20歳のニューヒーロー、デルポトロが初栄冠=全米テニス

秋山英宏/WOWOW

全米テニス 男子シングルス決勝は20歳のデルポトロがフェデラーの6連覇を阻み、4大大会初優勝を飾った 【Getty Images】

 2009年の全米オープンは、男子テニス界に新しいヒーローを誕生させた。フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)――これまで一度もグランドスラム(4大大会)決勝の舞台に立ったことのない20歳の若者が、男子シングルス決勝で16個目のメジャータイトルに挑んだ王者ロジャー・フェデラー(スイス)を3−6、7−6、4−6、7−6、6−2で倒し、初優勝を果たした。

ワンチャンスを生かしたデルポトロ

 試合はフェデラーペースで始まった。第1セットを先取し、第2セットも先にサービスブレークに成功する。だが、第2セット第10ゲームで試合は大きく流れを変えた。フェデラーのサーブをブレークして5−5としたデルポトロは、タイブレークも制し、1セットオールに追いついた。

 試合序盤、フェデラーの切れ味のあるショットに、デルポトロは「勘弁してくれよ」というような仕草を見せた。しかし、彼の出来もそれほど悪いわけではなかった。逆に、フェデラーはサーブが不調だった。ファーストサーブの確率は第1セットが41%、第2セットも44%。ダブルフォールトは最初の2セットだけで7本もあった。今から振り返れば、第1セットもどちらに転んでもおかしくない展開だった。

 劣勢に見えたデルポトロは、第2セットのワンチャンスを生かし、息を吹き返した。デルポトロはこれで、判官びいきの観客を味方につけた。スタンドには母国アルゼンチンの観客も多く、「オレー、オレオレオレー」の合唱が起きる。互角の展開は第4セットまで続いたが、デルポトロは声援にも乗せられ、試合の流れをつかんでいった。
 一方のフェデラーは徐々にイージーミスが増え、第5セットはデルポトロの一方的なペースとなる。デルポトロが迎えた3本目のマッチポイントは、フェデラーのバックハンドが大きくラインを割った。テニス界に新しい歴史が刻まれた瞬間だった。

全米優勝はサクセスストーリーの第1ページ

 フェデラーはコート上でのインタビューで「おめでとう。僕もいいプレーをしたつもりだけど、君がベストだった」とデルポトロを称えた。デルポトロは「ロジャーを倒すことが一つの夢だったんだ。今の気持ちはとても言い表せないよ」と興奮を隠しきれなかった。

「スペイン語で話してもいいかな」と司会者にせがんだデルポトロは、母国の言葉で2度目のスピーチを行った。「僕と両親と友人たちにとって、特別な瞬間だ。優勝トロフィーはみんなのものだよ」と話すうちに、垂れ下がった大きな目が、たちまち潤んでいった。
 20歳356日という、全米オープンでは8番目に若いチャンピオンだ。しかし、これは勢いだけでつかんだトロフィーではない。昨年夏は、ツアー初優勝を遂げると、そのまま4大会連続優勝の離れ業を演じた。今シーズン、守備力を生かしたテニスから攻撃的なテニスに脱皮したことで、その圧倒的なポテンシャルを爆発させたのだ。この全米は、彼のサクセスストーリーの第1ページとなるだろう。

<了>

「全米オープンテニス2009」
2009年8月31日(月)〜9月15日(火)WOWOWにて連日生中継!
14日間にわたり再び世界中を熱気と感動で包みこむこの全米の模様を生中継中心に合計約150時間という圧倒的ボリュームで連日放送!(※デジタル193ch含む)

詳しい情報はWOWOW TENNIS ONLINEへ!
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント