日大ダニエルの大逆転劇「あれこそが駅伝」=東洋大元監督の川嶋氏が語る総括
連覇を果たし喜ぶ日大アンカーのダニエル=出雲ドーム 【共同】
出雲大社正面鳥居前から出雲ドーム前までの全6区、44キロのショートコースを、全国16大学と、国内外の選抜5チームを加えた計21チームで争われた今大会。昨年同様、日大のギタウ・ダニエル(4年)が最終6区で、トップの山梨学院大との41秒差をひっくり返す大逆転劇を見せて、優勝を飾った。2位には山梨学院大、3位に東洋大が入った。
元東洋大の監督である川嶋伸次氏に今大会、そして今季の有力校の戦力について語ってもらった。
新戦力を使うには格好の大会
(11月の)全日本(大学駅伝)は、関東の大学にとって箱根駅伝の前哨戦となりますが、出雲に関しては自分の大学の戦力を確かめる場といえます。たとえば、東洋大は2年生が多かった(6人中4人)。春先から夏合宿にかけて練習をしてきて、今大会でレースの場を確かめてそれぞれがそこそこ走れたように思います。
日大は、ダニエル、ガンドゥ・ベンジャミン(1年)の留学生2人を起用しました。確かに優勝はしましたが、チーム全体の総力としては、3位に入った東洋大、4位の早大と一緒かそれより落ちるかと思います。(※箱根駅伝では留学生のエントリーは1人のみ)
その一方で、ダニエルは駅伝をすごく分かっていると思いました。象徴的なのは、トップを走っていた山梨学院大のオンディバ・コスマス(2年)をとらえた際に、一回後ろで休んでいるんですよね。一呼吸置いて、相手の余裕を見てから『いける』と、スパートを掛けました。経験もそうだと思いますが、あれこそが駅伝なんです。日大は5区から6区のつなぎの区間があまりうまくいかなかったと思います。30秒差くらいだったらよかったのですが、40秒もトップとタイム差がついてしまい、それは誤算だったように思います。
2位に入った山梨学院大については、メクボ・モグス(現アイデム)が今年卒業しましたが、コスマスという留学生がアンカーを任されました。モグスほど強烈ではなく、モグスよりもマイナス2分を稼げる意識がないと思いますが、そのほかの日本人選手の力が上がってきているので、これからチーム全体の状態が上がってくると思います。
東洋大、早大は地力があるところを示せた
今大会で駅伝デビューを果たした早大の中山卓也(2年)に関しては、渡辺康幸監督にとって誤算だったと思います。昨年からずっと走れない状況でしたから、今回箱根に起用するかは分かりませんね。前半1キロ、2キロの入りが速くて、3キロでがくっと落ちてしまった。箱根はこれよりももっと長い距離ですから、使えないのではないかなと思います。7、8区とかで起用する可能性はあるかもしれませんが、不安要素はぬぐえないですね。20キロになると、今の走りでは付いていけないと思います。出雲のような短い距離なので、今大会出てきたのではないでしょうか。
一方で、1年生がいい走りを見せていました。4区に起用された佐々木寛文(1年)は佐久長聖出身で、昨年の高校駅伝では区間賞を獲得して優勝に貢献した選手。今大会でも積極的な走りを見せていました。さらに、最終6区を任された平賀翔太(1年)も佐々木同様に佐久長聖の選手ですが、恐れ知らずの1年生らしい走りでしたね。
そんな中、東洋大の高見諒(3年)は、早大の平賀が仕掛けてきたペースにもうまく状況判断して落ち着いて付いていくことができました。スタート前の表情も落ち着いていましたし、経験がありますからね。箱根駅伝の山上りで区間新を出した柏原竜二(2年)も、今大会1区で日本人トップの2位になるなど、最低限の仕事をしました。東洋大は主力選手を休ませて、昨年走っていない2年生の伸びしろを見ることができました。もしかしたら伸びしろを一番持っているかもしれませんね。
主力が抜けて崩れた明大
また、有力視されている明大は、今大会12位に終わりました。エースの松本昂大(4年)がケガで故障。1区に志願して走ったという鎧坂哲哉(2年)は、2年になっていろいろと考え出したりする部分があったのでしょうね。とにかく、明大は全体的に『元気がない』という印象。主力が故障とかインフルエンザになってしまったと聞いていますが、こうして主力が抜けると、ガタッと崩れるというのはよくない状況です。
今年は全体的に選手層が薄く、昨年、一昨年に比べて飛び抜けた大学がない状態。東洋大、早大、駒大も確実ではなく、それぞれの大学に不安要素があります。全日本が終われば、各大学どれくらいの戦力か見えてくると思います。
<了>
川嶋伸次/Shinji Kawashima
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