大本命フィリーズに対抗するチームは?=MLBプレーオフ ナ・リーグ展望

出村義和

プレーオフ地区シリーズの第1戦でノーヒットノーランの偉業を達成したフィリーズのハラデー 【Getty Images】

 ナ・リーグのポストシーズンは6日(現地時間)、ロイ・ハラデー(フィリーズ)のノーヒッターという歴史的な快挙とともに開幕した。ポストシーズンでの記録としては、1956年のヤンキース対ブルックリン・ドジャース(当時)でドン・ラーセン(ヤンキース)が完全試合を達成して以来のことだ。その戦力充実ぶりから大本命といわれていたフィリーズ。このエースの快投によって、黄金時代の真っただ中にあるといわれるチームは勢いをますます加速させ、一気に頂点へ駆け上がることができるのだろうか――。

完成度の高いフィリーズと新人左腕に注目のレッズ

 地区4連覇、リーグ2連覇のフィリーズはポストシーズン進出の8チームで最も強力な先発陣をそろえている。21勝をマークして2度目のサイ・ヤング賞確実とみられるハラデー、7月のトレード移籍以来7勝1敗、防御率1.74と絶好調のロイ・オズワルト、そして低調だったコール・ハメルズは08年のリーグ優勝決定戦とワールドシリーズでMVPをダブル受賞した当時の状態に戻って好調をキープしている。地元ではそれぞれのイニシャルをもじって、このトリオを水の元素記号と同じ『H2O』というニックネームで呼んでいる。
 9月の成績は3人合わせて13勝1敗。このトリオに死角は見当たらない。ポストシーズン中にもう一度、ノーヒッターの快挙が再現されてもおかしくないほどの調子だ。
 この『H2O』だけでなく、投手陣はブルペンも上向きだ。セットアップマンのライアン・ハドソン、クローザーのブランドン・リッジはレギュラーシーズン最後の2カ月で、ほとんど完ぺきな仕事をこなした。ホセ・コントレラスら中継ぎ陣の出番が激減するぐらいの充実ぶりだ。

 打撃面でも不安はない。シーズン中はトップバッターのジミー・ロリンズ、昨年ワールドシリーズで5ホーマーを放った3番チェース・アトリーら主力組に故障者が続出したが、9月までに全員がそろった。長打もあればスピードもある。相手にしてみれば、実に厄介な打線だ。
「われわれはワールドチャンピオンになった08年に比べて、すべてにわたってベターなチームになっている」と、ロリンズは自信たっぷりに語る。確かに、完成度の高いチームだ。不安があるとすれば、自信が過信になることだけかもしれない。

 その『黄金チーム』に挑むのが、リーグトップのチーム打率2割7分2厘を誇るレッズ。しかし、売り物の強力打線がいきなりハラデーの前に沈黙、厳しいスタートになった。レギュラーシーズンでも2勝5敗と負け越した相手にすぐさまダメージを回復し、反撃に転じるのは至難の業だ。
 しかし、レッズには起死回生を図るための絶好の兵器がある。メジャー最速の105マイル(約169キロ)を投げる驚異の新人左腕アロルディス・チャップマンだ。先発のブランドン・アローヨらが長いイニングを投げ、リードしたところで投入すればムードはガラリと変わる。チャップマンの剛速球は打者を封じ込むだけでなく、勝負の流れを引き込むほどの威力がある。
 あとは、打撃陣の頑張り次第だ。一時は三冠王の可能性さえあったジョーイ・ボット、15年ぶりの地区優勝を決めるサヨナラ本塁打を放ったジェイ・ブルースという爆発力を持つ打者がいるだけに、きっかけさえつかめば王者を倒す可能性がないわけではない。
「オレたちには層の厚さがある」と、ブルースは意気軒昂(こうよう)に言う。スコット・ローレン、オーランド・カブレラら修羅場をくぐってきたベテランたちがいて、代打でホームランを連発するクリス・ハイシーら、怖いもの知らずの新人たちもいる。レッズにはノーヒッターのショックを跳ねのけるだけの戦力は整っているのだ。第2戦以降の戦いが注目される。

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著者プロフィール

スポーツジャーナリスト。長年ニューヨークを拠点にMLBの現場を取材。2005年8月にベースを日本に移し、雑誌、新聞などに執筆。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』、『メジャーリーガーズ』他。06年から08年まで、「スカパー!MLBライブ」でワールドシリーズ現地中継を含め、約300試合を解説。09年6月からはJ SPORTSのMLB実況中継の解説を務めている

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