[ロングインタビュー]桜庭和志の「独創力」とは何か?=『Fight&Life』発

ファイト&ライフ

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 魔裟斗と並ぶ2000年代の格闘技界スーパースターといえば、空前の総合格闘技ブームを巻き起こした立役者である桜庭和志をおいて他におるまい。日本最弱とまで言われた時代に卓越したテクニックと明晰な頭脳を駆使して世界に立ち向かい、日本人が世界と互角以上に戦えることを証明してみせた功績は計り知れない。

格闘技は1対1の勝負なんだから、お互いが納得すればいい

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──本題に入る前に、10・25DREAM大阪大会での弁慶戦について触れておきたいと思います。桜庭選手がアキレス腱固めを取りに行った時、一方的に殴られるシーンがあり、あそこでストップするべきだったのではないかとの声が多いことについてどう思われていますか?

桜庭 そうなんですか? ぼくは知らないです。でも、意識は飛んでいなかったですよ。レフェリーに“動かなかったらストップしますよ”と言われたので動きました。アキレス腱って8〜9割くらい極まっている時に、ずっとそのままの体勢にしておくとけっこう痛みが溜まってギブアップすることがあるんですよ。それでずっとアキレスの体勢をやっていたんです。別にストップするもしないも意識はあったし、レフェリーの大城君は慣れているのでちゃんとそれを見ていたと思いますけれど。

──かなりパンチをもらっていましたよね?

桜庭 バンバン殴って来たので“なんだよ、コイツ。面倒くさいな”と思っていたので殴られたのは覚えています。側頭部にアゴを動かす筋肉があるじゃないですか。そこをバチバチ殴られたので痛かったことは痛かったですけれど。

──意識が飛ぶほどではなかった?

桜庭 全然ありましたよ。だからレフェリーの声が聞こえたので動きましたし、お客さんの声も聞こえていましたし。

──危ないように見えましたが……。

桜庭 危ないって言われても……なんでぼくの試合が騒がれているのか意味が分かりません。レフェリーがちゃんと判断してやっていることだし、弁慶が文句を言っているわけもないですよね? 選手がお互いに納得していることだからいいんじゃないですか。ぼくがメルヴィンとやった時は、半分以上は意識が飛んでいたので“まあ、しょうがないや”って思いましたもん。たまに他の人の試合を見ることがあるんですけれど、完全に飛んでいるのって分かるじゃないですか。それは一番近くで見ているレフェリーが最初に分かることです。完全に意識が飛んでしまって、その後にバババッと何発かもらって対応できていなければ止めればいいと思いますけれどね。それはレフェリーの判断でいいでしょう。

──では、世間や僕らが言うほど危ない状態ではなかった?

桜庭 全然危なくなかったですよ。その後、一応検査は行きましたけれど、脳みそは何ともなくて側頭部の薄い筋肉がちょっと腫れていただけでしたからね。

──打たれている時にディフェンス的なことはしていましたか?

桜庭 殴られている箇所が特に急所でもなく、ただ痛かっただけですから。向こうが叩きづらいような形に持っていくようにはしていましたよ。ただ、弁慶の身体がけっこう柔らかかったのと身長差があったので、パンチが届いてきたのはありましたけれど。そこまで騒ぐほどのことではないと思います(笑)。よく試合後、ストップされて“俺はやられてないよ”ってアピールする人がいるじゃないですか。あれはレフェリーがヘタクソだから。ぼくがUFC JAPANに出た時がそうでした。何でストップなの、って感じで。お互いに納得するまでやらせて欲しいなって。ぼくがヴァンダレイ(シウバ)と3回目にやった時は、倒れた時点で完全に意識がなかったので危なかったと思いますけれど。

──試合にはあまりレフェリーに介入して欲しくない、と?

桜庭 あからさまに行き過ぎちゃったら止められてもしょうがないと思いますよ。呑みの席でぼくが酔っ払って高橋(渉)にマウントパンチを連打することがあって、他の人たちは“危ない!”って言って止めるんですが、ぼくはほぼ外してやっていますからね。ガードしている手をかするくらいの感じでやるんですが、イメージとして危ないように見えるようなんです。慣れたレフェリーならその辺は見極められるんじゃないですか。

──技の形に入っているからには、意識が飛ばない限りは止めてくれるなって思います?

桜庭 ぼくは思います。意識が飛べば全然力が入らないから、技の状態を解かれてしまうだろうし、そこで止めればいいでしょう。でも今回はぼくの手に力が入っていたから、レフェリーは止めなかったという話も聞いています。せっかくいいポジションを取っているのに、当たっても当たっていなくても連打されたら勝ちになっちゃうのなら連打したもん勝ちじゃないですか。

──完全にのびるまでやらなくてもいいんじゃないですか?

桜庭 選手的には、完全にのばされた方がいいですよ。のばされずに止められた人は必ず文句を言うでしょう? だって、そこまでやる覚悟がその人にあるんですから。みんなそういう覚悟をもってやっているんですよ。格闘技は1対1の勝負なんだから、お互いが納得すればいいんです。それをみんなが見たいから見るわけでしょ。そんなことを言うんだったら、最初からこういう競技はない方がいいわけじゃないですか。

(以下、Fight&Life vol.16に続く)
[取材・文 熊久保英幸(GBR)、撮影 寺澤有雅]

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(株)フィットネススポーツ発行
TEL 03-5653-1322

<コンテンツ>
●[ロングインタビュー]桜庭和志の「独創力」とは何か?
●三崎和雄の覚悟「全てを受け入れる気持ちがなければリングには立てない」
●魔裟斗vs.アンディ・サワー プレビュー アーネスト・ホースト/レジェンズ11/佐藤嘉洋
●KICK! KICK! KICK!! 〜2010年の熱い野郎ども〜
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