元PRIDE王者・五味を襲う“グレイシー柔術の刺客”=UFC135
グレイシーのDNAを受け継いだネイト・ディアスと対戦する五味 【(c)NAOKI FUKUDA】
19世紀のゴールドラッシュの際に一攫千金を夢見た金鉱掘りたちによって建てられ、海抜1マイル(約1600メートル)の高さにあるため“マイル・ハイ・シティー”とも呼ばれるこの街は西部劇の舞台としても知られるが、今をさかのぼること18年前の93年11月に第1回UFCが開催された場所でもある。
UFC、“グレイシー神話”発祥の地・デンバー
あの夜、外では雪を頂いた峰々から吹き降ろす寒風が吹き荒れているにもかかわらず、会場のマクニコルズ・アリーナは異様な熱気に包まれていた。
酔っぱらった客同士がケンカを始める殺伐とした空気の中、初めて見る八角形の闘技場“オクタゴン”の金網際で写真を撮っていた私は、純白の柔術衣をまとった痩身のブラジル人青年が成し遂げた快挙を、信じられない思いで見つめていた。当時、日本の格闘技メディアの間でもグレイシー一族について知る者はほとんどいなかったのだ。
ホイスはその後も第2回大会、第4回大会のトーナメントを制し、グレイシー柔術の名を世界に知らしめた。
そのホイスが「自分より10倍強い」と語った兄のヒクソンは、日本にやってきて“初代タイガーマスク”佐山聡氏が主催したバーリ・トゥード・ジャパンで2年連続優勝し、その後はPRIDEで人気プロレスラーの高田延彦を2度倒し(PRIDEは彼らの対決の場として生み出された)、コロシアム2000という大会で、“パンクラスのエース”船木誠勝を締め落として“グレイシー神話”を完成させたのだった。
兄ニック・ディアズ戦の屈辱を払拭したい五味
4年前のPRIDEで兄ニックと対戦した五味は長いリーチを生かしたパンチに苦しめられた 【(c)NAOKI FUKUDA】
シーザー・グレイシー門下には、DREAMライト級王者の青木真也や“クラッシャー”川尻達也を降した現ストライクフォース・ライト級王者のギルバート・メレンデス、ダン・ヘンダーソンや岡見勇信らを下したジェイク・シールズら強豪がいる。
またの兄のニック・ディアズも、同じくシーザーの弟子だ。ニックは元UFCミドル級王者フランク・シャムロックやDREAMウェルター級王者のマリウス・ザロムスキーをTKOし、桜井“マッハ”速人に一本勝ちしており、07年のPRIDEアメリカ大会では五味と対戦もしている(この試合でニックは五味にサブミッションで一本勝ちしたものの、試合後のドーピング検査で陽性反応が出て無効試合となった)。
自身はUFC登竜門番組TUFのシーズン5で優勝した選手で、彼の技術の中心となるのはもちろん柔術であり総合格闘技でも9つの一本勝ちがあるが、兄のニックとともに元WBC&WBA世界王者のルイシト・エスピノーサ(ルイシト小泉)の指導を受けており、193センチという長いリーチを活かした変則的なパンチを得意とする。
一見遅くて下手くそに見えるパンチなのだが、不思議と相手の顔面を捉え、いつの間にかダメージを蓄積していくのだ。兄ニックと対戦した際の五味も、同種のパンチをもらって徐々に削られて行った。だから今回、ネイトのパンチも不用意にもらうことは避けねばならない。
そしてもちろん寝技での関節技勝負に持ち込まれるわけにもいかない。だから五味としては、本来のベースであるレスリング力を活かして、スタンド状態での勝負をキープし、ネイトのリーチをかいくぐって強烈なパンチを叩き込んでいく必要がある。
五味にとっては、かつての兄ニックに舐めさせられた屈辱を払拭したいだろうし、ネイトにとっても五味は、師匠シーザーの従兄弟ハウフ・グレイシーをPRIDEで秒殺KOした男であり、グレイシー一族にとっての怨敵である。そうした因縁もあるから、白熱した戦いになることは間違いない。
“ニュータイプ王者”ジョーンズがランペイジと防衛戦
驚異的な身体能力で王者となったジョーンズが初防衛戦に臨む 【(c)NAOKI FUKUDA】
またメインではマウリシオ・ショーグンをKOしてUFCライトヘビー級王者となったジョン・ジョーンズが、PRIDEでも活躍したクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン相手に初防衛戦を行なう。超変則的な戦いを見せる“ニュータイプ王者”ジョーンズと、一撃必殺の拳を持つ“暴走王”ランペイジの激突も楽しみだ。
(文:稲垣 收 UFC解説者)
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◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★UFC−究極格闘技− UFC135 五味復活!ジョン・ジョーンズ初防衛戦!
日本人ファイター五味&水垣ダブル参戦、王者ジョン・ジョーンズ初防衛戦!
9月25日(日)よる 6:00 [HV放送]
10月5日(水)よる10:00 [リピート放送]
【主な対戦カード】
<ライトヘビー級タイトルマッチ>
ジョン・ジョーンズ
クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン
<ライト級>
五味隆典
ネイト・ディアズ
<バンタム級>
水垣偉弥
コール・エスコベド
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