17年間のプロ生活に悔いなし=元日本代表・三浦淳寛インタビュー

宇都宮徹壱

元祖「ブレ球」キッカーとして思うこと

「良い監督になれるように頑張りたい」と将来の目標を語る三浦氏 【宇都宮徹壱】

――昨年、南アフリカのW杯に出場した代表は、個々のポテンシャル的には06年のチームよりも下だったように思われました。ところがサッカーとは面白いもので、あのチームがグループリーグを突破しました。グループリーグ突破を決めたデンマーク戦では、本田(圭佑)選手が三浦さんばりのブレ球のシュートを披露しています。ブレ球FKの先駆者としては、どんな心境だったのでしょう?

 今はみんなが「ブレ球」と言うようになりましたけど、当時のボールはブレにくかったんですね。その中で「どうやったらGKがキャッチしづらいのか」を考えながらトレーニングしていました。キャッチできずにはじけば、それに詰める選手がいるじゃないですか。もともとキックに自信はあったけど、やっぱり誇りは持っていますね。

――J1リーグのFK通算ゴール数は、実は三浦さんがトップ(15ゴール)なんですよね。ちなみに2位は、フリューゲルスでも一緒だった遠藤(保仁)選手で14点です

 ヤット(遠藤)はフリューゲルス時代から、キックに関してはものすごく正確でした。僕と全然(キックの)質は違っていたんですけど、コントロールが非常にいいなと。まあ、抜かれるのは時間の問題でしょう。というか、ぜひ抜いてほしいですね(笑)。

――この大会の後、多くの日本代表クラスの選手が欧州へ移籍しました。三浦さんがプロになったころは、Jリーグは今より華やかだったけれど、レベル的には世界を見上げるぐらいだった。それが今では、長友(佑都)がインテルに移籍したり、内田(篤人)がチャンピオンズリーグの準決勝に出場したりしている。ものすごい時代になりましたよね

 今は海外で活躍する選手はたくさんいますけど、昔の選手も(海外との)交流が盛んで経験があったら、海外に行ける選手はもっといたと思いますよ。今、長友や内田をはじめ、いろいろな選手が活躍しているのも、実力があるからこそ海外でプレーしているわけですが、ヒデとかカズさんとか、向こうでチャレンジして(日本に)戻って還元したものなんですよ。忘れちゃいけないのは、一番初めに行った人。そういう人たちが「日本人も能力があるんだ」って証明してきたと思うんです。

指導者として目指すべき理想像とは?

――5月3日の甲府対大宮の試合の解説をされていましたね

 とても勉強になりました。ピッチ上だと人が重なっていて、その中でスペースを探さないといけない。「あそこにスペースがある」と思って蹴っても、意外とスペースがないんですね。でも、上から見ると「こうやればいいんだ」とか「こっちにいったらチャンスになるな」とかがよく分かる。これから自分が指導者になっていく過程で、監督やコーチも平面の中で見ないといけないじゃないですか。でも、平面にいながら上から見ている自分を想像しないといけない。(解説をすることで)そこは勉強になりましたね。

――今後、指導者になるにあたり、理想とする監督像はありますか?

 トレーニングに関して言えば、試合に出ている選手も出ていない選手も、みんなが早く練習に出てきて、早く準備して「今日は何やるんだろう?」「早くトレーニングがしたい!」という空気を作りたいなと思いますね。なぜかと言うと、自分が一番調子がいい時とか、体が動く時っていうのは、そういう気持ちの時なんですよね。試合に関しては、プロだから結果を出さないといけないですけど、見に来た人たちが「今日も負けたけど、面白い試合だった」「また見に行きたい、応援しよう」と思えるチームを作るのが理想です。

――割と理想主義者なんですね(笑)。先ほどレシャック監督の話が出ましたが、やはりバルセロナのようなサッカーが理想なんですか?

 バルセロナは大好きですね。本当に面白いと思うんですよ。対戦相手の大男たちが必死にボールを奪いに来ても、難しいことをやらずにパスで打開してしまう。次はパスかなと思ったら、今度はドリブルを使ってくる。打開方法のバリエーションだったり、アタッキングゾーンに入ってからのプレーだったり、ディフェンスにしても簡単にクリアせずに「ここから攻撃が始まるんだ」って全員が意識している。そこまでいけるかどうかは別にして、それを目標にすることが大事だと思いますね。

――17年間に5つのクラブを渡り歩いてきたので、あちこちにファンがいると思います。あらためて一言、お願いします

 デビュー当時から応援してくれている人が、いまだにいるわけですよ。そういう人たちの応援がなかったら、17年間もプロを続けられなかったと思うし、すごく感謝の気持ちを持っているんです。早くライセンスを取得して、良い監督になれるように頑張りたいと思っているので、そういう三浦淳寛も見ていただけたらうれしいなと思います。

<了>

3/3ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント