実力急上昇の20歳デルポトロ、ナダルを下し決勝へ=全米オープンテニス第14日
デルポトロ、ナダルに圧勝! 初の決勝へ
20歳のデルポトロ、第3シードの強敵ナダルに圧勝し、自身初のグランドスラム決勝進出を決めた 【Getty Images】
13日(大会第14日)の男子シングルス準決勝で第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)を破ったフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)は、コート上での勝利者インタビューで殊勝な態度を見せた。観客は「謝ることないぞ」とでもいうように、盛大な拍手と声援で、これに応えた。
グランドスラムでは今年1月の全豪以来となるロジャー・フェデラー(スイス)とナダルの決勝を楽しみにしていたファンも、確かにいただろう。しかし、デルポトロがこのナダル戦のようなテニスを見せれば、素晴らしい決勝になることは間違いない。デルポトロは、実績ではナダルにはるかに及ばない。しかし観客は、この日の彼のプレーが決勝進出に十分値すると認めたからこそ、拍手を送ったのだと思う。
この試合、ナダルは3セットで6ゲームしか奪えなかった。記者会見で敗因を問われると「彼が本当にいいプレーをしたからだよ」と話した。腹筋痛の影響も大きかったのだと思う。しかし、この日のデルポトロなら、ナダルの体調が良かったとしても、十分にいい勝負ができただろう。
「いいプレーができたと思う。サーブにはかなり集中した。しっかり入れよう、そして、できるだけ攻撃的にいこうと思ってプレーしたんだ」とデルポトロは試合を振り返った。エースは6本だったが、第1セットは77%の高確率でファーストサーブが入り、ナダルに自由にリターンを打たせなかった。サーブだけではない。あきれるくらい堅実なバックハンドと、198センチの長身を生かして高い打点から打ち込むフォアハンドが、ナダルの守備を完全に打ち砕いた。
「この全米オープンに勝つことが夢なんだ」と満員の観衆の前で語ったデルポトロ。「明日も最後の1ポイントまで頑張るよ。仮に負けたとしても、僕の人生で最高の瞬間になるはずさ」と目を輝かせた。
グランドスラムでは初の決勝進出。20歳と355日のデルポトロは、全米(オープン化以降)では8番目に若い決勝進出者だ。しかし、この若者が明日の決勝でスーパースターの仲間入りをする可能性は十分にある。
フェデラー、難敵ジョコビッチを退ける
この試合は、立ち上がりから好調だったわけではない。第1セットはフレームショットが目立ち、ファーストサーブの確率も50%と低かった。それでも最後は勝負強さを見せ、タイブレークでこのセットを奪ったフェデラー。続く2セットも連取して、難敵の第4シード、ノバック・ジョコビッチ(セルビア)を振り切った。
2セットアップで余裕が出てきた第3セットは、スーパーショットの連続だった。競り合いに強いフェデラーと、美しいテニスでポイントを重ねていくフェデラー。この準決勝で、王者は二つの強さのバリエーションを披露した。
明日の決勝には、ビル・チルデン(米国)が1925年に達成して以来の全米6連覇、そして、自身が持つ最多記録を更新するグランドスラム通算16個目のタイトルが懸かる。
デルポトロとの対戦成績はフェデラーの6勝0敗。この数字だけ見ればフェデラーの優位は動かない。しかし、デルポトロが伸び盛りの選手であるだけに、これまでの対戦とは別の結果となるかもしれない。
年頭の全豪では、フェデラーが6−3,6−0,6−0と圧倒したが、初夏の全仏では一転、3−6,7−6(2),2−6,6−1,6−4の接戦になった。このスコアは、そのままデルポトロの成長の証しと受け取っていい。
少し前までは「守備の人」だったデルポトロは、アグレッシブなプレーヤーに生まれ変わった。新たな一面を見せたのが、この全仏のフェデラーとの準決勝だった。「全仏のころより、彼はさらに危険な選手になっている」というのは、準決勝のテレビ解説を務めたジョン・マッケンロー。ナダル戦を見れば、その意見に同意したくなる。
フェデラーも「彼はひと月ごとにうまくなっているよ。サーブも良くなっているし、ベースラインでのプレーにも自信を増している。コートで何をすべきか分かってきたんだよ」と警戒を怠らない。
それでもフェデラーは「パリでは接戦だったが、今度はどんな結果になるか楽しみだね」と、いつものように王者の余裕を見せるのだ。若きチャレンジャーが、史上最強の呼び声が高い王者に挑む男子シングルス決勝。これは、間違いなくスリリングな戦いになる。
<男子シングルス準決勝>
ラファエル・ナダル(スペイン)0−3フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)
(2−6、2−6、2−6)
ロジャー フェデラー(スイス)3−0ノバック・ジョコビッチ(セルビア)
(7[7]−6[3]、7−5、7−5)
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ