桜井“マッハ”速人 これがS級のトレーニングだ!
マッハが取り組んでいる自転車トレーニングに迫る 【ファイト&ライフ】
ではS級のトレーニングとはどんなものなのか? マッハ本人に聞くと「今は自転車と草刈り」との答えが……。
最近、ブームとなっているロードサイクリングが格闘技をやる上でどんな効果をもたらすのか?
トレーニング仲間のプロロードレーサー松尾修作氏を交え、自転車トレーニングの効果と“草刈り”について聞いてみた。
自転車は本当に凄い、スーパーマンになれる道具
マッハ トレーニングとして始めたのは青木戦の前くらいからかな。でも5年前から自転車は趣味で楽しく乗っているんですよ。
――なぜ始めたんですか?
マッハ 楽しいからです。子供の頃にママチャリで競争したりするでしょう? あれが面白くて好きだったんですよ。子供の頃は遅かったんですけれどね。
――今は週に一度ペースですか?
マッハ どこかへ移動する度に自転車に乗っています。巣鴨から茨城の自宅まで帰ったこともありますよ。
――どういう強化を目的としてやっているんでしょう?
マッハ まずスタミナとか心肺能力を高めるため。やっぱり“人間力”を出すためには肉体が強くないといけないので、フィジカルを高める目的があります。自転車のプロはずっと同じ力の出し加減で俺よりもっと速く長く走り続けられるんですよ。それはどうしてかってプロに聞いたら、自転車のプロの人たちは乳酸を分解する能力が他スポーツの競技者よりも優れているそうなんです。だからそれを勉強して、格闘技で活かせたら15分間フルにダッシュ出来るんじゃないか、と。だって乳酸が溜まらないんだから。疲れない身体を作れるってことですよ。格闘技でそれが出来る人はまだいないでしょう? 乳酸が溜まって動けなくなるんだから、乳酸が溜まらないような身体になったら凄くないですか。
――身体の内部から鍛えていくんですね。
マッハ あと、自転車の選手はインナーマッスルが発達しています。見た目は細いですけれどパワーがあったり、そのパワーを持続させたりすることが出来る。本当に凄い、スーパーマンになれる道具ですよね。一人でやっていた時はそういう効果があるなんて全然知らなかった。ただ楽しいだけで。プロに教えてもらって気付いたんです。そうですよね?
松尾 乳酸に対しての力が付くのと、心肺機能を高めます。身体の関節などに余計な負担をかけずに心拍数を上げられるので、スタミナを付けるのにもいいと思います。
――乳酸を分解する能力が付くとはどういうことなんですか?
松尾 負荷をかけると乳酸が出て来ますよね。乳酸が溜まってくるとパフォーマンスが落ちてしまいますが、それをエネルギーに変えられる力が付いてくるんです。例えば普通の人なら50〜60kmで走っていたら乳酸が出てきて疲れてしまうんですが、プロなら乳酸は出るんですけれどそれをエネルギーに変えてしまうので50kmのままずっと走ることが出来るんです。マッハさんはその能力を格闘技に活かして、最初のパフォーマンスのままずっと試合が出来ればラクなんじゃないかと考えたわけです。
マッハ あと減量にも凄くいい。普通、カロリー計算で体重を落とすでしょう。でも1日で3000〜4000カロリーを消費させるのって格闘技の練習では無理なんですよ。走っても無理。自転車で長い時間だらだらと走っていた方が落ちます。今日も一気に2000カロリー消費しました。自転車って自分の用途に合わせていろんなことが出来るんです。
この日もマッハは巣鴨〜荒川土手のコースまで約80kmを疾走 【ファイト&ライフ】
マッハ 俺の自転車にはGPSとかも付いていて、何百万もかかっているんですよ。いわばコンピューター車なんです。だから自分の体調とか全部分かるんです。
松尾 SRNというサイクルコンピューターがあって、パワーに対して心拍数が普段と比べてどれだけ上がっているか下がっているかで、いま心臓がどれくらい疲れているかとか、いま疲れが溜まっているなとかがグラフで出て来るので全部分かるんです。パソコンに今日のトレーニングデータをダウンロード出来るので、記録をとることが出来ます。
マッハ あんな自転車一台で凄いハイテクなんです。
――長距離だけではなく、急な坂道を自転車でダッシュして登るトレーニングもしていると聞きました。
マッハ それ、俺はあまり好きじゃないんですよ。
松尾 例えば200メートルくらいの坂道があって、登るのに100%の力を出し切るんです。そうすると心臓に負担がかかる。そこである一定の時間を置いて同じことをするんです。インターバルトレーニングと言うんですが、乳酸に対しての力を付けたり、心拍数が上がっても体が動くように慣らします。
マッハ 格闘技の練習って自転車に例えたら坂道トレーニングなんですよ。それを基本的に毎日やっているので、ある意味すでに疲れちゃっているんですよね。その繰り返しでこういう身体になっているわけだから、自転車では違うことをやりたいなと思うわけです。富士山に登ったり。
――ブログに、吉田秀彦選手たちと自転車で富士山に登った時のことが載っていましたね。
マッハ さすがに巣鴨からは行けないので、富士山まで車で行って5合目まで自転車で上がったんです。酸素が薄いとかいうよりも坂がきつかったなぁ。自転車っていろんな練習の仕方があるんです。俺みたいに三十半ばまで格闘技をやってる人間は、ただ同じことをずっとやっていたら身体が壊れちゃいますよ。ランディ・クートゥアーもボートや自転車を漕いだりいろいろやっているじゃないですか。トレーニングの仕方を考えていかないと、ただガムシャラにやっても怪我とかが怖い。人間の体調って周期があるんですよ。これはトライアスロンのやり方なんですが、1カ月の内に1週間だけここに試合を入れてはいけないという周期があるんです。激しいトレーニングをやっている人間の話ですけれどね。トライアスロンは究極に激しいから。でも、格闘技もそれくらい激しいと思うんですよ。試合は15分ですけれど、トレーニングにあてる時間が凄いじゃないですか。だからそういうことも頭に入れてやらないといけない。マフェトン理論っていう有酸素系運動の理論なんですけれどね。
(以下、『Fight&Life vol.13』に続く)
[取材・文_熊久保英幸(GBR) 撮影_寺澤有雅]
【ファイト&ライフ】
6月20日(土)発売!!
『アイアンマン』7月号増刊 定価880円
(株)フィットネススポーツ発行
TEL 03−5653−1322
<コンテンツ>
●桜井“マッハ”速人 これがS級のトレーニングだッ!
●池本誠知×田中昌彦 総合格闘技に役立つクリーチャートレーニング
●所英男×金原弘光 所英男、復活の裏に名参謀 金原弘光の姿あり!
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