チーム青森時代に異変!?=女子カーリングは戦国時代へ

小川勝

日本選手権 チーム青森を破り、初優勝を飾った中部電力。女子カーリングは、戦国時代に突入した―― 【写真は共同】

 第28回日本カーリング選手権は2月13日、北海道名寄市のサンピラー交流館・カーリング場で最終日が行われ、注目された女子決勝は、中部電力(長野)が、5連覇中だったチーム青森(青森)を下して初優勝を飾った。本橋麻里がスキップを務めるロコ・ソラーレ北見(北海道)は、予選リーグを全勝で1位通過したものの、決勝トーナメントで中部電力、チーム青森に連敗するなど3位に終わった。男子はチーム常呂(北海道)が2連覇を果たした。

3チームの優勝争い

 バンクーバー五輪の後、日本代表だった「チーム青森」からスキップ・目黒萌絵が事実上の引退、サード(またはセカンド)を担っていた本橋麻里が脱退して新チーム「ロコ・ソラーレ北見」を結成――こうして始まった日本女子カーリング界の勢力図の書き換えだったが、今回の日本選手権を通して、現状がどのような状況にあるか、明確になった。
 つまり、文字通りの戦国時代に突入したことが、はっきりしたのである。

 昨年まで、選手個々の実力と経験、地元企業や自治体の支援体制、どれをとってもチーム青森が頭一つ抜けていて、誰が見てもナンバーワンチームだった。だが、今年はチーム青森のほか、北海道選手権で優勝したロコ・ソラーレ北見、昨年日本選手権3位の中部電力という、この3チームによる三つどもえの状況ではないかと見られていた。
 結果は、まさにその通り。3チームの大会中の対戦結果は、次の通りだ。

<予選リーグ>
ロコ・ソラーレ北見○11−5●中部電力
中部電力○7−5●チーム青森
ロコ・ソラーレ北見○6−3●チーム青森

<決勝トーナメント>
1回戦 中部電力○6−4●ロコ・ソラーレ北見
準決勝 チーム青森○8−6●ロコ・ソラーレ北見
決勝  中部電力○6−4●チーム青森


 言えることは「中部電力は、チーム青森に一度も負けなかった」ということだけ。あとはお互いに、勝ったり負けたりである。もう一度やれば、まったく逆の順番になる可能性だってあるだろう。

中部電力を引っ張るスキップ・藤澤

 優勝した中部電力は、長野県出身の3人に、北海道北見市常呂町出身のスキップ・藤澤五月が加わったチーム。藤澤は、北見北斗高校に在学中だった2008年11月、日本ジュニア選手権で「チーム北見」のスキップとして優勝している。カーリング王国・常呂町のホープが、高校卒業後、競技を続ける場として長野に行ったという珍しいケースだ。リードの佐藤美幸は、チーム青森のライバルだった「チーム長野」でリードをやっていた選手。

 チーム青森との決勝は白熱した。3−3で迎えた第8エンド、不利な先行のチーム青森・山浦麻葉のラストショットは、2つのガードストーンの間を通し、中部電力のナンバーワンストーン(中央に一番近いストーン)を少し押してナンバーワンを獲得する絶妙のショット。これに対し、藤澤は、やはりガードストーンをかわして、チーム青森のナンバーワンだけをヒット、ほかの自軍の石は残すという巧みなショットを決め、このエンド、3点を獲得。結局、この3点が勝負を決めた。

 藤澤は「ハウス(円)の中に、石がたくさん入る展開が得意」という、日本の女子では比較的珍しいタイプ。言い換えれば、高リスク高リターンを狙うタイプだ。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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