マリナーズ、ワカマツ監督解任劇の裏側=地元メディアは同情的

丹羽政善

違和感の残るタイミングでの決定

マリナーズ監督の座を解任されたワカマツ監督 【Getty Images】

 マリナーズは前回のシカゴ、ミネソタ遠征(現地時間7月26日〜8月1日)で7戦全敗。

 ドン・ワカマツ監督の解任があるとしたら、試合のなかった8月2日が有力と言われていたが、3日からもワカマツ監督が指揮を執り、一部ではシーズン途中の動きはない、ともささやかれ始めていた。

 それが、週末のロイヤルズ3連戦で勝ち越したところでのチーム発表。解任そのものには驚きはなくても、タイミング的には違和感を伴った。

 遅かれ、早かれ、という声は強かった。さい配もどこか迷走気味だったからだ。

 例えばこのところ、投手交代では不思議な起用が続いていた。勝ちゲームで安定した投球を見せていたクリス・セドンを急に負けゲームで投げさせてみたりする一方、きん差で勝っている試合で、来季はこのチームにいないと思われるジェイミー・ライトに終盤の1イニングを投げさせてみたり……。

 言ってみれば、勝ちにいっているとは思えなかったのである。

 ただ同時に、来季も指揮を執るのでは、というとらえ方もあった。

 そんな不規則な投手起用がそれこそ残留説派の根拠で、自分の身が危ないと感じているならば、何が何でも勝ちにいこうとするだろう。それをせず、いろんなことを試すような戦い方を始めたということは、来季の契約を保証されているのだろう、との見方につながっていた。

 そんな中、この戦力で負けたことは彼の責任ではない、という擁護派は多い。

 地元紙『シアトル・タイムズ』のラリー・ストーン記者も、8日付けの新聞で、「ワカマツ監督の責任ではない。もう一度きっちり戦力を整えて、彼にチャンスを与えるべきだ」と主張していた。

GMの責任を問う声も

 実際のところ、地元メディアの多く――いや、ほとんどはこの日の解任発表を受けて、ワカマツ監督に対して同情的だった。

 午後2時から行われたジャック・ズレンシックGMの会見が終わってから、方々で小さな輪ができたが、加わった輪の中の一人が、「彼一人に責任を負わせるのか!」と声を荒げれば、ほかの二人も同調し「信じられない」と首を振った。

 当然、彼らはズレンシックGMの責任を問うような言葉も発している。

「今年に関しては、ワカマツ監督のミスよりも、ズレンシックの補強失敗の方が目立っている。それはどうなるんだ」

 ズレンシックGMも会見で、「(チームが機能しなかった)責任は私にある」と話したが、進退に関しては言及せず、その点でも地元記者らは納得がいっていなかった。

 それ以前に、不振の原因を、監督やGMの責任として、解任すれば終わり、といったことを繰り返すチーム上層部の辛抱のなさに、彼らはいら立っているよう。ちなみに、GMは「フロントは辛抱強い」と会見で話したが、マリナーズは過去4年でシーズン途中に3度も監督が代わっている。

 ちょうど、セーフコ・フィールドに来る途中、車の中でラジオを聞いていたが、普段からチームを取材しているリポーターが、こう言っていた。

「会見には、チャック・アームスロトング社長も、ハワード・リンカーン会長も出席しないそうだ。なぜなんだ。これだけ重要な決断を発表する席で、なぜトップが説明責任を果たさないんだ!」

 ズレンシックGMが会見でメディアの質問を受けているとき、実はインタビュールームにアームスロトング社長もリンカーン会長も、その場にいた。

 しかし、会見が終わって、すぐにAP通信の記者が彼らに近づくと、すうっと、部屋から出て行ったそう。追いかけようとしたら、広報が間に入り、「もう、会見は終わりだ」と、取材を遮ったという。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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