20歳のニューヒーロー、デルポトロが初栄冠=全米テニス
全米テニス 男子シングルス決勝は20歳のデルポトロがフェデラーの6連覇を阻み、4大大会初優勝を飾った 【Getty Images】
ワンチャンスを生かしたデルポトロ
試合序盤、フェデラーの切れ味のあるショットに、デルポトロは「勘弁してくれよ」というような仕草を見せた。しかし、彼の出来もそれほど悪いわけではなかった。逆に、フェデラーはサーブが不調だった。ファーストサーブの確率は第1セットが41%、第2セットも44%。ダブルフォールトは最初の2セットだけで7本もあった。今から振り返れば、第1セットもどちらに転んでもおかしくない展開だった。
劣勢に見えたデルポトロは、第2セットのワンチャンスを生かし、息を吹き返した。デルポトロはこれで、判官びいきの観客を味方につけた。スタンドには母国アルゼンチンの観客も多く、「オレー、オレオレオレー」の合唱が起きる。互角の展開は第4セットまで続いたが、デルポトロは声援にも乗せられ、試合の流れをつかんでいった。
一方のフェデラーは徐々にイージーミスが増え、第5セットはデルポトロの一方的なペースとなる。デルポトロが迎えた3本目のマッチポイントは、フェデラーのバックハンドが大きくラインを割った。テニス界に新しい歴史が刻まれた瞬間だった。
全米優勝はサクセスストーリーの第1ページ
「スペイン語で話してもいいかな」と司会者にせがんだデルポトロは、母国の言葉で2度目のスピーチを行った。「僕と両親と友人たちにとって、特別な瞬間だ。優勝トロフィーはみんなのものだよ」と話すうちに、垂れ下がった大きな目が、たちまち潤んでいった。
20歳356日という、全米オープンでは8番目に若いチャンピオンだ。しかし、これは勢いだけでつかんだトロフィーではない。昨年夏は、ツアー初優勝を遂げると、そのまま4大会連続優勝の離れ業を演じた。今シーズン、守備力を生かしたテニスから攻撃的なテニスに脱皮したことで、その圧倒的なポテンシャルを爆発させたのだ。この全米は、彼のサクセスストーリーの第1ページとなるだろう。
<了>
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