道半ばで終わったC大阪のチャレンジ=失敗を成功の糧にするために
惨敗を喫すもチャレンジは色あせない
C大阪はアウエーで全北現代に1−6の大敗を喫し、準々決勝敗退。初のACL挑戦はベスト8で終わった 【Getty Images】
セレッソ大阪にとってクラブ史上初となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の挑戦は、ベスト8で止まった。27日にアウエーで行われた全北現代モータースとの準々決勝第2戦は、相手のラフプレーにも苦しみ(キム・ボギョンへのアフターでの頭突きは明らかに一発退場レベルの悪質さだった)、完敗に終わった。ただ失点を重ねていく姿に無力感にも襲われた。
しかし、惨敗を喫した原因を分析する前に、ACLベスト8の舞台で戦う権利を勝ち取ったのは彼ら自身の力であり、今季のチャレンジが何ら色あせるものではないことを書き記しておきたい。グループリーグでの全北現代戦の1−0、山東魯能戦での4−0、大阪ダービーの歴史に一矢報いたラウンド16のガンバ大阪戦(1−0)、そして、全北現代との準々決勝第1戦の4−3での勝利。それらの歓喜は、紛れもなくC大阪イレブンの力によってもたらされた。ACL出場権を獲得した昨季からの流れを振り返っても、現在C大阪が新たな歴史を作っている過程にあることは間違いない。その継続性は、昨季後半戦のACL出場権を獲得したメンバーと今季のACLを戦ったメンバーでは大きく異なりながらも、サッカーの方向性が一貫していることからも証明される。
「アドリアーノ、乾貴士、家長昭博、清武弘嗣、マルチネス、アマラウ」(昨季後半)。「播戸竜二、清武弘嗣、倉田秋、ファビオ・ロペス、キム・ボギョン、扇原貴宏」(今季)。共にC大阪の基本布陣である4−2−3−1の「2−3−1」を担当するメンバーだが、昨季後半と現在で共に名を連ねているのは清武ただ一人。主力選手が次々と抜けながらもサッカーの質が落ちていない点は特筆すべきで、レヴィー・クルピ監督の攻撃的なスタイルがチームに浸透している証しである。また、クルピ監督が描くサッカーに合致する選手を引っ張ってくる梶野智強化部長を含め、現場と強化が一体となったチーム編成がうまくいっているとも言える。
夏の移籍市場では、五輪予選やワールドカップ予選で清武やキム・ボギョンが離脱する事態も懸念して、FC東京から、同クラブの下部組織出身で高い技術を持つ大竹洋平も獲得した。半年ごとに主力選手が抜けていく現在の状況に梶野強化部長は苦笑いを浮かべながらも「まだまだ国内には才能がありながら埋もれている人材は多い。僕のリストには、まだ多くの名前がありますよ」と不敵に笑う。
クルピ監督も「どういう状況(メンバーが頻繁に入れ替わる状況)になっても恐れを抱かず、前向きなスタイルのチームを作り上げることが自分の仕事」だと言い切り、香川真司のドイツでの活躍や清武の日本代表での躍進を「彼らの活躍はC大阪で見せてきたプレーが認められた証でもある。それはC大阪にとっても喜ばしいことだ」と語る。C大阪というクラブの色、スタイルは、ここ数年で確かなものとなりつつある。
クルピ監督が描く攻撃的なサッカー
今夏、ドイツ2部のボーフムに移籍した乾がC大阪で過ごした3年間を振り返って、「クルピ監督には感謝しています。攻撃に関しては本当に自由にプレーさせてもらいました」との言葉を残せば、乾の背番号7を引き継いだ大竹も「C大阪のスタイルは、外から見ていても魅力的だと感じていた。特に2列目の選手たちが生き生きとプレーしていることが印象的だった。実際にC大阪に来て感じたことは、攻撃に関しては思っていたよりも自由だなと。自分自身も、攻撃に関しては制約を受けるより自分の発想を大事にしたいので、早くピッチに立ってチームに貢献したい」と前向きなコメントを発している。
また今季、大分トリニータへの期限付き移籍を経てC大阪に加わったキム・ボギョンは、韓国国内では、同国の英雄パク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)が自身の後継者として指名するほどの実力の持ち主だが、シーズン序盤は、C大阪特有のタッチ数の細かく素早い攻撃にうまく順応することができなかった。
しかし、4月に行われたACLグループリーグの全北現代とのアウエー戦後のミックスゾーンでは、キム・ボギョンを取り囲んだ韓国の記者が「ボールタッチがシンプルになって、すっかり日本のサッカーに順応しているようだが」といった質問を投げかける場面もあった。わずか3カ月のうちに、キム・ボギョンもC大阪スタイルになじんでいったのだ(それだけに、27日の全北現代戦での顔面骨骨折による全治2カ月の重傷は残念でならない。骨折を負わせた選手への憤りと、キム・ボギョンへのやり切れない気持ちでいっぱいになる)。