苦悩するビーチの妖精 浅尾美和の笑顔は見られるのか

ビーチバレースタイル

試行錯誤を重ねるものの、優勝に手が届かない浅尾美和。この笑顔を表彰台の頂点で見られる日は――。写真は2010年5月撮影 【坂本清】

 8月19日から22日、大阪府・せんなん里海公園で開催された「第21回全日本ビーチバレー女子選手権(ビーチバレージャパンレディース2010)」は、尾崎睦(湘南ベルマーレ)・金田洋世(上越マリンブリーズ)組が優勝し、日本一決定戦で女王の座に就いた。

 注目の“ビーチの妖精”浅尾美和・草野歩組(エスワン)は3回戦敗退、敗者復活戦でも敗れ5位。またしても優勝をつかみ取ることができなかった。浅尾は昨季終了後に約5年間ともに戦った西堀健実(フリー)と別れ、今季から若手実力派の草野とチームを組んだ。シーズン前には優勝候補の声も高かったが、今季も中盤を迎え、いまだ勝ちがない。言うまでもなく人気ナンバーワン、ビーチバレーの顔である浅尾美和。いつ勝つことができるのか──。

勝利への試行錯誤 2人の英断

 「アサオミワは、今日いないのですか?」。先月行われた大阪カップ中之島大会の最終日、ある男性に尋ねられた。浅尾は、この大会も2日目に敗退。最終日を待たずして会場を後にしていた。そう伝えると「えーっ! そうですか……」。落胆した表情で彼は観客席に向かっていった。

 人気はあるが実力が……と言われ続けた浅尾の今シーズンは、期待に膨らみ始まった。国内ツアー初戦は3位。優勝は近いと思われ、JBVツアー第2戦の初日には、新しい作戦を試しセットを落としても「作戦失敗!」と笑って話す余裕もあった。
 しかし翌日の試合、勝てると思っていた尾崎・金田組にまさか負けを喫し、予選リーグ敗退。「技術、作戦でかみ合わない所もある」(草野)と歯車が狂いはじめ、浅尾も「こんな負け方をするとは思わなかった」とショックを隠しきれなかった。
 試合後、1時間にも及ぶ緊急ミーティングが開かれ「言いたくはないが(負けの)原因は把握している」と浅尾も話し、次戦までの2カ月で挽回(ばんかい)できると思われた。が、第3戦となった大阪カップ中之島大会もその原因は取り除かれない。結果は5位。草野は「まったくできていない。できることだけやるしかない」と語った。
 そこで2人は英断を下す。サーブレシーブ、サイドアウトを確実に切るなど基本的なプレーを課題に挙げ、個別に練習を行った。「個々の課題、やりたい練習が違うから」と別々にトレーニングを行う理由を草野は話す。毎試合、サーブで狙われる浅尾はレシーブのフォームを構えから見直し、レシーブからの攻撃力向上を目指した。

ビーチバレー界の顔として

個別練習で課題克服に取り組む浅尾(右)と草野。写真は2010年7月撮影 【坂本清】

 先週のビーチバレージャパン。背水の陣で挑んだ2人は準優勝。ようやく歯車がかみ合い出したかと思われたが、勝利した試合でも7連続失点するなど、草野は「課題は克服できていない」と語り、浅尾は「アユ(草野)のサーブに助けられた。自分がもっと攻めていかないといけない」と話した。
 そして、迎えた今大会。2人の言葉を彼女たち自身が証明することとなった。まったく良いところがなく再び5位。草野のジャンピングサーブは相手に脅威を与えるが、狙われた浅尾のレシーブはフォーム改造のかいはなくミスが目立つ。フォーメーションも合わず「アユ、お願い!」と浅尾の声が何度もコートに響き渡った。3回戦は、結成3カ月のチーム、菅山かおる(WINDS)・駒田順子(ポイント)組にストレート負け。その後、敗者復活戦を勝ち上がり1日4試合のハードなスケジュールをこなしたが、最後は浦田聖子・西堀健実(ともにフリー)組の前に力尽きた。草野は「(原因は)分からない。落ち着いてから考える」と話し、「負けたくないという気持ちが足りなかった」と浅尾の顔に笑顔はなかった。

 5年前、浅尾の出現でビーチバレー界は激変。彼女の人気とともに一躍注目される競技となった。その後、菅山かおるや浦田聖子など人気を得る選手も現れ、今大会でも元東レ(V・プレミアリーグ)の大型プレーヤー、大山未希(グランディア)がデビューした。しかし競技自体の人気は、決して右肩上がりとは言えない。冒頭に出てきた男性のように、浅尾を通じて競技に接するファンはいまだに多い。
 すべてを負わせるのは酷だが、彼女の勝利がビーチバレー界に与える影響は大きい。果たして、皆が待ち望んでいる笑顔が見られるのはいつなのか。浅尾・草野ペアの今後の奮起に期待したい。

<了>

(取材・文/小崎仁久)

ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』

 6月25日発売号の特集は、浦田聖子、西堀健実、浅尾美和、草野歩、田中姿子、溝江明香、尾崎睦、金田洋世、駒田順子、周藤玲美ら、トップ選手10人の戦闘ウエアを一挙公開。選手たちが着用する『水着』へのこだわりとは!? 第2特集は、JBVツアー前半戦ハイライト。明暗分かれた開幕戦をもう一度おさらい。これを読めば、各チームの浮き沈みがまるわかり! そのほか、好評連載中の技術指導企画、フィジカルトレーニング論なども掲載。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント