女子4継リレー 世界陸上の決勝が近づく日本新記録樹立
日本新記録で、世界選手権の参加標準記録を突破した女子4×100メートルリレーチーム。今夏の活躍に期待がかかる 【スポーツナビ】
5月8日に行われた「セイコーゴールデングランプリ川崎」(川崎市等々力陸上競技場)、1走にケガから復帰した北風沙織(北海道ハイテクAC)、2走がナンバー2の高橋萌木子(富士通)、3走にエース福島千里(北海道ハイテクAC)、4走は20歳の成長株の市川華菜(中京大)という布陣で臨み、43秒39をマークして優勝。44秒00の世界選手権参加標準記録ばかりか、2009年の日本記録43秒58を軽々と更新して見せた。
北風がまずまずのスタートを切ると、高橋が持ち前の後半の伸びを発揮し、福島で他チームを大きくリード。市川も初代表の緊張をはねのけ、2位に差を詰めさせない力走だった。
アンダーハンドパスを初披露
09年に日本新をマークした時も1走を走った北風の言葉が頼もしい。「みんなで『楽しく走ろう。43秒3くらいはいくよね』と話していました」と、チームが良い状態にあることをうかがわせた。さらには、いつも控えめな麻場一徳女子短距離部長が「想定内の記録だった」と振り返った、そのきっぱりとした口調が、レベルの向上を実感していることを裏付けていた。
五輪を目指すにあたり、代表チームはバトンパスでいかにタイムを縮めるかをテーマにしている。コンセプトは、受け渡し姿勢を速やかに終えるため、短時間で受け渡すことなど。これを達成するために、今季本格的に導入したのがアンダーハンドパスだった。
アンダーハンドパスは、日本陸上競技連盟の高野進強化委員長の主導の下、01年ころから男子代表が採用し、北京五輪の銅メダルに結び付けた日本伝統の秘密兵器だ。一般的であるオーバーハンドパスは、受け手が大きく腕を伸ばし、渡し手が上からバトンを渡す。それに対し、アンダーハンドパスは受け手が体の近くで手の平を下向きに構えるため、双方の距離を近づける必要があり、距離的には損をする。その代わり、受け取る姿勢に無理がなく、素早く加速体勢に移行できるメリットがある。女子日本代表は目標達成のため、この手法を採用すべきときが来たと判断したのだ。
初めての実戦となった今大会は、1−2走間で詰まり気味になったり、2−3走間でも受け渡しに手こずるなど、まだまだ改良の余地があった。だが、あくまで初挑戦であり、ブラッシュアップのための貴重な第一歩になったのは間違いない。そんな期待感が漂うアンダーハンドパスの初披露だった。