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中村俊輔の地元スペインでの評価とは
監督、選手らの言葉から読み解く

もうナカムラが良い選手なのは分かっている

新スタジアムのこけら落としであるリバプール戦で先制点をアシストした中村(中央)
新スタジアムのこけら落としであるリバプール戦で先制点をアシストした中村(中央)【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

「DFのクリアボールがナカに渡り、その瞬間、彼が僕を見てくれた。彼のパスなしではこの得点は生まれなかったよ」

 中村俊輔からのアシストパスを受けて先制点を決めたエスパニョルのルイス・ガルシアは試合後、得点シーンをこう振り返った。


 新スタジアムのコルネジャ・エルプラットのこけら落としとして2日に行われたリバプールとの親善試合で、エスパニョルは3−0と快勝。特に前半はエスパニョルがデ・ラ・ペーニャ、中村のキープ力を生かしてボール支配率を高め、内容面でリバプールを圧倒した。左サイドハーフとして先発した中村は、前半のみの出場とはいえ、良いパフォーマンスでホームのファンに好印象を与えた。


 試合後、中村のアシストとパフォーマンスについて聞かれたエスパニョルのポチェッティーノ監督は、「いつも言っているようにナカムラは素晴らしい選手だ。素晴らしいアシストをした。ただ、彼1人を褒めるのではなく、選手全員を褒めるべきだろう。チームとしていい状態にあるし、出場した選手全員がいいプレーをしてくれた」と語っている。会見で日本人記者から毎度、毎度「ナカムラはどうですか?」と質問されるのに飽き飽きしている様子と、発言にあるように「もうナカムラが良い選手なのは分かっているよ」という態度が見え隠れするコメントだった。

ナカムラはリーガで通用して当たり前

 裏を返せば、監督もチームメートもナカムラの実力は日々の練習を通じてよく分かっており、リバプール戦で先制点をアシストしたからといって特に驚きではないのだ。それは、地元の記者にとっても同じで、通信社EFEでエスパニョルを担当しているアンドレス・メレージョ氏は淡々とした表情で「(この日のナカムラは)チーム同様に良い試合をしたと思う。先制点のアシストはもちろん、オフサイドになったタムードへのスルーパスからも彼の才能を見ることができた。現段階では開幕戦に先発する可能性は高い」と話してくれた。

 翌3日付の『ムンド・デポルティボ』紙では新加入選手の評価欄に「(中村は)素晴らしい才能の一部を披露してくれた」という記述があったが、中村の活躍を騒ぎ立てるような記事や論調は他紙も含めてなかった。


 このように現場、地元が冷静に反応する理由は2つあると推測する。1つは、この試合がまだ開幕前の親善試合であること。それは、翌日の地元メディアで2得点を挙げた新加入のベン・サハルの扱いが少なかったことからも分かる。もう1つは、「ナカムラならこれくらいやれて当然」という認識があるからだ。


 われわれ日本人はここ数カ月、「中村はリーガで通用するのか?」というやや懐疑的な命題を持ちながらエスパニョルや中村の動向に気を配っているが、そんなことを考えているスペイン人はいないと断言できる。というのも、中村はすでに欧州で実績を残しており、何より世界最高レベルのチャンピオンズリーグ(CL)にコンスタントに出場し、活躍している。スペインでも、2006−07シーズンのCLでのマンチェスター・ユナイテッド戦で決めたFKは有名で、中村のエスパニョル移籍が決まった時には、そのゴールがこれでもかというほど紹介されていた。


 つまり、スペインではCLレベルで通用する選手がリーガで通用しないわけがないという論理が成立しているのだ。だから、現場も地元も「通用して当たり前」という認識を持っていて、それが監督から記者までの冷静で、日本人にとってはどこか物足りない反応につながっているのだ。

小澤一郎
小澤一郎
1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学教育学部卒業後、社会 人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年に帰国。日本とスペインで育 成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。 多数の専門媒体に寄稿する傍ら、欧州サッカーの試合解説もこなす。著書に『サッカ ーで日本一、勉強で東大現役合格 國學院久我山サッカー部の挑戦』(洋泉社)、『サ ッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カ ンゼン)、『スペインサッカーの神髄』(ガイドワークス)、訳書に『ネイマール 若 き英雄』(実業之日本社)、『SHOW ME THE MONEY! ビジネスを勝利に導くFCバルセロ ナのマーケティング実践講座』(ソル・メディア)、構成書に『サッカー 新しい守備 の教科書』(カンゼン)など。株式会社アレナトーレ所属。

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