ロディックの頑張りが生んだ、ファンの記憶に残る名勝負=ウィンブルドン・男子シングルス決勝

秋山英宏/WOWOW

ロディックを襲った“サドンデス”の重圧

優勝カップを掲げるフェデラーに拍手を送るロディック(左) 【Getty Images】

 試合後の会見で「体力面は問題なかった」と話したロディックだが、体力と集中力は切り離して語れない。フェデラーのサーブで始まった最終セットは、ロディックが常に1ゲーム追いかける形となった。「行くしかなかった。1ポイント1ポイントだと思っていた」というロディックだが、サービスダウンすなわち負けという“サドンデス”の重圧が、ボディブローのように体力と集中力を奪っていったのではないか。

 とうとうフェデラーにマッチポイントが訪れた。最後もロディックのフォアハンドがフレームショットとなり、コートの外へ飛び出していった。このボールと一緒に、2003年の全米オープン以来2つ目のグランドスラムタイトルは、ロディックの手から逃げていった。試合後の会見で「今日の試合をどう表現する?」と聞かれたロディックは、ひとこと、こう答えた。「負けたよ」。

ロングマッチを予想したフェデラーの戦略

 フェデラーのサービスエースは50本、第5セットだけで22本に達した。ただ、そのフェデラーもレシーブゲームでは受け身だった。ロディックのサーブももちろん効果的だったのだが、ブロックリターンが中心で、相手に脅威を与えることができなかった。それが最後の最後までサービスブレークができなかった一つの要因ではなかったか。

 負けられないという思いが、受け身のプレーをさせたのかもしれない。とはいえ、その中でフェデラーが見せた自在さはさすがだった。決勝進出は7年連続。文字通り自分の庭のようなウィンブルドンだけに、肩の力が抜けて、意図した通りのショットを連発した。無理をしない戦い方は、まるで4時間を超えるロングマッチを予想していたかのようだった。

「僕はウィンブルドンの決勝での戦い方を知っているつもりだ。決勝での5セットマッチの戦い方をね。でも、今日はアンディが素晴らしいプレーをしたので、大変な試合になった。最後までブレークできなくてイライラしたし、まったく試合を支配できなかったけれど、その分、今の満足感は大きいね」

 フェデラーは、いつものように笑顔を絶やさず、穏やかに語るのだった。

<了>

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