2人の元女王が見せた、ヘビー級の打ち合い=全米オープンテニス 第7日

秋山英宏/WOWOW

クライシュテルスとV・ウィリアムズの元世界ランク1位対決は、クライシュテルスが勝利。準々決勝進出を決めた 【Getty Images】

 全米オープンテニス第7日の女子シングルス4回戦、ビーナス・ウィリアムズ(米国)とキム・クライシュテルス(ベルギー)の元世界ランキング1位同士の対戦は、ラリーのクオリティも、スタジアムの雰囲気も、まるでヘビー級タイトルマッチのようだった。一方的な展開から盛り返していく精神力。相手の強烈なパンチにも体勢が揺るがないフィジカルの強さ、そして、全身に満ちあふれる闘争心。これは2人のチャンピオンによる見事なバトルだった。

元世界ランク1位同士のハイレベルな戦い

 立ち上がりはビーナスに硬さが見られた。クライシュテルスは逆に、エンジン全開で試合に入った。フルスイングのショットが、驚くべき確率でコートに突き刺さる。第1セットのクライシュテルスのエラーはわずか4本。第3シードのビーナスを6−0で圧倒した。

 第2セットに入るとビーナスがギアを上げる。クライシュテルスのショットも、さすがに精度が落ち始めた。今度はビーナスの6−0。わずかな調子のアップダウンがこれだけ大きな差となって表れるのだ。彼女たちがいかに高いレベルの集中力で戦っているか。それを、この2個のベーグルが逆説的に示している(ベーグル:6−0の比喩(ひゆ)的な言い方。日本流に言えば「ダンゴ」)。

 第3セットに入ると、豪快な打ち合いに神経戦の要素が加わり、一層、妙味が増した。なんとかして、流れをつかみたい両者。クライシュテルスはラケットをコートにたたきつけそうになり、ビーナスの叫び声は一段と甲高くなった。
 だが、調子を戻し、流れを再び引き寄せたのはクライシュテルスだった。第3ゲームでビーナスのサーブを破り、一歩リード。5−4で迎えたサービスゲームでは、2本のブレークポイントを切り抜けた。マッチポイントはサービスのウイナー。派手な打ち合いのエンディングにふさわしい、ビッグサーブだった。

年齢と経験の積み重ねが勝利へと導いた

 クライシュテルスはコートの中央に歩み出て、観客席に向けてラケットを掲げた。満員の観客の前で、彼女はこれまでに何十回、何百回と、この仕草を見せてきた。この勝利の甘さをもう一度味わうために彼女は復帰を決めたのだ。
「ファンにまた取り囲まれたくて復帰したわけではなくて、テニスがしたいから復帰したの。でも、センターコートや大きなスタジアムコートでプレーするのは特別な気分。コートに出ていって、観客が叫んだり応援してくれるのを聞くのは、すごくいい気分よ」と、クライシュテルス。終盤の大事な場面では「以前と同じように硬くなった」というが、「年齢を重ね、経験を積んだことで、少しはましになったかもしれないわ」と微笑んだ。

 それにしても強かった。強烈なショットを持った若手がたくさん出てきたが、やはり、彼女やビーナスは役者が違うというべきだろう。ダークホースと見られていたクライシュテルスだが、この一戦で優勝争いのトップグループに加わったと言える。

<女子シングルス4回戦>
キム・クライシュテルス(ベルギー) 2−1 ビーナス・ウィリアムズ(米国)
(6−0、0−6、6−4)

<了>

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