新時代の幕開けを告げる、札幌山の手のインターハイ初制覇=バスケ女子
女子決勝はU−17女子日本代表のメンバーだった長岡(写真)らの活躍により、札幌山の手が中村学園女を破り、初優勝を飾った 【写真は共同】
5試合平均90点以上の破壊力
だが、その計算のうち半分は正解でも、半分は間違いだった。それほど彼女達の攻撃は破壊力を増していた。初戦の2回戦から決勝までの5試合平均で90点以上を記録。環境や対戦相手にかかわらずコンスタントにそれだけの得点をあげられることを見せつけた。
中でも特に成長が見えたのは、#9佐藤れなと#15長岡萌映子の2年生コンビだ。新チームになってスタメンをつかんだ佐藤は、5戦で計22本の3点シュートをたたき込んでみせた。これにより、対戦チームのアウトサイドの守備が崩れて、#4町田瑠唯のドライブや#5本川紗奈生の1対1がより生きた。そして、ルーキーだった昨年以上に大黒柱としての責任感がついた長岡は、180センチの長身を生かしたポストプレーに加えて決勝では3本の3点シュートを決める大活躍を見せた。
つまり、札幌山の手は“バランスの取れたチーム力”と“絶対的なエース”の2つを兼ね備えているのである。これまでの歴史において、3点シュートも打てるインサイドプレイヤーが1人現れればほかの選手もそれに倣い、男子顔負けの激しいディフェンスを40分間続けるチームが1つ現れればほかのチームもそれに追随することで全体的なレベルアップが成されてきたが、今大会での札幌山の手の破壊力は、まさに新しいスタンダードを提示するものだったと言える。
しかし、上島正光コーチも主将の町田も、「まだ満足できる内容ではない。もっともっとできる」と口をそろえる。12月のウインターカップに向けて、札幌山の手が新たに高校女子バスケットを引っ張る存在となったのは間違いない。
大会を彩った“石ころ世代”の輝き
4年ぶりの決勝進出を果たした中村学園女の主将・#4神崎由香は、自分達のことをこう呼んでいると教えてくれた。これは、渡嘉敷来夢(桜花学園→WJBL・JX)や山本千夏(東京成徳大→WJBL・富士通)をはじめスターぞろいの昨年の代が “ダイヤモンド世代”と呼ばれたのとの対比だ。また、中村学園女としても、昨年のチームは指揮を執る吉村明アシスタント・コーチが「優勝を狙っていた」と言うほど実力者がそろっていたことにも起因する。
「でも、石ころでも磨けば絶対輝けるから、皆で磨いて1番いいチームになろうねって話して決勝に臨みました」。
その決勝は数字を見れば大差をつけられてしまったものの、最後の1秒まで必死に守り、ゴールを狙う姿は言葉通り輝いていた。輝きが見え始めたきっかけは、3回戦の大阪薫英女学院(大阪)戦の勝利にあった。大会前にゲームを行ったときには30点差をつけられて敗れた相手に、大舞台で競り勝って勢いに乗った。注目されなかった“石ころ”が、結果と自信を得て見違えるように輝きだしたのだ。
同じように、ベスト4に進出した明成(宮城)も、東京成徳大を破った富士学苑(山梨)との3回戦、第4シードの聖カタリナ女(愛媛)を倒した精華女(福岡)との4回戦……と試合を重ねるごとに結束力が増していった。
今大会はいくつかの実力校が早々と敗れ、勝ち上がった顔ぶれは例年とは異なるものだったが、言い換えれば、自分達を信じて磨いてきた選手やチームが輝く瞬間を目の当たりにできた大会だったとも言える。
強行軍と戦い、明暗が分かれたU−17メンバー
もともと沖縄の暑さ、そして2年生の彼女達にとっては3年生の意地と戦わねばならなかったが、この辛いスケジュールも重なった。その結果、U−17メンバーの戦いは明暗が分かれた。聖カタリナ女、東京成徳大は2回戦敗退。最多の3名を代表に送り出した桜花学園も準々決勝で力尽きた。その中でベスト4に名乗りをあげたのが、長岡萌映子のいる札幌山の手と、#7宮澤夕貴擁する金沢総合(神奈川)だった。
2人のライバル対決となった準決勝は大いに会場を沸かせたが、一方で2人に限らず可能性溢れる彼女達が万全ならどんなパフォーマンスを見せてくれたのだろうという気持ちも残った。
このU−17メンバーはもちろん、ほかの“原石”たち、そして優勝した札幌山の手さえもまだ、のびしろを残している。秋の国体(千葉)、冬のウインターカップではどんな新ヒロインが生まれるのか、楽しみにしたい。
<了>
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