ビタリ・クリチコ対クリス・アレオーラ見どころ、ウクライナの大砲vs.米国の期待 中盤までのKO決着間違いなし

ボクシングライター 原功

昨年10月に約4年ぶりの戦線復帰戦でサミュエル・ピーターを破ってWBCタイトルを獲得、2度目の防衛戦に臨むクリチコ 【(C)NAOKI FUKUDA】

 このところヘビー級は選手の負傷やデビッド・ヘイ(英)のトップ戦線参入によって複雑な動きになっている。
 ヘイは6月にIBF&WBOチャンピオンのウラディミール・クリチコ(ウクライナ)に挑戦する予定だったが、自身が練習中に負傷したためこれをキャンセル。宙に浮いたかたちのウラディミール・クリチコは、同じく試合キャンセルの憂き目にあったルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)と対戦して圧勝。傷の癒えたヘイは、一時はウラディミールの兄ビタリ・クリチコ(ウクライナ)との決戦に意欲を見せたが翻意。一転して11月にWBAチャンピオンのニコライ・ワルーエフ(ロシア)への挑戦に路線変更してしまった。
 こうした流れを受けて、ビタリ・クリチコ対クリス・アレオーラというカードが実現することとなったのである。

 クリチコは昨年10月に約4年ぶりの戦線復帰戦でサミュエル・ピーター(ナイジェリア/米)を圧倒。8回終了TKO勝ちでWBCタイトルを獲得し、これが2度目の防衛戦となる。アマチュアで134戦(119勝80KO15敗 ※210戦195勝80KO15敗説もある)を経験後、弟ウラディミールと同時に96年11月にプロデビューしてから13年。38歳という年齢が気になるところだが、ピーター戦やファン・カルロス・ゴメス(キューバ/独)との初防衛戦を見る限り衰えは感じられない。4年のブランクが休養というかたちでプラス効果をもたらしているのかもしれない。

 身長202センチ、リーチ203センチという恵まれた体格に加え、豪腕という形容がピッタリの右強打を持っているのだから相手にとっては厄介だ。自分のペースで試合を進めたという点を割り引いてもピーター戦で8回、ゴメス戦で9回まで戦っており、スタミナも問題ないとみていいだろう。

 挑戦者のアレオーラは6歳でボクシングを始め、16歳のときにはすでに200戦を越す試合経験があったと伝えられる。20歳のときには全米ゴールデン・グローブ大会でL・ヘビー級優勝を飾っている。しかし、奔放な性格なのか何度もリングから遠ざかったことがあり、結局プロ転向は22歳のときだった。

 03年9月の初陣を2回TKOで飾ると、以後はバッタバッタと倒しまくり、ここまで27戦全勝(24KO)という戦績を残している。クリチコの92パーセントには及ばないが、約89パーセントという驚異的なKO率を誇る。4試合前のチャズ・ウィザスプーン(米)戦は3回反則決着となっているが、これは相手がKO負け寸前になったところでセコンドがリングに入ったためで、アレオーラの事実上のKO勝ちともとれる。それを含めると実に15連続KO勝ちということになる。全体的なスピード感は欠くが、体ごと叩き込むようなパンチは左右とも破壊力抜群だ。パワー頼みの古典的なヘビー級強打者といっていいかもしれない。

 ホームは今回の試合地ロサンゼルス。これまでにジェームス・トニー(米=元3階級制覇チャンピオン)やハシム・ラクマン(米=元世界ヘビー級チャンピオン)、そしてウラディミール・クリチコともスパーリングの経験があるというから、兄ビタリとの対決はなにやら因縁めいたものも感じられる。

 これぞヘビー級といった無類の強打者同士の対決だけに、勝負がジャッジの手に委ねられることはないと見て間違いない。クリチコのワンツーにアレオーラの反応が遅れるようだと、序盤のKO防衛も考えられる。その一方で挑戦者の破格の強打が番狂わせを起こす可能性も決して小さくないように思える。試合開始ゴングから一瞬も目の離せないスリリングな展開になるだろう。

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クリチコ兄弟の兄ビタリに全勝の刺客アレオーラが挑む!

191ch 9月28日(月)よる8:00
191ch(再)10月1日(木)深夜3:45、193ch 10月2日(金)午前9:40
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