22年W杯招致の勝算は全くの五分五分=招致委員会委員長 犬飼基昭氏インタビュー
02年大会の反省点は何か
僕は02年の時はサッカーに携わっていなかったんです。ただ、今の立場からすると、サッカーそのものに関しては(日本代表は)もっと上まで行かなきゃいけないかなというのはありますよね、ベスト8とか。韓国はベスト4まで行きましたからね。そういった意味では、開催したらそこまでいくという、サッカーそのものの質をどうやって上げていかなきゃいけない。そうした選手を育てるには、今の小学生なんですね。今の小学生からきちっと人間教育からサッカー教育までしっかりとしていけば、十分に22年に間に合うと思っています。
――競技面以外ではどうでしょう。たとえば、開催候補地となっている各自治体の反応については? 前回の02年当時とは、経済状況が大きく異なっているわけですが
02年の時は、とにかく(W杯を)呼んで、盛り上げようということが相当先に来ていたし、バブルの最後に引っかかっていましたよね。雰囲気そのものも、自治体も元気だったですし、経済界も元気だったのでいろいろやってくれたと。だけど、バブルがはじけた後、非常に困った自治体もあるわけですよね。もし投資をするなら、将来(投資を)どういう形で吸収できるんだということも考えなければいけない。ということで、大阪の8万人のスタジアムも、8万人集めなければいけない時には8万人になる、普段は4万人でという構造にしようということを考えているわけです。
――そういった工夫は絶対に必要ですよね。ユーロ(欧州選手権)を開催したオーストリアなんかは、大会終了後にダウンサイジングできるスタジアムを作っていました。日本の場合「こんなに大きなスタジアムを作って大会後どうするのか」とか「こんな場所に作ってどうするのか」とか、後先を考えないスタジアムが少なからずありました。スタジアムは一度作ると50年は生き続けるものですから、開催が決まった場合、そのあたりは慎重に進めてほしいところですね
02年は、ちょっとバブルでムリしたかなというところはありました。地方によってなんですけどね。埼玉はあれだけの専用スタジアムを作ってくれたことが大成功で、02年の優良資産を引き継いでいるなと思います。逆に宮城県なんかは、あそこにムリしてあの遠いところに作っちゃったなあ、というのはありますよね。それを(W杯後に)どう使いこなしていくんだということについては、その時は考えずにいっちゃったのが、ツケが回っているのかなというのはあります。
そういったことが、今度はないようにということで今やっているんです。この次は、ほとんど02年の設備を使えるので、新しいのは1つだけですから。FIFAにも結構、質素に提案しています。
東京五輪招致失敗のダメージはない?
もちろんそうです。政府の方と話していても、前回の02年はいろんな自治体の人にお金を出してもらって、スタジアムがみんなに呼ばれたわけですよね。今回はそれを全部使えるので、作るとしたら1つ。8万人規模のスタジアムは日本にはないので。今回は1つでいいんですよ、という話は政府の中でも話になっています。そこは今回、大阪が手を挙げてくれましたので、心配はしていないですね。
――東京に五輪が来ていたら、湾岸地域に1つ大きなスタジアムを作るという話もあったと思いますが
東京都が10万人規模のスタジアムを作るというので、それを使えるなと思っていたんですけど。残念なことに、ああいうことになったので。
――東京五輪の招致失敗は、それほどダメージではないというお考えでしょうか
それとリンクはしていないですからね。われわれがあの時言っていたのは、東京五輪が立候補して先に決まるので、やっぱりわれわれは同じ(日本の)競技団体として五輪を応援しよう、ということになったんですね。もし成功したら、スタジアムが1つできるし、次に立候補する時にわれわれはすごく楽だなということで、一生懸命応援していたんです。
そしたら「東京五輪ばっかり応援して」という声もあったんですけど、あの時にわれわれが「サッカーはサッカーだから(関係ない)」とやったら、非常におかしな雰囲気になったと思うんですよ。われわれはそれを意識して、多少招致(活動)が出遅れるけど、五輪がきちんと決まるまで、われわれは五輪の招致を徹底的に応援しますということでやったんです。それはもう、僕は同じ体協(日本体育協会)に属している者としてのマナーだと思うんですけどね。
――とはいえ、やはり今回の五輪招致活動の失敗から学ぶ必要があると思うんです。東京は、リオデジャネイロに勝る世界に向けての説得力が足りなかったと痛切に感じました。世界に対して「日本でやるとこんなに素晴らしいことがあるよ、みんなにメリットがあるよ」という説得材料が必要だと思っているのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか?
僕は正直、東京五輪の失敗については勉強もしていないし、何故失敗したかというのは本当のところは分からない。だから、あまり軽々しい分析はできませんね。ただ日本のプレゼンテーションは、一番評判が高かったと聞いています。それでも実際には票が来なかったし、最有力と思われていたシカゴが(米大統領の)オバマを連れてきても負けてしまった。実際のところ、票がどういう形で動くかというのは分からないので、何が敗因かというのは軽々しく言えないと思います。
22年招致の一番のライバルはどこか?
うーん、分からないですね。オーストラリアがまだ(W杯を)やっていないですが、決まった場合どうなのかなと。というのは、ずっと南半球が(南アフリカ、ブラジルと)続いていますので。それに、やはりラグビー文化、クリケット文化の国ということで、どうかなと。わたしは一番ライバルだと思っているのは米国です。ひとつのビジネスとして考えた場合には、あそこが一番ポテンシャルが高いですから。
――では現状で、日本の勝算はどのくらいあるとお考えですか?
全くの五分五分でジャスト・スタートしたとわたしは感じています。「日本のこういうコンセプトで、みんなで一緒にやりましょうよ」ということを、どう伝えられるかということ。それと、日本が18年から引いたということで、ヨーロッパは9票ありますから、ヨーロッパの票をどれだけ日本にもらえるかということ。ヨーロッパの人というのは、夢とか理屈で投票する人が多いんですよ。そういうことから言うと、われわれの一番話し合えるところなので、そこの票が来ると、かなり日本が有利になると思うんです。もちろん、違うことを考えている地域もあります。アフリカだとか、中南米、中東とか。中東は宗教でのまとまりが強いですから、全く予断を許さないですね。
――いずれにせよ、やるからには今度こそ、単独開催といきたいところですね
02年のW杯は(韓国との共催だったので)半分しかやっていなかった。それでも、たくさんのいい話がありました。試合会場のみならず、キャンプ地での代表チームと地域との交流だとか、その国の国旗を持って分け隔てなく応援してくれるとか。大会期間中でも、開催国が出ない試合だと観客が入らなかったりということも随分あるんですが、日本の場合、キャンプ地の人も試合に行ったりして、非常にいい雰囲気でやれた。
われわれは今回、半分だけじゃなくて全部やりたいということで立候補したんですが、そうなればキャンプ地も倍になるし、交流の機会も倍に増える。多くの日本人が世界と接することができるし、世界の人が日本人と接して、日本人を理解してもらえるわけです。
――決定は12月2日ですね。吉報を待つことにします
<了>
※W杯招致についての情報は「2022年FIFAワールドカップ日本招致委員会」公式サイトへ
http://www.dream-2022.jp/