チーム青森時代に異変!?=女子カーリングは戦国時代へ

小川勝

主力2人が変わるも依然強豪のチーム青森

6連覇を逃したチーム青森。しかし、チーム力はまだまだ健在だ 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 チーム青森は、6連覇こそ逃したものの、予選リーグの3位から、決勝トーナメントでよく立て直した。
 リードはバンクーバー五輪当時と同じ石崎琴美、セカンドが近江谷杏菜。3番目に投げるのが新加入の青田しのぶ(2004年世界選手権7位「河西建設」のスキップ)だが、スキップはこの青田が務めている。そして4番目に投げる山浦麻葉がバイススキップという、変則的なオーダーになっている。
 加入1年目の青田が司令塔のスキップとは意外な印象だが、国際舞台における彼女のスキップ経験と、性格的なリーダーシップが買われた形だ。しかし丸4年のブランクから復帰しただけに、難度の高いショットが要求される4番目の「投げ手」は、いささか荷が重い。その部分を、山浦が受け持っている。

 2月11日、予選リーグで中部電力、ロコ・ソラーレ北見に連敗した時は、要所で山浦のラストショットが決まらず、明らかに精神的な落ち込みが感じられた。だが2日後、準決勝でのロコ・ソラーレ北見との再戦は見事だった。予選リーグで負けた時「付け入るスキはある」(山浦)と語っていたが、その通りだった。

 各選手が地元企業や市役所に雇用され、シーズン中はカーリングに集中できる環境は以前と同じ。結果を出す義務を負っているだけに、ほかのチームよりプレッシャーは大きかったはずだが、あとのない決勝トーナメントで、予選リーグよりショットの正確性を上げたあたり、山浦の気力と集中力はさすが。高校まで柔道(二段)をやっていた青田のアネゴ性格もチームの精神的な強さを支えており、日本のトップを争うチーム力は、間違いなく維持されている。

ロコ・ソラーレ北見は本橋、吉田に注目

本橋麻里(左)率いるロコ・ソラーレ北見。3位に終わったものの、今後に期待だ 【写真は共同】

 そして本橋のロコ・ソラーレ北見。
 「金銭的には厳しいチームなんですけど(笑)。楽しいです。チーム青森にいた時は、自分で自分にプレッシャーかけてましたから。今回が、一番楽しい日本選手権です」と本橋。

 言葉通り、伸び伸びやった予選リーグは全勝。しかし実際に順位の決まる決勝トーナメントは、本人も認めるように少し緊張感が出て、ショットのウエート(強さ)が、予選リーグほど的確にいかず、中部電力、チーム青森に連敗した。

 だが、17歳のサード、常呂高校2年の吉田夕梨花が予想以上にいい。予選リーグでは、ガードストーンの間を通したり、フリーズを決めたり、再三高難度のショットを決めてみせた。「失敗しても『ま、いっか』ってなれる」(本人)その性格もチームの強みになっているようだ。

 いずれにしても、今回は、過去2年連続準優勝の札幌国際大学(前のチーム名は「常呂高校」)が、ユニバーシアード(4位)に参加した関係で出場していない。それだけに、日本の女子カーリング界は、札幌国際大学を含めた4チームで、4強の状況と言っていいだろう。
 今大会は、1日の通算観客が1000人を超えた日もあり、インターネットで毎日行われたUSTREAM中継で、視聴者数が1400人を超えた試合もあった。これまでは「カーリングへの注目度=チーム青森人気」だったが、今後は、ここに勝負の興味も加わって、さらに関心を呼びそうだ。

<了>

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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