クリチコvs.チャンバース=WBOヘビー級タイトルマッチ見どころ

ボクシングライター 原功

ここ4年間の世界戦で全勝と安定感抜群の王者クリチコ 【(C)NAOKI FUKUDA】

 日本時間3月21日(日)にウラディミール・クリチコvs.エディ・チャンバースのIBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチがドイツで開催される(日本では3月22日午後9時よりWOWOWで放送)。
 クリチコは06年4月にクリス・バード(米国)からIBF王座を奪い、08年2月にはスルタン・イブラギモフ(ロシア)を下してWBO王座を吸収。兄のビタリ・クリチコとともにヘビー級シーンの主役を務めている。

チャンバース、安定感抜群の王者クリチコに挑む

 この4年間で8度の世界戦に臨み全勝、そのうちイブラギモフ戦を除いた7試合を規定ラウンド内で終わらせている。さらに細かくデータを見てみると、7KOのうち6KOが6ラウンド以降に集中していることが分かる。スタミナ配分を考えた慎重な試合運びをしていることが、こうした数字からも読み取れる。

 事実、“第2期政権”のクリチコは自分の間合いをつくるために時間を割くことが多くなった。そのために左ジャブを執拗に突き、危険を察知すると足をつかって離れるケースが目立つ。兄同様、迫力が若干目減りした印象は拭えないが、引き換えに安定感を手に入れたといえる。
 パワーに頼らなくなったとはいえ、それでも身長200センチ、体重110キロ前後の巨体は相手にとって厄介だ。むしろ、その体で堅実なアウトボクシングをされる方が、相手にとっては攻略が難しくなっているといえるのかもしれない。
 挑戦者のチャンバースは36戦35勝(18KO)1敗の戦績を持つ27歳。元ボクサーの父親から9歳のときに指導を受け、アマチュアで約80戦を経験したのちに18歳でプロに転向。以来10年、まずは順調に階段を駆け上がってきたといえるだろう。
 特に最近の3年ほどの活躍は特筆に値する。かつてのホープ、ドミニク・グイン(米国)、カルビン・ブロック(米国)を判定で下し、08年にはUSBA全米王座も獲得。09年には元王者サミュエル・ピーター(ナイジェリア/米国)にも判定勝ち。さらに世界ランカー対決でアレクサンデル・ディミトレンコ(ウクライナ)にも初黒星をつけている。この間、アレクサンデル・ポベトキン(ロシア)との挑戦者決定戦で判定負けを喫しているが、決して株を落とす敗戦ではない。

 身長185センチ、リーチ191センチ、体重100キロ弱と現代のヘビー級では平均をやや下回る体格だが、その分、動きは俊敏だ。「ファースト・エディ」の異名もあるほどだ。ヘビー級ではトップ・クラスの技巧派といってもいいだろう。
 ただ、パワーの点ではクリチコが大きく上回っており、正面からの力比べになるとチャンバースの勝ち目は薄い。クリチコの左ジャブをかいくぐり、鋭く踏み込んでワンツーを見舞って離れるというボクシングがチャンバースにできるかどうか。
 もし、チャンバースがクリチコの体格と迫力に押されて直線的に下がるようだと、勝負はジャッジの手を煩わせることなく終わるはずだ。

Written by ボクシングライター原功

IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチ(3月20日、ドイツ)

[王者]ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)
[挑戦者]エディ・チャンバース(米国/WBO世界ヘビー級1位)

放送:
WOWOW:3月22日(月)よる 9:00

再放送:
WOWOW:3月23日(火)午前10:00
193ch:3月26日(金)午後 0:45
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