TAJIRIが語る3・26『SMASH.1』完全ガイド!
セミファイナル TAJIRIvs.トミー・ドリーマー
トミー・ドリーマーを「恩師」として慕うTAJIRIは素のままの自分でぶつかり合うつもりだ 【t.SAKUMA】
TAJIRI 勝負をする前にこんなことを言うのも変なんですけど、本音を言えば、もう僕はトミーがSMASHのリングに上がってくれるというだけで感涙ものなんですよね(笑)。でも、そのぐらい僕にとって、トミーというのは大きい存在なんですよ。
――このカードの発表会見で、TAJIRI選手はドリーマー選手のことを「恩師」とおっしゃってましたよね
TAJIRI 本当にそうですよ。ひとつエピソードを挙げると、ECW末期の頃、選手に対してギャラが数か月にもわたって支払われていなかった時期があったんですね。そんな中で、ある週にいきなり選手みんなに1週間分のギャラが小切手で配られたんですよ。
――ずっと払われてなかったのに、いきなりですか?
TAJIRI そうなんですよ。そのときに僕は、ポール・ヘイマン(当時ECWプロデューサー)がどこからかお金を調達してきたとばかり思ってたんですけど、それから数年後に、ある事実がわかったんですね。というのは、ECWが解散してトミーとWWEで再会した頃、あれは僕とトミー、あとはスパイク・ダッドリーの3人で移動していたときの夜の出来事ですよ。そのときに、なぜか普段はお酒を飲まないトミーも僕らと一緒に飲んでたんですけど、話の流れで「あのときのお金は、どうやってポールが調達したんだ?」っていう話を僕がしたんですね。そうしたら、トミーが「実は、あれは俺が立て替えたんだ」っていきなり告白して、数年経ってから初めて僕もその事実を知ったんで、僕もスパイクも思わず「えっ!?」ってビックリしたんですよ。そうしたら、トミーは何も表情を変えることなく「さあ、話を変えよう」って、そういう男なんですよ。
――親分肌というか、そういうオーラが充満してますよね。
TAJIRI あんな老け顔ですけど、実は僕と同い年なんですけどね(笑)。でも、本当にボスになるために生まれてきたような男なんですよね、トミーは。僕も人生の中でいろんな人間に会ってきたけど、あんなにかっこいい男はいませんね。
――そんな中で、今回はハードコアマッチという、これもECW時代を見てきたファンにとってはたまらない試合形式で行なわれることが決定しました
TAJIRI それこそECWのときは、トミーと何回闘ったのかわからないくらいシングルマッチをやってるんですよ。で、僕がスティーブ・コリノとつるんでヒールをやってたときに、毎晩のようにトミーと闘ってた時期があって、そのときの戦績はほぼ五分でしたね。
――今では日本の団体でもハードコアマッチはよく行なわれていますが、ECWルールと呼ばれていたハードコアマッチとの違いというのはあるのでしょうか?
TAJIRI しっかりとしたプロレスの流れの中にハードコアアイテムがある、それがECWのハードコアマッチなんですよ。アイテム優先ではなくて。特に、トミーの闘い方にはそういう傾向がありますね。とにかくクレバーな闘いをするんですよ。そういったトミーの試合が新宿FACEというコアな空間で見られるのは、おそらく今回が最初で最後になるかもしれませんね。そう呼ぼうにも、なかなか簡単に呼べる選手でもないですし(笑)。
――実際に、会場に足を運ぶお客さんにとっても、そのぐらい貴重な体験になると
TAJIRI トミーが醸し出す雰囲気というのは、昔の映画俳優のようなかっこ良さがあるんですけど、そんな彼と同じ空間の中で空気を共有するだけでも、物すごく価値があることだと僕は思いますね。
――もちろん勝負となれば、TAJIRI選手にとっても負けられない試合になりますよね
TAJIRI 僕にとってトミーは、素のままの自分でぶつかり合える、世界でも数人しかいない相手なんですよ。だから、日本で闘ってる僕の試合しか見たことがない人にとっては、「あれ、いつものTAJIRIとはちょっと違うな」って感じてもらえる試合にきっとなると思います。僕が本当に見せたい試合というのがトミーとの試合の中にすべて凝縮されているので、それをぜひ感じ取ってもらいたいですね。
メーンイベント 大原はじめvs.KUSHIDA
表立って批判を繰り返してきたKUSHIDAに対し、大原(右)は静かに闘志を燃やす 【t.SAKUMA】
TAJIRI 結果的には、こうなって僕は良かったと思いますね。
――こうなることは、ある程度予測されてましたか?
TAJIRI それはもちろん。まあ、やっぱり若いもんは仲良しこよしでいるよりも、「てめえのことが嫌いなんだよ!」って感情をむき出しにしてぶん殴り合ってるほうが、傍から見ても楽しいというか、そっちのほうよっぽど健全でしょう(笑)。
――現時点では、KUSHIDA選手のほうが表立って大原選手のことを批判してる一方、大原選手は本音の部分を隠し持ってるような感じはありますがいかがでしょうか?
TAJIRI これは悪い意味でもなんでもなくて、KUSHIDAというのは一生のうちで2、3回しかスパークしない人間だと思うんですよ。だけど、大原はそういうのがまだ一度も無いですよね。で、KUSHIDAは、上の人から何かを言われると「なんか違うんじゃないか?」って考えるところからスタートするんですよね。その一方で、大原は「はい、わかりました」っていう男なんですよ。言ってみれば、“水と油”の関係になるんですけど、僕なんかは大原の「はい、わかりました」っていう部分が気になるというか、逆に不気味だったりもするんですよ(笑)。
――大原選手が、心の中で実際に思ってる本音の部分が予測できないということですね
TAJIRI そうなんですよ。だから、大原がある瞬間に感情をむき出しにして、本音をさらけ出したら、これはとんでもないことになるんじゃないかっていう期待感も僕の中にはあるんですよね。
――プロレスラーとして、大原選手、KUSHIDA選手に対する評価というのはいかがでしょうか?
TAJIRI ひいき目なしで今のプロレス界を見渡してみて、この二人の将来性はかなりいけてると僕は思うんですよ。KUSHIDAに関しては、先日のカナダ遠征でひさびさに彼が闘ってる試合を見たんですけど、ハッスルでやってた頃とは比べものにならないくらい変わってましたね。僕が見たのは、名門ハート家の出身でAAAを主戦場にしてるテディ・ハートとKUSHIDAが闘った試合なんですけど、もう運動神経のかたまりみたいな抜群の身体能力を持つテディを相手に、KUSHIDAは試合中ずっと余裕を保ち続けてるんですよ。あれを見たときは、ちょっと衝撃的でしたね。
――海外に出て、精神的たくましさが備わったということですか?
TAJIRI きっと彼の中で、海外に出たことによって何かが変わったきっかけがあったんでしょう。その一方で、大原は、メキシコから日本に戻ってきてからは地道に頑張ってる印象があるんですけど、いつの間にか、ウルティモ・ドラゴン、スペル・デルフィン、ザ・グレート・サスケというジュニアヘビー級の三大巨頭を倒してきてるんですよね。そういうすごいことを気がついたらやっちゃてる男なんですよ。
――大原選手は、メキシコのCMLLでレギュラー参戦して活躍するなど、既に海外での高い実績は持っています
TAJIRI 4年ぐらい前に、彼はCMLLでベルト(NWAウェルター級王座)を獲ってるんですよね。日本のファンにはわからないかもしれないけど、外国人選手がルチャ・リブレの殿堂と呼ばれているアレナ・メヒコでベルトを獲ることはとてつもなくすごいことなんですよ。しかも、大原はそのときキャリア2年くらいで、まだ22歳ですからね。変な話、実力だけでは到底無理だし、そもそもアレナ・メヒコで王座に挑戦するチャンスですら、なかなか与えられるもんじゃないんですよ。だから、これまで残してきた実績の面では、大原のほうがKUSHIDAよりも断然上なんですよね。そういう二人がこれまで残してきたドラマをリング上でどのようにして爆発させるのか、これはとても楽しみですよ。
――旗揚げ戦では、TAJIRI vs. ドリーマーというビッグカードを差し置いて、二人の対決をメインに据えたということで、TAJIRI選手もこの対決にはかなり期待を持っていると思われるんですがいかがでしょうか?
TAJIRI 僕の中で、メインイベントというのは、それがたとえ不確かなものであっても、今日できる極上のことより、明日になればもっと良くなるんじゃないかなっていう可能性が残されているほうがふさわしい気がするんですよ。実際に、この二人には、まだまだ未来があるわけじゃないですか。やっぱりそういうものを最後に持ってこないと、団体そのものの未来も見えてこないと思うんですよね。
――メインイベントを通して、団体の未来が見えてくると
TAJIRI そうです。だから、あとはその部分を二人が見る側にどう伝えられるのか、そこに尽きると僕は思います。だから、期待という意味では、彼らに対する期待もそうなんですけど、それ同じくらい、人生の未来をプロレスに託している二人の対決を見たお客さんが何を感じてくれるのかなっていう、その部分の期待も僕の中では大きいんですよね。
「旗揚げ戦を見てもらいたい。そうしたら今後も見逃せなくなる」
TAJIRI 今回に関しては、SMASHでこれから見せていく連続ドラマのいわゆる特別編に位置すると僕は思うんですよ。そして、4・23『SMASH.2』(新宿FACE)がドラマの第1話ですよね。これから物すごい渦で巻き起こっていくドラマの導入部分として、まずは旗揚げ戦を見てもらいたいと思います。そして、4月から始まる第1話、これももちろん見逃せなくなることでしょう(ニヤリ)。
――では、最後に改めてファンの方々へメッセージをお願いします
TAJIRI まあ、普段はクールな僕がこれだけ熱く語ってるくらいなので(笑)、ぜひとも3・26「SMASH.1」に注目してもらいたいです。とてもありがたいことに、既に指定席はすべて完売しているんですが、まだ立見席は若干残っているので、ぜひ生で、自分の目で確かめて、それから判断してください。絶対に損はさせません!
「SMASH.1」
【対戦カード】
<メーンイベント>
大原はじめ
KUSHIDA
<セミファイナル ハードコアマッチ>
TAJIRI
トミー・ドリーマー(米国)
<第3試合>
小路晃
レザーフェイス
<第2試合>
朱里
里村明衣子(センダイガールズプロレスリング)
<ワールドトライアウト・マッチ>
TAJIRI
Mentallo(ワールドトライアウト選出選手)