嵐呼ぶマスクマン、ブラックタイガーが初代タイガーに牙をむいた!

安田拡了

初代タイガー(右)とブラックタイガーの一戦はすさまじい嵐が巻き起こること必至 【リアルジャパンプロレス】

 初代タイガーマスクと6.17後楽園大会で対戦することになっていた4代目タイガーマスク(新日本プロレス)だが、なんと新日本の試合で頸椎(けいつい)を負傷してしまい、今回の対戦は延期になってしまった。いったい、どうなるのか! 大会直前のアクシデントにリアルジャパンは頭を抱えた。しかし、その心配は一瞬にしてかき消された。かつて初代タイガーをラフ殺法で苦しめた“暗闇の虎”ブラックタイガーが、ここぞとばかり名乗りを上げてきたのだ。6・17後楽園のリングに悪のラフ殺法。すさまじい嵐が巻き起こる。

憎っくきブラックタイガー出現に会場が沸騰した記憶が蘇る

ラフ殺法を仕掛けてくることが予想されるブラック・タイガーの攻撃を、初代タイガー(右)はしのぐことができるのか 【t.SAKUMA】

<第6試合 メーンイベント シングルマッチ>
“伝説の虎”初代タイガーマスク(RJPW)vs.“暗闇の虎”ブラック・タイガー

 かつて初代タイガーマスクを苦しめた筆頭といえばダイナマイト・キッドと小林邦昭だ。しかし、嵐を呼ぶ悪のマスクマン、ブラックタイガーの名も忘れてはならないくらい記憶に残る。
 最初にブラックタイガーが出現した時(1982年4月21日、大阪大会)は、新日本のしたたかさに感心したものだった。
 あれは確かタイガーマスクの産みの親だった梶原一騎が「陽があれば陰があるように、正義があれば、真っ向から対決する悪者がいて当然だ」と悪者のブラックタイガーをアニメの中で産み出して、それをうけて新日本がブラックタイガーという悪のマスクマンに入るレスラーを探し出したのだ。
 だから、ブラックタイガーが現実のリングの中に出現した時は、どんなにタイガーマスクが苦しめられることだろうと思いを巡らしたものだった。

 いま思い起こしても、「本当に当時は面白かった」とリアルタイムで取材させてもらったことに感謝する。
 タイガーマスクの四次元殺法だけでもまさに劇画・アニメの世界から飛び出してきたワクワク感があったのに、さらにタイガーを叩きのめすブラックタイガー出現するとは…。
 予想通り、憎っくき悪のブラックタイガーに会場は怒りの嵐で吹き荒れた。その怒りの沸騰の中で、意表を突いたラフ殺法でタイガーを攻め立てながらグイグイと追い込んでいく。当時、腹立たしい気持ちでヤジを飛ばしながら観戦していた人も多かったと思う。
 タイガーは相手が真正面からガンガンくるタイプだと勢いに乗る。だからダイナマイト・キッドや小林邦昭との勝負に名勝負が多く生まれた。

 このブラックタイガーもまた真正面からくるタイプだった。その意味では印象深かったわりに名勝負の評価が少ないのが不思議。しかし、その答えは簡単だ。ブラックタイガーが悪のラフ殺法を得意としていたから、名勝負の評価を与えられなかったのだ。
 6・17後楽園ホール。ブラックタイガーが初代タイガーに牙を剥いた。当時の試合が鮮烈に蘇ってきた。当時を知る者の一人として、「初代タイガー、十分気をつけてくれよ」と言葉を掛けておきたい。

なんと、“トリプルドラゴンvs.長州軍”の激突!

天龍(右)は藤波やウルティモと組んで、長州軍と対戦することを喜んでいるはず 【t.SAKUMA】

<第5試合 セミファイナル 6人タッグマッチ>
天龍源一郎(天龍PROJECT)、藤波辰爾(ドラディション)、ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO)vs.長州力(リキプロ)、ザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス)、関本大介(大日本プロレス)

 プロレスというのは、ちょっと頭を切り替えるだけで、途端に夢のあるカードに変身してしまう。しかし、これほど想像をかけたてるカードが生まれるとは思いもよらなかった。
 トリプルドラゴンか! 
 天龍源一郎、藤波辰爾、ウルティモ・ドラゴンの3人のドラゴンがタッグを組むことになったのだ。
 我々、記者がうきうきするほどなんだから、トリプルドラゴンの3人のボルテージもさぞかし…だろう。特にアイデア好きで新しいことを面白がる性質の天龍などは、おそらく「い〜いじゃない」と眉を下げて喜んだはずだ。

 対する相手チームも納得できるメンバーだ。長州力、ザ・グレート・サスケ、そして大日本の代表格・関本大介組。
 ちょうどいい機会なので、最近のプロレスに対して一言だけ言わせてもらう。
 いまの日本のプロレスは技がどんどん出て確かにすごい。しかし、ちょっと待てよ、と思うのだ。技を出すのは簡単なこと。問題は大切な技を、どの場面で出すかということではないのかと。
 この6人の中で比較的若いウルティモ・ドラゴンがこんなことを言っているので、参考までに書いておこう。
「いまの若いレスラーの技は軽いんです。とにかく技を出しすぎる。もっとじっくりとプロレスをすればいいのに。だけど、いろんな若手レスラーと話すと、どうやら止まっているのが怖いというんですね。動きが止まっているとシーンとするじゃないですか。お客さんが湧かないのが怖いというわけです。しかし、違うんですよね。湧かないんじゃなくて、ジッとお客さんは見ているだけなんですよ。それが分からない。シーンとなっていた分、そのあと倍ぐらいになって湧くことを知らないんです。そういうふうにして大先輩の初代タイガーマスク(佐山サトル)はプロレスをやり、決め技のジャーマンスープレックスは必ず最後で出して勝ったんです」
 そうなんです!
 もう少し言えば、我々見る側にとっても小ぜわしいプロレスを見続けていると、それを目で負うばかりで記憶に残らないのだ。

 もう一つ、言いたい。この試合、長州力は長州力であるために戦い、天龍源一郎は天龍源一郎であるために戦い、藤波辰爾もまた藤波であることを意識して戦うというすごいカードであるということなのだ。
 それだけでもこの6人タッグの競演は凄い。思いっきりプロレスの醍醐味を楽しんでもらいたい。

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