大本命フィリーズに対抗するチームは?=MLBプレーオフ ナ・リーグ展望

出村義和

監督の花道を飾りたいブレーブスと投手力のジャイアンツ

ジャイアンツの強力投手陣の柱を担うリンスカム 【Getty Images】

 ワイルドカードで5年ぶりのポストシーズン進出を果たしたブレーブスは、チームリーダーのチッパー・ジョーンズと、大ブレークしたマーティン・プラドが故障で欠場するという大きなハンディを背負っている。しかし、ナインを奮い立たせる大きなモチベーションがある。監督として歴代4位の通算2504勝をマークしたボビー・コックス監督の引退の花道を飾ることである。
「やれるべきことをしっかりやって、少しでも勝利へのチャンスを広げる。それだけを考えてプレーすれば、結果はついてくる」と、クローザーのビリー・ワグナーは言う。

 このチームを支えているのはチーム防御率3.56の投手陣だ。その中でも絶好調なのが、第1戦に先発するデレク・ロウだ。9月は防御率1.17で負けなしの5勝をマークした。第2戦先発予定のティム・ハドソンの調子が落ち気味なのは気になるが、その分は新人左腕ジョニー・ベンタースやワグナーの強力ブルペンがカバーするに違いない。

 勝ち進むポイントになるのは打線だ。新人王有力候補、21歳のジェイソン・ヘイワードに期待がかかる。故障で戦線離脱を余儀なくされた時期もあったが、後半戦は打率3割を超え、好調を持続している。しぶといオマー・インファンテ、移籍のデレク・リー、主砲ブライアン・マッキャンがうまく絡めば、大量得点はできなくても逃げ切れるぐらいの得点を挙げることができるだろう。

 このブレーブスと地区プレーオフで対決するのが、シーズン最終戦で6年ぶりの地区優勝を決め、ブレーブスをしのぐ強力投手陣を持つジャイアンツだ。チーム防御率、ブルペン防御率ともリーグトップを誇る。先発は2年連続サイ・ヤング賞に輝き、3年連続で奪三振王にもなったティム・リンスカム、安定感が増したマット・ケイン、スライダーの切れ味が鋭い左腕ジョナサン・サンチェスの3人だ。ブルペンは制球力抜群のセルジオ・ロモ、48セーブの球団タイ記録をマークした剛球ブライアン・ウイルソンらタレントぞろい。
 打撃陣はポストシーズン初出場のオーブリー・ハフが中心になるが、カギを握るのは優勝を決めた試合で貴重なホームランを放った4番バスター・ポージーだ。5月にメジャー昇格してからチームが上昇気流に乗ったことで、ハフは「彼はチームの救世主だ」という。
 このほかにも、途中移籍のパット・バール、コディ・ロス、ホセ・ギーエンら波はあるが一発のある打者が控えている。さらに当たりが出始めたパブロ・サンドバルや、意外性の男ホアン・ウリベイもいるだけに、ブレーブス同様に大量点は期待できないが、逃げ切りに必要な得点をたたき出せる力はある。どちらが勝つにしても、ロースコアの緊迫した試合の連続になるだろう。

 大本命フィリーズにイキのいい新人たちがどう挑むのか。彼らの働きがそのまま結果に直結するだけに、実に興味深いポストシーズンだ。

<了>

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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