リンク栃木−アイシンは痛み分け 下馬評覆した東芝=JBL開幕から3週間を振り返る

松原貴実

JBL第3週が終了。田臥所属のリンク栃木はアイシンと対戦し、1勝1敗だった。序盤を終え今後の展開は!? 【写真:AZUL/アフロ】

 9月17日、日本バスケットボールリーグ(JBL)2010〜2011シーズンが開幕した。開幕戦では昨シーズンの上位4チームが早々と対戦(リンク栃木−日立、アイシン−パナソニック)、ともに1勝1敗で星を分け、これから先の激戦を予感させるスタートとなった。

真逆の展開となったリンク栃木−アイシンの2連戦

 迎えた3週目、最も注目を集めたのはリンク栃木とアイシンの2連戦だ。昨季のファイナルの舞台で3戦ストレート負けを喫したアイシンが今回どんな戦いぶりを見せてくれるのか。今季の戦力を占う意味でも興味深いカードとなった。

 1戦目の10月2日、立ち上がりからアイシンの力強いプレーがリンク栃木を圧倒する。「今日のゲームは長いレギュラーシーズンの中の1試合。だが、われわれにはリンク栃木に『負けて終わった』という思いがある。その分(この一戦に対する)こだわりはあった」という鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)の言葉を裏付けるように、竹内公輔、桜木ジェイアールがゴール下を支配し、次々と得点を重ねていく。
 一方インサイドで苦戦するリンク栃木はアウトサイドシュートでも精彩を欠き、第1クオーター5分には6−18と水を開けられる。第2クオーターはゾーンを攻めあぐんだアイシンをとらえ、4連続得点で場内を沸かせる場面もあったが、スコット・メリット、伊藤俊亮らセンター陣がファウルトラブルに苦しんだこともあり、流れを覆すには至らなかった。エース川村卓也をアキレスけん損傷で欠いたとはいえ、69−84の敗戦に対し司令塔・田臥勇太は「スタートからアイシンの気合いが上回っていた。タク(川村)の欠場は確かに痛手ではあるが、(代わってコートに立つ選手は)それをチャンスだと思って戦かってほしい。うちの選手にはまだそういう気持ちが足らない」と、珍しくやや語気を強めた。

 その田臥の一言が喝となったのか、翌3日の第2戦はリンク栃木の気迫に満ちたゾーンディフェンスが見事に機能した。攻めきれないいら立ちからリズムを崩したアイシンは、前日18得点、18リバウンドの活躍だった竹内公が9得点、9リバウンド、さらにはフリースロー7分の3と失速。途中4点差まで追い上げながらも、その都度、田臥、竹田謙、ランディー・ホーカムらの反撃を許し、結局リンク栃木が73−67で勝利した。

 同じチームでありながら真逆の展開となった2連戦。最後まで優勝争いに絡みそうな両チームだけに、故障の川村、網野友雄(アイシン)の主力がコートに戻ったとき、またどんな戦いを見せてくれるのかが楽しみである。

下馬評を覆しトップの東芝 日立、パナソニックは出遅れ

 3週目を終了し、現在5勝1敗でトップに立つのは東芝だ。昨シーズンまで司令塔として攻守ともにチームをリードした石崎巧(今季よりbjリーグ、島根スサノオマジック所属)が抜け、リーディングシューター・菊地祥平も半月板損傷で出遅れた今年は、正直苦しいシーズンになるだろうと予想された。しかしフタを開けてみると三菱電機、日立を連破し、10月1日のトヨタ戦まで負けなしの5連勝。オフェンス面では今季からチームに加わったチャールズ・オバノン(トヨタより移籍)の得点力も大きいが、やはり快進撃を支えているのは持ち味である粘り強いチームディフェンスだ。
「とにかく全員が互いにフォローしあって40分戦い抜くことがうちのバスケット」(田中輝明HC)というようにプレータイムだけを見ても大きく突出している選手はいない。 その分(故障の富田卓弥を除く)全員がコートに立ち、精度が落ちないアグレッシブなディフェンスを展開する。徹底した全員バスケット、まずは合格のスタートを切ったと言っていいだろう。

 その東芝に初の黒星をつけたのはトヨタ。ドナルド・ベック新HCの就任によりスピードからコントロールへとチームのプレースタイルは大きく変化した。「まだまだ課題は多いが、選手たちは日増しに(新しいスタイルに)アジャストしてきている」とベックHC。様変わりした新生トヨタの中でキーマンとなるのは今季よりメインガードとなった正中岳城と、その正中をバックアップする新人・伊藤大司だろう。6試合を終えた中で、司令塔の出来、不出来が勝敗を分ける場面もあっただけに背負う責任は重い。我慢の時間帯をいかにコントロールできるか、そろってメンタルの強さには定評のある選手だけに、さらなる成長が期待される。

 昨年のプレーオフ進出組の中で現在3勝3敗、2勝4敗とやや出遅れた感があるのは日立とパナソニックだが、両チームともに昨季に比べて「力が落ちている」という印象はない。
 日立はメインガードである佐藤稔浩のケガが長引き万全と言えないのは苦しいが、代わりに先発出場する西村文男が経験を積めることは大きいはず。また、課題のオフェンス面ではインサイドの柱・竹内譲次に加え、松井啓十郎(レラカムイ北海道より移籍)、新人・小林大祐のシュート力に期待がかかる。松井はまだ好不調の振り幅が大きいものの、リーグを通してチームによりアジャストしていくことで手強いシューターになりそうだ。とはいえ、チームの持ち味はやはりディフェンス。54−51、72−67でパナソニックに競り勝った2連戦は日立の真骨頂を示したと言えるだろう。

 開幕戦でアイシンに勝利しながら、現在2勝4敗と黒星先行のパナソニックは身長210センチというアドバンテージを持つ青野文彦を生かし切れていないのが悔やまれる。しかし、個々の選手の力を見ても十分上位を狙える存在であることに間違いない。長いリーグのどこで上昇気流に乗れるのか、まずは『連勝』を狙いたいところだ。

 4連敗の後、三菱電機に2勝してようやく片目が開いたレラカムイ北海道。中でもシューター折茂武彦を体調不良で欠きながら、前半16点のビバインドを覆した2戦目の逆転勝利は大きな自信になったのではないだろうか。一方大逆転負けとなった三菱電機はいまだ勝ち星なしの苦しい状況が続く。しかし、まだリーグは42分の6が終わったばかりだ。持てる力に磨きをかけ、それぞれのチームカラーを色濃く発揮していくのはこれから。週を重ねるごとにレベルアップし、ヒートアップしていく戦いぶりに期待したい。

<了>
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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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