好調のパナソニック、満身創痍で挑む日立=JBLプレーオフ出場チーム紹介・後編

松原貴実

故障者続出の日立、チーム一丸となって戦う

急性胃腸炎でレギュラーシーズン最終戦を欠場した日立の竹内譲次。プレーオフのコートに万全な状態で立てるのか 【Photo:AZUL/アフロ】

 昨シーズン、堂々2位で初めてのプレーオフ進出を果たし、同時にファイナルの舞台にも上がった日立。今季は開幕2連敗の苦しいスタートになったが、それでも徐々にペースをつかみ、確実に順位を上げてきた。
 日立の強みは『ぶれない』ところにある。2005年から指揮を執る小野秀二HCは以来、日立を『ディフェンスのチーム』に育てあげた。選手が入れ替わり、戦力や戦術に多少の変化があっても、チームの根幹、目指すものにぶれはない。
 今シーズンの1番大きな『変化』はメーンガードであった五十嵐圭(トヨタ)が移籍でチームを去ったことだったが、代わってスタートからコートに立った佐藤稔浩がよくチームを引っ張り、変わらぬ“日立カラー”で勝ち星を増やした。

 だが、オフェンス面だけを見れば、プレーオフに出場するほかの3チームに比べ、やや見劣りすることは否めない。竹内譲次という屈指のフォワード・センターを擁し、菅裕一、上山博之といった力のあるシューターはいるものの、竹内が執拗(しつよう)にマークされ、外のシュートも決まらなくなると、得点を外国人選手に頼らなければならない試合も間々見受けられた。それでもプレーオフが視野に入ってきた2月14日からは破竹の8連勝。武器とも言えるディフェンスでライバルたちを抑え込むと、一気に2位に躍り出た。

 今シーズンもその勢いのままプレーオフへ突入するかに見えた日立に、突如暗雲が立ち込めたのは3月6日のアイシン戦。試合終了間際にポイントガードの佐藤がアキレス腱(けん)を損傷し、今季の試合出場は絶望となってしまったのだ。控えの西村文男はルーキーながらパスセンスには定評があり、スリーポイントも得意としている逸材ながら、『ゲームをコントロールする』という点ではまだキャリア不足。主力3人を故障で欠いたアイシンには2連勝したものの、翌週の三菱戦で手痛い一敗を喫し連勝にストップがかかると、さらに次の週(3月20日、21日)にはパナソニックに72−90、76−86で連敗した。この週、プレーオフ進出に最後の望みを懸けてアイシンと対戦したトヨタ自動車が敗れたため、自動的にプレーオフへの切符を手にすることはできたが、まだ順位は確定していない。この時点で4位だった日立はリンク栃木との最終戦いかんで順位を上げる可能性も残っていた。
 そのリンク栃木戦でファンを失望させたのは、会場に竹内の姿がなかったことだ。急性胃腸炎による欠場ということだったが、いつもは竹内の控えでコートに出る山田哲也も故障のため、この日試合に出たのはルーキーの中濱達也。さらに翌日にはキャプテンの菅までもが欠場となり、満身創痍(そうい)の日立は大事なこの2連戦を59−82、59−68で落とした。

 4月3日に迫ったプレーオフ第1戦、竹内、菅は万全な状態でコートに立つことができるのか? 大舞台を前にメーンガードを失った痛手は大きいが、この苦境はチーム一丸となって打開するしかない。アイシン有利の予想を覆す日立の粘り強いディフェンスに期待したいところだ。

<了>

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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