“特別”な五輪を目指して――アジアの強豪に挑む 女子バスケ代表・大神雄子&三谷藍対談

小永吉陽子

韓国は中国以上に意識する(大神)

若いチームを支える三谷(左)と大神(右) 【小永吉陽子】

――ここ近年のアジア予選では、中国、韓国に負け続けています。攻略法は?

三谷 一番のライバルは韓国です。私は代表に入ってから一度も韓国には勝ったことがないので、やっぱりやっつけたいですよね。あのち密な動きを何としても止めたい。

大神 韓国は中国以上に意識しますね。自分たちもち密さを求めてますから、そこは絶対に負けられないですよ。韓国に対しての攻略法は、韓国以上に粘ることと、絶対に気持ちで負けちゃいけないところです。去年も2ゲームとも負けているから(世界選手権とアジア大会)もう、絶対に負けられない。

三谷 やってくることが分かっているのに、止められないのはくやしいよね。

大神 そうなんです。でも、分かっていても止められないのは向こうが強い証拠。だから、韓国に勝てるだけの力を練習でつけなきゃいけない。絶対に崩せるところはあるはずだから。

三谷 今回はソンミンさん(※チョン・ソンミン、長年韓国を引っ張ってきたエース)が代表には入ってないけど、どういうチームになるんだろう。でも、去年のアジア大会でもソンミンさんがいなくても勝てなかった……。

大神 アジア大会の時は、世界選手権にはいなかったウンジュ(※ハ・ウンジュ、202センチのセンター、桜花学園高→シャンソン化粧品で06年までプレー)が新しく入ってきて、高さプラス、いいところでスリーポイントを決められて韓国本来のバスケに負けた。先発のガードも若い選手だったけど、出足でスリーを決められた。やっぱり誰が出ても韓国は手ごわい。

三谷 そう。誰が出ても、いかなるメンバーがきても、韓国は韓国と思って戦わないと。

アジア女王の中国に対し三谷は、「高さで勝てない分、プレッシャーをかけて」ディフェンスに入ると話す 【小永吉陽子】

――アジアの女王、中国に対して勝負のカギとなるところは?

三谷 中国には平面のバスケで崩していけると思うんです。やっぱり、高さで勝てない分、プレッシャーをかけて、ペイントエリアでボールを持たせないようにすることです。

大神 中国の選手は、こっちが平面的なバスケットを我慢強くやっていれば、絶対にイヤになってくれる時間帯がある。韓国のような粘りはないと思う。

三谷 精神的なムラはあるよね。

大神 ありますね。男子でも乱闘事件とかありましたし、そのくらい気性は荒い。そこを突きたいので、プレッシャーをかけて嫌がらせて、インサイドではゴリゴリとディフェンスして、中国のインサイドの柱であるチェン・ナンを押し上げていけば、インサイドで構えたプレイをしてくれるだろうし。そこでガードは一気にオールコートで走る。全員で戦うことが大切だと思います。あとは北京五輪で4位という経験は、他の国より勝っているものだから、そのプライドはねじ伏せたい。

――チャイニーズ・タイペイも侮れない相手ですが、対策は?

大神 勝たなきゃいけない相手ですね。

三谷 でも、勝てると思うと足元すくわれるから、しっかりやらないと。

大神 タイペイは自分たちの戦い方を証明しなければいけない相手ですね。でもそれは、今回のレバノン、インドにも言えることです。レバノンは帰化選手が入っているし、インドも強化していると聞きました。レバノンとは一度、ドーハのアジア大会でやっているけど、アメリカン・バスケットな感じでした。まずは、初戦でレバノンを倒すことからです。

粗さはあるけれど、今までにない可能性があるチーム(三谷)

主将として得点源としてチームを引っ張る大神。チームの雰囲気は良いと話す 【小永吉陽子】

――現段階でどのようなチームに仕上がっているか、手応えを聞かせてください。

大神 ディフェンスには手応えを感じています。先日のカナダ戦でも相手を50点台(※3試合平均57失点)に抑えられているので、崩れないと思います。ディフェンスをやり続けて、走るというスタイルは変わらないです。シュートの成功確率は課題ですが、とにかく、自分の場合だったら打ち続けることだと思います。得点を取るのが仕事なので。

三谷 若い選手が増えた分、去年より粗さはあるけれど、今までにない可能性があるチームになったという実感はあります。

――粗さと可能性とは、どんな点で感じるのですか?

三谷 いちばん若いタク(渡嘉敷)も、モエコ(長岡萌映子=札幌山の手高)も、まだチームの動きがわからないところがあるので、そこは私たちが教えていかなきゃいけない。そういう粗さはあるんだけど、ふたりともリバウンドがものすごく強い。ランニングリバウンドも取ってくれますから。そこはチームの可能性が出てくるんじゃないかと、期待したいです。

大神 そうなんですよね。ただ、若いぶん「苦しいときにやり続けられるか」といったらまだまだ。ついていくのに必死だということは、自分も若い時に経験しているので分かっていますが、厳しさは追求していくつもりです。すごいなと思うのは、メイ(間宮佑圭=JX)とタクはU18アジア選手権で優勝しているし、モエコはU17の世界選手権で5位になっている。それは今まで日本の弱点だったリバウンドの強さがあるからで、そこは期待したい。若い選手たちが絡むようになることが、このチームのキーになってくると思います。

――昨年から進化した点は?

大神 コミュニケーションですね。オフェンスでもディフェンスでもチームの約束事がたくさんあるんですけど、確認事があるたびに選手同士で話し合っているし、中川さん(ヘッドコーチ)やトム(・ホーバス、アシスタントコーチ)に聞いています。選手とスタッフ、選手同士もコミュニケーションが取れていて、チームの雰囲気はいいです。

三谷 12人が決まってからは、よりシビアに物が言えるようになっているよね。代表に決まった以上、やるべきことはやらなきゃいけないし、そこは年齢は関係ない。チームの中で甘えを出さないように、特に年上のうちらは気をつけなきゃいけないと思います。

一人の日本人として、バスケ選手として「あきらめない気持ち」で戦う(大神)

チーム一丸となって、五輪出場を目指す 【小永吉陽子】

――大会に向けての抱負と、「日本のここを見てほしい」ところをアピールお願いします。

三谷 大震災があって、日本全体が落ち込んだ時に、スポーツで周りの人に元気を与えられることは素晴らしいことだと思うし、自分がそういう立場にいるのはうれしいことです。日本のバスケットはスピードとアグレッシブさが売りなので、そこを見てもらったら元気が出ると思います。全試合を通して、アグレッシブな姿を見せていきたいです。

大神 私も一人の日本人として、3月11日にあった大震災のことは忘れることができないし、忘れちゃいけないと思っています。バスケット選手として、この大会で優勝という目標に対してあきらめずに必死に戦うことで、日本の皆さんに元気を与えられると思っています。自分たちがやれることをコートで思い切り表現した時にはじめて日本を元気にできると思うので、チーム全員とファンの皆さんとで夢を追いかけていきたいです。

三谷 「絶対に五輪に行くんだ」という気持ちで戦います。

大神 全員で切符を獲りにいきます!

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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