“特別”な五輪を目指して――アジアの強豪に挑む 女子バスケ代表・大神雄子&三谷藍対談

小永吉陽子

21日に開幕する女子バスケのアジア選手権に臨む大神雄子(左)と三谷藍に大会に向けての意気込みをインタビュー 【スポーツナビ】

 いよいよ8月21日から、ロンドン五輪アジア地区予選となる第24回FIBAアジア女子バスケットボール選手権が長崎・大村市で開幕する。「バスケットが日本中を元気にできるのは五輪予選。そのときは全力を出して日本中に力をあげたい」――4月、主将の大神雄子(JX)が語った決意は、今も選手の皆が持ち続けている。常にひたむきに戦う姿勢はこのチームの最大の魅力だ。

 しかしながら、今回ほど壮絶な戦いが予想される五輪予選は過去にはない。何しろ、出場切符は優勝国に与えられる一枚のみ(2、3位には世界最終予選の出場権が与えられる)。ここ数年のアジアの力関係を見ても、日本の実力は中国、韓国に次ぐ3番手からのチャレンジになる。しかも、カギを握る191センチのセンター渡嘉敷来夢(JX)は足の甲に痛みを抱えており、チーム練習が不足している状態で本番を迎えることとなった。切符をつかむためには、予選リーグの5試合を戦いながらチームの完成度を高め、決勝トーナメントで渡嘉敷を入れた布陣で勝負を仕掛けることができるかにかかっている。
 今回は、チーム最年長(※21日で33歳)の三谷藍(富士通)と主将の大神に、五輪予選への思いを語ってもらった。ふたりは「あきらめない姿勢で全力で戦う」とチームを引っ張る決意だ。

プレッシャーを力に変えて戦いたい(三谷)

ロンドン五輪が「私にとっては、最後のチャンス」と語る三谷。予選突破に向け、全力でアジアの強豪に挑む 【スポーツナビ】

――三谷選手は北京五輪予選に続き二度目、大神選手はアテネ、北京五輪予選に続いて三度目の予選。それぞれ過去の五輪予選を振り返ってもらえますか。

三谷 私は正直なところ、4年前の予選の記憶があまりないんですよ。あの頃は代表に入ったばかりで、世界選手権も逃してしまったから、五輪がどれだけ大きな大会かというのを実感していなくて。だけど、去年の世界選手権を経験して、五輪がもっと規模の大きい大会だということは肌で感じています。年齢的に私にとっては、最後のチャンスだと思うし、今はこの予選にかけています。

大神 アテネ五輪予選の時は韓国に再延長で勝って『仙台の奇跡』(※日本は圧倒的不利の下馬評を覆し、韓国に81ー72で勝利。五輪出場を決めた)と新聞や雑誌に書かれましたが、北京五輪予選ではそれが奇跡じゃないことを証明したかったんですね。先輩たちが残してくれたものを引き継ぐのが北京だったのに、行くことができなかった。北京五輪予選の時は自分がはじめて先発で臨んだ大会だったので、五輪ということよりも、とにかく自分がいっぱい、いっぱいだった気がします。何が申し訳ないかというと、先輩に連れて行ってもらった五輪を、自分の力不足でつなげられなかったこと。悔しい思いしか残ってません。

五輪は「世界選手権やアジア大会とは、大会の規模は比べものにならない」と語る大神。もう一度、五輪の舞台に立ちたいと意気込む 【スポーツナビ】

――その後の世界最終予選でも日本はキューバに敗れ、北京五輪出場を逃しました。五輪への道がこれほど険しいものかと、誰もが痛感しました。そして、今回は2大会ぶりの出場を目指します。五輪と世界選手権はアジアの出場枠からして違いますが(世界選手権の出場枠はアジアから3)、同じアジア予選でも重圧が全然違うものでしょうか?

大神 違いますね。世界選手権はバスケット選手の目標とする場所ですけど、五輪は日本国民全員、いや、世界のアスリート全員が目標とするところですから。アテネ五輪に出た時、何が一番印象に残っているかといったら、開会式なんですよ。あそこで行進するために五輪を目指しているんじゃないかってくらい、鳥肌が立ちました。第二競技場で2時間くらい待たされたんですけど、メイン競技場に入ったとたん、フラッシュがバババーッとたかれて、歓声がものすごくて、本当に全世界の人々が注目している大会なんだということを感じました。世界選手権やアジア大会とは、大会の規模は比べものにならないです。だからもう一度、あの舞台にみんなで立ちたいです。

――今回、予選を日本で開催することについて、プレッシャーを感じていますか。

三谷 私は日本での五輪予選を経験したことがないので、どういう心境になるのか、今は想像がつかないです。周りの声をプレッシャーと感じてしまうのか、力に変えることができるのか。プレッシャーを自分たちの力に変えていけたらと思います。

大神 私もすごくそう思います。プレッシャーは自分たちの力でしか絶対に越えられないもの。だからこそ、今キツイ練習をやっている。プレッシャーをはねのけるのも、乗り越えるのも、ここにいる12人の力でしかないから。やるしかないという心境です。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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