不調の中でも強さを見せた王者フェデラー=全米オープンテニス 第6日 

秋山英宏/WOWOW

逆転勝ちで4回戦へ

全米オープン第6日、6連覇を目指すフェデラーは、不調ながらもヒューイットを破り、16強入りを決めた 【Getty Images】

 王者ロジャー・フェデラー(スイス)といえども調子の悪い日はある。調子が悪ければイライラするし、肩に力が入る。力が入れば余計にショットは安定性を欠く。
 全米オープンテニス第6日(5日)に行われたフェデラーとレイトン・ヒューイット(オーストラリア)による男子シングルス3回戦では、フェデラーの不調のバロメーターであるフレームショットが目立った。ボールにスピンがかからず“ふかす”場面も何度かあった。アンフォーストエラー(自分からのミス)は、第1セットだけで23本。調子は明らかに悪かった。
 第1セットは、終盤のサービスダウンが響いて失った。第2セットは盛り返したが、5−3で迎えたサービスゲームでブレークバックのピンチもあった。第3セットも一進一退だったが、終盤のサービスブレークで何とか抜け出す。サイドブレーキを引きながら無理やりアクセルを踏み込むような試合運びだった。

 しかし、それでも最後は勝つのがフェデラーだ。グランドスラムでは21大会連続で準決勝以上に進出している。メジャー大会では絶対と言えるほど取りこぼしがないのである。その安定感を、アンディ・マレー(英国)は「彼のグランドスラムでの堅実さは、とてつもないね」と評価している。
 アンディ・ロディック(米国)は、まさにこの日の試合のように、競り合った場面でのフェデラーの強さを強調する。ウィンブルドンの決勝で敗れた後の記者会見で、それまではぶっきらぼうに質問に答えていたロディックは、フェデラーの強さについて聞かれると、そこだけは多くの言葉を費やして、こう答えた。
「彼のいろいろな面が評価されているけれど、困難な局面を切り抜けて勝った試合がどれだけ多いかということについては評価されていない。それは、彼があまりにも簡単にそれを成し遂げてしまうからだ」。

窮地を切り抜ける力も王者の証し

 その指摘は当たっている。相手を圧倒するだけがフェデラーの強さではない。分かりやすいのが今年の全仏だ。トミー・ハース(ドイツ)との4回戦、フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)との準決勝と、フェデラーは何度も窮地を切り抜けた。一つ一つ見ていけば、土俵際まで追い込まれる試合はいくらでもある。しかし、フェデラーはその局面を難なく切り抜けてしまう。それも確かにフェデラーの強さの一面なのである。
 ヒューイットに冷や汗をかかされたフェデラーだが、記者会見では涼しい顔で試合を振り返った。
「レイトンのような強い選手を相手に第1セットを落としたら、後は1ポイント1ポイントやるしかない。正しいプレーを選択し、ショットを修正しながらね。彼はベースラインでいいリズムでプレーしていたけれど、逆転できると信じるしかなかった。できるという保証はなかったが、徐々に調子は戻ってきたと感じていたし、それがいいプレーにつながった」

 ヒューイットに13連勝中であったことも、逆転を信じられた要因だろう。悪いなりに、どこか余裕があったのか。フェデラー自身は周りが思うほど「辛勝」とは感じていないのだろう。冷や汗をかいたのは、コートサイドで観戦していたわれわれだけだったのかもしれない。

<男子シングルス3回戦
ロジャー・フェデラー(スイス) 3−1 レイトン・ヒューイット(オーストラリア)
(4−6、6−3、7−5、6−4)

<了>

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