逆転劇の陰で露呈した問題点=U−22日本 3−1 U−22オーストラリア
苦しい展開の中での逆転劇
U−22日本は永井(左)の活躍で逆転勝利を収めたが、内容的には課題が残った 【写真:徳原隆元/アフロ】
試合分析の前に、簡単に試合を振り返りたい。この日の日本のスタメンは、GK権田修一、DFは右から酒井宏樹、濱田水輝、村松大輔、比嘉祐介、ダブルボランチは山村和也と山口螢、2列目は右から清武弘嗣、東慶悟、原口元気、1トップに永井という4−2−3−1。前日練習では、酒井高徳が左サイドバックの先発組でプレーしていたが、右ハムストリングを痛めて招集外となった。
キックオフ直後の3分、永井は相手センターバックのトラップミスを突いてボールを奪い、山村の決定的なシュートチャンスを演出した。山村のシュートは相手選手にブロックされてコーナーキックになるも、そこからの流れで日本はカウンターを食らい、右サイドからのクロスをニコルスに決められた。開始3分での失点だった。その後は一方的なオーストラリアペースで、ボランチの6番ボザニッチを中心とした素早いパス回しで日本を翻弄(ほんろう)。しかし、前半ロスタイムに山村からのパスを受けた永井が落ち着いて決めて同点とした。
1−1で前半を折り返した日本は、後半開始から清武、原口のシュートでリズムを作ると、64分に永井が快速チェイスで相手DFのバックパスを奪って逆転のゴールを決める。この得点で精神的にも気落ちしたオーストラリアは、中盤のブロックの戻りが遅くなり、ディフェンスラインと中盤の間にスペースが生まれた。これにより、日本は東をはじめとする2列目の選手たちが、前を向いて仕掛けることができる局面とチャンスが増える。84分には、右サイドの永井からのクロスを交代で入った大迫勇也が体を投げ出しながらボレーで合わせ、ダメ押しとなる3点目。そのまま3−1で試合終了となった。
プレスの連動性と、個人のプレッシャーの欠如
もちろん、前半は好き放題に動かれたキーマンの10番、MFニコルスを後半は山口がしっかりと抑えるなど、日本の修正点が効果を発揮した部分は見逃すべきではない。だが、権田が言う「(相手の運動量が)落ちたからできた、でいいのか」という点は、考えなければならないテーマだ。
試合後の会見で、関塚隆監督に「前半の守備はひどかったのではないか」という質問が投げ掛けられたように、そこに問題があったのは間違いない。個人的には、チームとしてのプレスの連動性と、個人のプレッシャーが気になった。プレスの連動性については、「中でのコミュニケーションが足りなくて、連動して(プレスに)いけなかった」と、山村も試合後に一番の課題として挙げている。
関塚監督が説明した通り、スリッピーでボールが走るピッチコンディションの中でも高い技術で素早くパスを回してくるオーストラリアに対し、日本のゾーンディフェンスが混乱した面もあるのだろう。だが、記者席から俯瞰(ふかん)的にピッチを見ていると、ボールに近い選手がプレッシャーにいっている一方で、足を止めて立っている選手が非常に多いことに気付いた。
プレスというものは終始かけ続けることはできないし、個々のエネルギーロスを最小限に食い止めるためにも、連動性を高めることが重要だ。だが前半は特に、ファーストチェックにいく選手と、セカンド、サードチェックにいく周囲の選手との意識がバラバラだった。
ただ、改善策は非常に簡単で、日本には守備面でプレスメーカーの役割を担うことのできる永井がいる。彼が「この状況ならプレスをはめられる」と判断し、素早くファーストチェックにいったときには、周囲がそれに連動してボールに寄せればいい。永井をスイッチ役に使う意識を共有できれば、プレスの連動性は高まり、組織でボールを奪える場面が多くなるだろう。
後半に永井が相手GKへのバックパスに対し、猛烈なプレスをかけにいった場面があった。だが、周囲が全く反応しなかったため、永井1人の単発なプレスに終わる。「何で連動して前に来ないんだ!」というジェスチャーをしながら、ストライカーは怒りをあらわにしていた。些細(ささい)な出来事かもしれないが、今の日本にとっては非常に重要なシーンだと思う。プレスの連動性については、クウェート戦までに意識統一と改善を望みたいところだ。