25−26と1点差負けだった。現在、この4カ国の実力は非常に接近していると見ていい。

日本のテーマは「スピード、スタミナ、テクニック」

 黄監督が掲げる、日本女子のテーマは「スピード、スタミナ、テクニック」。今年に入って、体力トレーニングのレベルはさらに高くなり、主力選手たちも基礎体力がアップしている。平均身長168.6センチと、体格面で引けを取る女子日本代表にとって、この3つの要素は不可欠だ。

 日本の得点源の1人、植垣暁恵(広島メイプルレッズ)は、ベンチプレスのウェートが昨年より上がって「アジア大会のころは70キロに行くか行かないかだったんですが、今年はMAXで82.5キロです」と言う。
 82.5キロといえば、自身の体重より20キロ近く重いウェートだ。ベンチプレスで自分の体重プラス20キロを挙げることのできる女性アスリートは、日本にはめったにいない。

 こうしたパワーの向上は、中国など、体格面で格上の相手と対戦する際に生きてくるはずだ。

 ロンドン五輪アジア予選では、まず予選リーグB組で韓国、北朝鮮、カタールと対戦する。A組に中国とカザフスタンがいる。順当なら日本は準決勝で中国かカザフスタンと当たる組み合わせだ。(※予選の対戦形式変更。詳しい内容は文末を参照)

 今回2位で、来年の世界最終予選に回ると、アジア予選よりも厳しい戦いが予想される。やはり、アジア1位で切符を取ることが日本の目標だ。

 企業チーム選手が中心だが、植垣のようにクラブチームの選手もいて、その意味では女子サッカーとよく似ている。なでしこジャパンに続く歓喜の切符を獲得できるか、注目したい。

<了>

日本の試合日程
10月13日 18時〜 カザフスタン戦
10月15日 20時〜 中国戦
10月17日 18時〜 北朝鮮戦
10月19日 18時〜 トルクメニスタン戦
10月21日 18時〜 韓国戦

※日程は本文記事掲載後、カタールの出場辞退により対戦形式変更。予選リーグなしの総当たり戦に。時間はすべて日本時間。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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