道半ばで終わったC大阪のチャレンジ=失敗を成功の糧にするために
成長著しい清武の存在感は増すばかり
C大阪の新たな顔へと成長した清武(右)。香川、乾ら主力が抜けた穴を埋め、今や欠かせない攻撃の核となった 【Getty Images】
播戸はプレー面だけでなく、ピッチで常に味方を鼓舞するなど、姿勢やその言動でもチームに貢献している。後ろから見守るセンターバックの上本大海は「前からあれだけ声を出してくれると、後ろは助かる。ピッチ上に、バンさん(播戸)くらい声を出す選手が5人ほどいれば、チームはもっと強くなる(笑)」と冗談めかして、その存在の大きさを語る。
一方で、乾の離脱による穴は決して小さくはなかったが、成長著しい清武がその穴を埋めた。清武は、今季序盤のチーム全体の攻撃がかみ合っていない状態を劇的に変えただけでなく、その後もチーム内での存在感は増すばかりで、今やC大阪にとどまらず、日本代表とU−22代表の双方から必要とされる選手になった。ただし、全北現代戦では、21日に行われた五輪アジア最終予選のマレーシア戦での負傷によって、本来の動きには程遠かったことを考えると、今回はクラブが割りを食った形となった。
クルピ監督は「代表に呼ばれることによるモチベーションの高さや勢いを日ごろから感じている。そういった若さや勢いがある時は、疲れは感じないもの。自分の好きなサッカーに打ち込めることが本当に幸せそうに見える」と選手の心理面に配慮したコメントも残しているが、今後は協会とクラブで優先順位をきっちりと決め、選手を保護する必要がある。「出られるのなら、すべての試合に出たい」と言った清武本人の強い意思もあるだろうが、やはり試合数には限度がある。
また、ピンパォンの契約満了に伴い、新たに獲得したブラジル人MFファビオ・ロペスにも触れておきたい。来日して間もなく、仲間から「ボールタッチがシンプルなので、合わせやすい」(倉田)、「味方の生かし方を分かっている感じのプレーをしてくれるから、無意識のうちにうまくやれる」(播戸)とのコメントが出たように、チームにもすんなりと受け入れられた。デビュー戦となった第21節の大阪ダービー以降の数試合こそ、存在感を示す時間は短かったが、第24節の浦和レッズ戦でアシストを重ねて勝利に貢献すると、その後もコンスタントに決定機に絡んでいる。全北現代戦でも、C大阪唯一の得点となった小松塁のゴールをアシストした。
強豪の地位を築くためにタイトル獲得を
今回の全北現代戦のように、前から激しくプレスをかけられた時にチーム全体が機能不全に陥る姿は、今季のJリーグ第5節のヴィッセル神戸戦でも見られたC大阪の弱点である。低い位置からのビルドアップに特長があるとはいえ、ピッチ状態や時間帯、相手の戦術との兼ね合いに応じて柔軟に試合を運ぶ力が不足している。今回のACLで対戦したインドネシアのアレマ・インドネシア以外のアウエーで勝てなかったことも、その辺りに原因がある。また、バイタルエリアでの守備における根本的な1対1の力も足りない。
そういった足りない部分を埋めるのは日々のトレーニングだが、タイトルを1つ獲得することで、経験を埋めていくことも方法論である。現在のチーム力を持ってすれば、リーグ戦以外のタイトル獲得の可能性は十分にある。ナビスコカップに天皇杯と、今後は短期間で獲得できるタイトルが目の前に並ぶ。日本代表における香川や清武の活躍によりC大阪というクラブに対する注目度は上がっている。そして、近年のチームに確かな成長と勢いが感じられる今だからこそ、C大阪が真の強豪としての地位を築くために、その足掛かりとなるタイトル獲得を目指したい。アジアの頂きを目指すチャレンジは道半ばで終わってしまったが、C大阪はその歩みを止めてはならない。
<了>