伝統の大会に刻まれた「ウィリアムズの時代」=ウィンブルドン

秋山英宏/WOWOW

B・J・キングの記録まであと一勝

6年ぶり3度目の優勝を果たした妹セリーナ(左)と準優勝の姉ビーナス 【Getty Images】

 女子シングルスは、セリーナ・ウィリアムズ(米国)が6年ぶり3度目の優勝を飾った。姉ビーナスとの決勝は、7−6(3)、6−2のストレート勝ち。第2セットは2−2から4ゲームを連取し、1時間28分で決着をつけた。4大大会通算では11個目のタイトルとなり、ビリー・ジーン・キング(米国)の12勝(史上6位タイ)にあと一つと迫った。

「信じられないわ。本当に素晴らしい。B・J・キングは私のアイドル。12個目のタイトルを取って、彼女のレベルに到達できたらすてきでしょうね」とセリーナ。ウィンブルドンで5度優勝、今大会は3連覇がかかっていたビーナスを破っての優勝に「この優勝プレートを手にしているのがビーナスではなく私というのはおかしな感じね」と笑った。

 圧倒的な強さで勝ち上がってきたセリーナだったが、準決勝は苦戦した。エレナ・デメンチェワ(ロシア)と6−7(4)、7−5、8−6、2時間49分の熱戦。第3セット第10ゲームでは相手にマッチポイントを握られるなど、まさに薄氷の勝利だった。ただ、マッチポイントをしのいでの逆転勝ちはこれが通算9度目。常に圧勝のイメージのセレナだが、粘り勝ちも十八番なのである。決勝でも、第1セットのタイブレークで勝負強さを発揮した。

10年間タイトルを独占してきた二人

 ウィリアムズ姉妹がグランドスラムの決勝で対戦するのはこれが8度目になる。クリス・エバートとマルチナ・ナブラチロワ(ともに米国)は4大大会のタイトルを懸けて14度戦っているが、それに次ぐ多さだ。ただ、エバートとナブラチロワは数多くの名勝負を演じたが、姉妹はまだテニス史に残るような好試合を見せてくれてはいない。

 やはり、二人は姉妹なのだ。二人の直接対決では、他の選手との対戦で見られるような鋭い眼光が見られない。ボールのやりとりは激しく、スコアは競っても、生きるか死ぬかの戦いにはならない。姉妹である限り、それは仕方のないことなのだろう。二人そろって決勝に勝ち上がることで、トーナメントは「ウィリアムズ」のものになる。直接対決の結果は、ボーナスのようなものなのかもしれない。

 ともあれ、われわれは今回も二人のパフォーマンスを堪能した。まさにアスリートの動き、そして、この二人にしか生み出せない、強いショットの連続だった。二人は、この10年、その力強さでウィンブルドンのタイトルを独占してきた。2000年から今大会まで、10大会のうち8度まで、優勝プレートは姉妹のどちらかの手に渡った。決勝での直接対決も今回で4度目。決勝のスコアボードに「ウィリアムズ」の名前がなかったのは、アメリー・モレスモー(フランス)がジュスティーヌ・エナン(ベルギー)を破った06年の決勝だけだった。

 この10年は、間違いなく「ウィリアムズの時代」として、ウィンブルドンの歴史に刻まれることだろう。

 <了>
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