鹿島の哲学に沿ったジウトンの起用=短所よりも長所を生かす組織
「欠点はほかの選手が補えばいい」
岩政(右端)はジウトンについて「欠点はほかの選手が補えばいい」と語る 【写真は共同】
そして、何より不思議なのが、選手たちからジウトンのつたない守備を非難する声がほとんど聞かれないということだ。確かに、その話題になると苦笑する選手はいる。しかし、だからといってうんざりした様子を見せるわけではなく、聞かれるのは「負担を減らしてあげたい」「もっと自由にやらせたい」という声なのだ。
その理由を、一番的確に表現してくれたのは岩政大樹だった。
「大学時代まで、僕はみんなで話し合って、ディフェンスの約束事をきっちり決めてサッカーをしてきました。最初、鹿島に入った時もそうしていたんですけど、このチームはそういうやり方ではないんですね。Jリーグでも珍しいタイプのチームだと思います。タク(野沢拓也)にしろ、満男さん(小笠原)にしろ、できないこともあるスペシャルなタイプの選手です。だいたいどこのチームも欠点がない選手をそろえたくなるのですが、そういうタイプをそろえているのは珍しいと思いますよ。
だから、ほかの選手に対しても『あれがダメ、これがダメ』と言うことはやめました。チームの人からも『最後はお前が守ればいいじゃないか』と言われたのが良かったと思います。いまは欠点はほかの選手が補えばいいし、守備に関して言えば、それは僕や浩二さん(中田)の役目だと思っています」
7月24日の磐田戦では、ジウトンを高い位置に上げ、空いたスペースを中田が消すようになってから攻守のバランスが改善され、ジウトンの1ゴール1アシストを導き出した。無失点に抑えた同31日の神戸戦では、ジウトンの隣にいる伊野波がさかんにコミュニケーションをとっていた。
「あいつは前に行き過ぎてすぐにバテてるので、『あんまり行き過ぎるな!』と止めてました」
完ぺきではないにしろ、ジウトンとの連係は向上している。
Jリーグ3連覇を果たしながら、日本代表として南アフリカのピッチに立った鹿島の選手は1人もいなかった。それは、鹿島というチームが、欠点があったとしてもスペシャルな能力を持つ選手を集めた集団であることと無関係ではないはずだ。
思えば石垣というのは、さまざまな形の石をぴったりとすき間のないように積み重ねて堅固な土台を作り上げている。ただし、その石を、形が均一に整えられたブロック塀にはめることはできない。どちらが良いかどうかは、結果を見なければ語ることはできないが、ジウトンの起用は鹿島の哲学に沿ったものであることは間違いない。
<了>