女子4継リレー 世界陸上の決勝が近づく日本新記録樹立

高野祐太

日本新記録で、世界選手権の参加標準記録を突破した女子4×100メートルリレーチーム。今夏の活躍に期待がかかる 【スポーツナビ】

 陸上女子4×100メートルリレーの日本代表が、8月27日に韓国の大邱で開幕する世界選手権、そして来年に迫ったロンドン五輪へと希望の沸く大きな一歩を記した。

 5月8日に行われた「セイコーゴールデングランプリ川崎」(川崎市等々力陸上競技場)、1走にケガから復帰した北風沙織(北海道ハイテクAC)、2走がナンバー2の高橋萌木子(富士通)、3走にエース福島千里(北海道ハイテクAC)、4走は20歳の成長株の市川華菜(中京大)という布陣で臨み、43秒39をマークして優勝。44秒00の世界選手権参加標準記録ばかりか、2009年の日本記録43秒58を軽々と更新して見せた。

 北風がまずまずのスタートを切ると、高橋が持ち前の後半の伸びを発揮し、福島で他チームを大きくリード。市川も初代表の緊張をはねのけ、2位に差を詰めさせない力走だった。

アンダーハンドパスを初披露

 08年北京五輪の前にスタートした女子4×100メートルリレーの現強化体制は、1964年の東京大会以来となる五輪出場だけでなく、決勝進出をターゲットに据える。そのための第一関門として意識するのが、最近の五輪や世界選手権で決勝進出への最低ラインとなっている43秒2から3。今回の記録は、その域にほぼ達する価値あるものだった。

 09年に日本新をマークした時も1走を走った北風の言葉が頼もしい。「みんなで『楽しく走ろう。43秒3くらいはいくよね』と話していました」と、チームが良い状態にあることをうかがわせた。さらには、いつも控えめな麻場一徳女子短距離部長が「想定内の記録だった」と振り返った、そのきっぱりとした口調が、レベルの向上を実感していることを裏付けていた。

 五輪を目指すにあたり、代表チームはバトンパスでいかにタイムを縮めるかをテーマにしている。コンセプトは、受け渡し姿勢を速やかに終えるため、短時間で受け渡すことなど。これを達成するために、今季本格的に導入したのがアンダーハンドパスだった。

 アンダーハンドパスは、日本陸上競技連盟の高野進強化委員長の主導の下、01年ころから男子代表が採用し、北京五輪の銅メダルに結び付けた日本伝統の秘密兵器だ。一般的であるオーバーハンドパスは、受け手が大きく腕を伸ばし、渡し手が上からバトンを渡す。それに対し、アンダーハンドパスは受け手が体の近くで手の平を下向きに構えるため、双方の距離を近づける必要があり、距離的には損をする。その代わり、受け取る姿勢に無理がなく、素早く加速体勢に移行できるメリットがある。女子日本代表は目標達成のため、この手法を採用すべきときが来たと判断したのだ。

 初めての実戦となった今大会は、1−2走間で詰まり気味になったり、2−3走間でも受け渡しに手こずるなど、まだまだ改良の余地があった。だが、あくまで初挑戦であり、ブラッシュアップのための貴重な第一歩になったのは間違いない。そんな期待感が漂うアンダーハンドパスの初披露だった。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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