“ミスターインディー”入江秀忠、メジャー団体への道 〜序章〜

入江秀忠

マスコミ各社へ次回大会を告知

 さて、そうは言ったもののこの“格闘技界きってのはぐれ者集団”がメジャーを目指すにはどうすればいいのか? 確かにこの不肖の弟子の指摘どおり、今の現状の戦力ではとうてい無理な話である。おれやRYOTA以外の選手もDEEPやパンクラスなどに出場はして、まあそこそこ奮闘しているものの、決して大きくは育ってはいなかった。団体のエースであるこのおれは41歳を迎え、童顔で若くは見えるがRYOTAも齢30歳を迎えた立派な三十路ファイターなっていたのである。(おれ達が健在なうちに、新しいスターを発掘しなければ)そう次の日に思いたったおれは、次回大会の告知と今後の方向性を一気に書きたてると、いつものように、マスコミ各社にリリースを送りまくった。

 マスコミ各社各位殿
 キングダムエルガイツ次回大会のリリースをさせて頂きます。

<大会名>A・R・T・
<オールジャパン・リアルファイティング・トーナメント> 2010〜開幕戦〜
<主催>キングダムエルガイツ事務局
<大会日程>9月12日(日) 開場12:30 開始13:00
<会場>新宿歌舞伎町PINK BIG PIG
<チケット料金>全席指定 ¥10,000
<チケット発売所>チケットぴあ、聖蹟桜ヶ丘ジムFIRST SPIRIT、立川ジム#2ND SPIRIT、キングダムエルガイツ事務局、チケットショップ各店

【出場選手募集】
<出場資格>健康で感染症のない18歳以上の男子
<募集階級>66キロ以下級、無差別級の2階級
<優勝賞金>各階級10万円
<応募方法>キングダムエルガイツ事務局に問い合わせ後、必要事項を記入の上メールまたはFAXすること(必要事項:名前・住所・連絡先・身長・体重・年齢・格闘技歴・所属 ※フリー可)
<連絡先>キングダムエルガイツ事務局 (TEL)042−376−1639 (Eメールアドレス)mireniam-man-2002@nifty.com
<応募締切>8月31日(火)必着
<ルール>エルガイツ特別ルール(膠着ブレイク採用)、試合時間3分(延長2分)、ブレイクはグランド膠着30秒基準、
(その他はキングダムHP:http://homepage3.nifty.com/z-zone-kingdom/のエルガイツルール運用基準に準ずる。

<入江秀忠代表のコメント>
 暑さ厳しき折から、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて私、入江秀忠も6月20日に参戦したSRC13両国大会から1カ月が過ぎ、奮闘空しく敗れはいたしましたがSRCの向井徹様から敢闘賞という御光栄も頂き、選手としては一旦区切りをつけられた心中にあります。今後は、キングダムエルガイツの代表として更に襟を引き締め、団体の運営・後進の育成に力を入れていきたいと思います。
 次回大会のA・R・T・<オールジャパン・リアルファイティング・トーナメント>は若手の登竜門的な大会として今回で4回目を迎えます。現在、キングダムはもちろんのこと、SRC、DEEP、パンクラスなどの他団体様で活躍するファイターを多数輩出いたしました。今大会からも明日の格闘技界を担う存在を発掘するべく、ニュートラルな立場で各団体の選手が参戦して頂けることをお待ちしております。今後とも誠に微力ながら格闘技界の発展に協力していく所存ですので、何卒お付き合いの程宜しくお願い申し上げます。

地獄の夏合宿で連日練習

 A・R・T・はキングダム伝統のトーナメントである。おれが団体を引き継ぎ、なにかの節目の時にはこの企画をおこなってきた。その都度に、何故か他団体に参戦させてもいいような人材を発掘できたのである。2007年には当時“ヌルヌル事件”で出場停止中だった秋山(成勲)選手に地上波中継で出場オファーを持ちかけ話題を呼んで、ヒジ・頭突き有りの世界一過激な“エルガイツルール”での無差別級のトーナメントを行い日本中の命知らずの格闘家が集まる中、最軽量で決勝に上がってきたRYOTAをおれが大人げなく“生拳”でタコ殴りにして優勝した、あのトーナメントである。(少々説明が長くなったが、詳細は“インディー格闘家”入江秀忠、メジャーへの道〜第5章〜参照)しかしリリースをしたのはいいが、おれもRYOTAも出場しないトーナメントで本当に今の弟子達が生き残ることができるかは多々、不安があった。

 そうだ、夏合宿を敢行しよう。そう思いたったのは次の日のことだっただろうか? しかし、せっかくなら夏だし海がいいな。何故か茨城の大洗に決まった。一度行動を起こしたおれを誰も止める事はできない。約1日で聖蹟桜ヶ丘ジムと立川ジムで有望な弟子に招集をかけると、次の日には愛車のセレナで旅路についていた。
 そして炎天下の中、地獄の合宿は連日続いた。しかし連日練習をしいていても、おれのあせりはけっして落ち着くことはなかった。(本当のU系の練習は絶対にこんなもんじゃない)おれはもはや、死にそうに呻いている弟子達を見つめながらこう思っていた。これは、前回の道(メジャーへの道)より困難になるな……。おれは改めてそう覚悟を決めると、たばこがわりに吸っている医薬品のネオ・シーダーにそっと火をつけ、夏の茨城の空を見つめて大きくひと呼吸した。あらたなる戦いの狼煙はすでに上がっていた。

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著者プロフィール

1969年6月17日 生まれ。長崎県出身。キングダムエルガイツ代表。インディ格闘家・プロレスラー

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