古き良きアルゼンチンを取り戻す=アルゼンチン代表セルヒオ・バティスタ監督インタビュー

コパ・アメリカは優勝する大きなチャンス

正式にアルゼンチン代表監督に就任したバティスタ(右) 【写真:ロイター/アフロ】

――だが、4バックを採用して中盤を強化するとなると、前線にたくさんいるタレントはどうするのか? テベス、アグエロ、メッシ、イグアイン、ディエゴ・ミリート、ラベッシ、サラテ、リサンドロ・ロペスといった世界有数のストライカーたちはどうなる

 そこは複雑な問題だ。確かにアルゼンチンには素晴らしい選手が前線にそろっている。常に同じ戦術を用いる必要はないとはいえ、繰り返しになるが、わたしは基本的にはボールポゼッションに重きを置いたサッカーを目指していくつもりだ。だから、選手たちはボール扱いに秀で、パス回しができなけれなばらない。

――あなたはW杯後の3試合で、カンビアッソ、サネッティ、サバレタ、ガゴ、バネガ、ガブリエル・ミリートといった南米予選ではプレーしながら、南アフリカでピッチに立つことのなかった選手たちを招集した。マラドーナが去って、すべてが変わったのだろうか

 新しいサイクルが始まったのだから、どの選手もゼロからのスタートとなるし、皆にチャンスがあると言える。だから、来年のコパ・アメリカ(南米選手権)に向けてファーストチームを作り上げていくまでは、あらゆるポジションにおいて多くの選手を見たいと思っている。1987年以来の自国開催であり、われわれにとっては優勝する大きなチャンスだ。アルゼンチンほどの強国が93年のエクアドル大会以来、タイトルに見放されているのは長すぎるからね。

――あなたはまた、前任者のマラドーナと仲たがいをして代表を去ったリケルメ、あるいはベロンの招集も示唆している。彼らはベテランすぎるのではないだろうか

 若い選手たちは経験豊かなベテランから多くを学ぶものだ。それに、両者の共存はポジティブな空気を生み出すと思う。われわれは、来年のコパ・アメリカまでは若手とベテランを併用するプランを描いている。その後どうするかは状況を見て判断するつもりだ。その時、誰を継続して起用し、誰を起用しないかが分かるだろう。

――数多くのアルゼンチン選手がヨーロッパのリーグでプレーしているが、遠く離れた地の選手たちと仕事をするのは難しくないだろうか

 いや、そんなことはない。かつては難しいこともあったが、だからこそ今、ヨーロッパにいくつかAFA(アルゼンチンサッカー協会)の海外オフィスを開設しようとしているんだ。1つはマドリーに、それから恐らくミラノにもできるだろう。そうなれば、欧州の選手、所属チームの監督や首脳陣とより密に連絡を取り合うことができる。

われわれは前に進まなければならない

――17日にカタールで行われるブラジルとの親善試合は、あなたにとって正式な代表監督としての初陣となる。この試合をどのように位置付けている

 あくまでフレンドリーマッチであり、そこまで決定的な試合だとは考えていない。だが間違いなく、ハイレベルな戦いになるだろう。それに双方にとって、この試合の勝者になることは、今後のチーム作りを占う上で重要だと言える。勝てばチームに勢いもつくだろう。ブラジルはわれわれと違って、そこまでタイトルへの渇望はないかもしれない。だが、史上2度目のW杯開催を14年に控えており、特別な準備が必要となる。一方、われわれはコパ・アメリカ開催が来年に迫っており、その後はW杯予選の準備が待っている。

――来年のコパ・アメリカの組み合わせについてどう思うか? アルゼンチンはコロンビア、ボリビア、招待国である日本と同じクループになった

 自国開催の大会であり、サッカー大国としての威厳にかけてもグループリーグを突破し、優勝しなければならない。これ以上、無冠ではいられないからだ。グループリーグのライバル国については考えていない。いずれにしても、たやすい相手でないことは確かだ。ユニホームやサッカーの歴史で勝利が手に入るわけではない。日本とはこの間対戦しているから、どのようなスタイルかは分かっている。ボリビアはホスト国から勝ち点を取ろうと躍起になってくるだろう。コロンビアはいつでも厄介な相手と言える。だとしても、われわれに課せられているのは決勝進出、そして南米チャンピオンになることだ。

――アルゼンチンは時間を無駄にしていると思うか? これだけのタレントをそろえていながら、その能力を生かし切れていないのではないか。その理由を考えたことがあるか

 この件については一度、皆で話し合う必要があるだろう。だが、われわれは前に進まなければならない。そして、かつて世界中から称賛を集めたアルゼンチンのサッカーを取り戻さなければ。もう何年もフィジカルがテクニックに勝る時代が続いてきた。今こそ、記憶を呼び起こす時が来たのだ。信念を貫けば、結果はついてくるだろう。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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