「5階級制覇」王者パッキャオvs.「ガーナの至宝」クロッティ

ボクシングライター 原功

アジア人として史上初の5階級制覇を成し遂げた現王者パッキャオ 【(C)NAOKI FUKUDA】

 日本時間3月14日、ボクシングのWBO世界ウェルター級タイトルマッチが米国・テキサスで開催される(午後0時よりWOWOW191chでハイビジョン生放送)。
 現王者で、アジア人として史上初の5階級制覇を成し遂げたフィリピンの英雄マニー・パッキャオに挑むのが、ガーナの至宝こと元IBF世界ウェルター級王者、ジョシュア・クロッティだ。

 当初はこの日程でパッキャオ対フロイド・メイウェザー(アメリカ)の5冠王対決が計画されていたが、ドーピング検査の方法を巡って両陣営が対立。結局、パッキャオ対メイウェザー戦は今回は破談となり、代わりにクロッティに出番が回ってきたという経緯がある。
 新しく組まれたこのカードもなかなか興味深い組み合わせといえる。もし、パッキャオ陣営がクロッティを軽視するようなことがあると、取り返しのつかない事態に陥る危険性を含んだカードといえるだろう。


 5階級制覇を成し遂げたパッキャオの50勝(38KO)3敗2分というレコードと比較すると、クロッティの35勝(20KO)3敗1無効試合はかすんでしまいがちだが、中身に関しては勝るとも劣らないものがある。パッキャオが対戦を回避したアントニオ・マルガリート(メキシコ)には正面からの打撃戦を挑んで惜敗。パッキャオに5冠目を献上したミゲール・コット(プエルトリコ)とも拳を交えた経験を持つ(12回判定惜敗)。また、パッキャオと同じサウスポーのザブ・ジュダー(アメリカ)には9回終了負傷判定勝ちを収めている。もうひとつ武運に恵まれない印象もあるが、底力は十分だ。

 6歳のときに2人の兄とともにボクシングを始め、アマチュアで49戦45勝4敗の戦績を残して95年にプロデビュー。ニックネームの「ヒッター」は、熱い打撃戦を好むために付けられた「ヒーター」が変化したと言われることでも分かるように、試合は常にエキサイティングだ。高いオンガード・ポジションから繰り出される左ジャブ、肩口から真っすぐ伸びる右ストレートが主武器だが、頑丈な体も特徴のひとつといえる。この試合に備えフロリダで集中トレーニング・キャンプを敢行し、かつての指導者をガーナから呼び寄せるなどモチベーションは高い。

常識的にみればパッキャオの勝利は不動だが

パッキャオに挑む元IBF世界ウェルター級王者クロッティ 【(C)NAOKI FUKUDA】

 6対1のオッズが示すとおり、常識的にみればパッキャオの勝利は不動と見るべきなのだろうが、数字以上に危険度の高いカードといわざるをえない。理由としては、クロッティの底力はもちろんのこと、パッキャオ自身の集中力の度合いが気になるからだ。
 ここ数年、スーパーファイトの続くパッキャオは本来ならば試合間隔をもう少し開けたいところだが、5月に自身のフィリピン下院議員選挙出馬を控えているという事情がある。そのため日程を前倒しにして試合を行なうわけだ。フレディ・ローチ・トレーナーでさえ「できることならば試合は5月の方が良いが、決まったからには全力を注ぐしかない」と話していたほどだ。調整とモチベーションの2点においては不安がないとはいえない。
 試合の大きなカギを握るのは、これまでのパッキャオの試合同様、序盤の主導権争いだろう。鋭い踏み込みから繰り出すパッキャオの左ストレートが元IBF王者のガードを容易に割るようだと、5冠王の勢いは最初からマックスになるだろう。中盤を待たずにタフなガーナ人をストップしてしまう可能性もある。
 その一方で、クロッティが正確なワンツーをヒットして体の小さいパッキャオを突き放しながら後退させる展開に持ち込むと、番狂わせの可能性が一気に膨らむ。
 開始直後から目の離せない試合になりそうだ。

 世界が注目するこの大一番の模様は、3月14日(日)午後0時よりWOWOW191chでハイビジョン生放送でお届けする。

Written by ボクシングライター原功

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(3月13日、アメリカ、テキサス州)

[WBOチャンピオン]マニー・パッキャオ(フィリピン)
[元IBF世界ウェルター級チャンピオン]ジョシュア・クロッティ(ガーナ)

放送:
191ch: 3月14日(日)午後0:00 ハイビジョン生放送

再放送:
191ch: 3月15日(月)よる9:00
191ch: 3月16日(火)午前10:00
193ch: 3月19日(金)午前10:30
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