女子シングルスに相次いだ、番狂わせの理由
今季急成長した21歳のシュウェドワ。今大会でも、女子単2回戦で第5シードのヤンコビッチを破った 【Getty Images】
大会第4日は女子シングルスで番狂わせが相次いだ。センターコート第1試合で第4シードのエレナ・デメンティエワ (ロシア)が米国の新鋭、17歳のメラニー・ウダン(米国、世界ランキング70位)に敗れ、続く第2試合では第5シードのエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)がヤロスロワ・シュウェドワ (カザフスタン、同55位)に足をすくわれ、2回戦敗退となった。
ロシア、旧東欧圏の選手の活躍と「相乗効果」
デメンティエワを下したウダンは、予選を勝ち上がって出場したウィンブルドンで4回戦に進出している。このときはヤンコビッチを倒す金星を挙げた。まさにジャイアントキラーであり、若手が伸び悩む米国にあっては期待の星だ。
それにしても、ついこの間まで予選に出ていた選手たちが、トップ5選手を破るという事実をどうとらえればいいのだろう。確か6、7年前、女子テニスの“層の薄さ”が話題になった。ウィリアムズ姉妹など上位選手と下位選手とのギャップが激しすぎて、番狂わせが期待できなくなっていた。グランドスラムが本当に面白くなるのは準々決勝あたりから、という見方が定着していた。ところが、今の女子テニスはそこから180度転換し、いつでも番狂わせが起こりうる状況なのだ。
ひとつには、ロシア勢、旧東欧圏の選手たちがまとまって出てきたことが女子テニスの層を厚くしたのだと思う。また、フィジカルトレーニングが常識化したことで、体格の劣る選手もフィジカル面が向上し、全体の底上げがされたという見方もできる。
そして最も大きな要因は「相乗効果」だろう。ジュスティーヌ・エナン(ベルギー、2008年引退)がウィリアムズ姉妹を倒したころから、テニス界全体に「彼女にできたのだから私も」というムードが高まってきたのではないか。特に同国選手、同じような体格の選手の活躍は、「私にもできるはず」という相乗効果を生みやすい。その好例が、伊達公子が先導した、1990年代の日本勢だ。そうして、上位と下位とのギャップは一気に狭まり、今の混戦が生まれたのだと思う。
エナンが教えてくれたこと
このように、ほかの選手の活躍に励まされ、奮起させられる状況があちこちで生まれているのだと思う。
そのウダンは、こんなことを言った。「ジュスティーヌ・エナンは、世界一になるには180センチもの身長が必要なわけではないということを証明してくれた。彼女のプレーや動き、あらゆるショットを使い、コートを全部使うテニスができればいいと教えてくれたのよ」。
彼女もまた、先輩選手に励まされた一人だった。168センチの自分も世界一になれる、と信じて、今日もセンターコートに立ったのだろう。
私もできる――今日のシュウェドワとウダンの活躍は、また新たな相乗効果を生むかもしれない。
<女子シングルス2回戦>
エレナ・デメンティエワ(ロシア、第4シード) 1−2 メラニー・ウダン(米国)
(7−5、4−6、3−6)
エレナ・ヤンコビッチ(セルビア、第5シード) 3−6 ヤロスロワ・シュウェドワ(カザフスタン)
(3−6、7−6、6−7)
<了>
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