大本命フィリーズに対抗するチームは?=MLBプレーオフ ナ・リーグ展望
プレーオフ地区シリーズの第1戦でノーヒットノーランの偉業を達成したフィリーズのハラデー 【Getty Images】
完成度の高いフィリーズと新人左腕に注目のレッズ
9月の成績は3人合わせて13勝1敗。このトリオに死角は見当たらない。ポストシーズン中にもう一度、ノーヒッターの快挙が再現されてもおかしくないほどの調子だ。
この『H2O』だけでなく、投手陣はブルペンも上向きだ。セットアップマンのライアン・ハドソン、クローザーのブランドン・リッジはレギュラーシーズン最後の2カ月で、ほとんど完ぺきな仕事をこなした。ホセ・コントレラスら中継ぎ陣の出番が激減するぐらいの充実ぶりだ。
打撃面でも不安はない。シーズン中はトップバッターのジミー・ロリンズ、昨年ワールドシリーズで5ホーマーを放った3番チェース・アトリーら主力組に故障者が続出したが、9月までに全員がそろった。長打もあればスピードもある。相手にしてみれば、実に厄介な打線だ。
「われわれはワールドチャンピオンになった08年に比べて、すべてにわたってベターなチームになっている」と、ロリンズは自信たっぷりに語る。確かに、完成度の高いチームだ。不安があるとすれば、自信が過信になることだけかもしれない。
その『黄金チーム』に挑むのが、リーグトップのチーム打率2割7分2厘を誇るレッズ。しかし、売り物の強力打線がいきなりハラデーの前に沈黙、厳しいスタートになった。レギュラーシーズンでも2勝5敗と負け越した相手にすぐさまダメージを回復し、反撃に転じるのは至難の業だ。
しかし、レッズには起死回生を図るための絶好の兵器がある。メジャー最速の105マイル(約169キロ)を投げる驚異の新人左腕アロルディス・チャップマンだ。先発のブランドン・アローヨらが長いイニングを投げ、リードしたところで投入すればムードはガラリと変わる。チャップマンの剛速球は打者を封じ込むだけでなく、勝負の流れを引き込むほどの威力がある。
あとは、打撃陣の頑張り次第だ。一時は三冠王の可能性さえあったジョーイ・ボット、15年ぶりの地区優勝を決めるサヨナラ本塁打を放ったジェイ・ブルースという爆発力を持つ打者がいるだけに、きっかけさえつかめば王者を倒す可能性がないわけではない。
「オレたちには層の厚さがある」と、ブルースは意気軒昂(こうよう)に言う。スコット・ローレン、オーランド・カブレラら修羅場をくぐってきたベテランたちがいて、代打でホームランを連発するクリス・ハイシーら、怖いもの知らずの新人たちもいる。レッズにはノーヒッターのショックを跳ねのけるだけの戦力は整っているのだ。第2戦以降の戦いが注目される。