王者ながら再起戦のパブリック WBC指名挑戦者相手に打撃戦は必至=WBC・WBO世界ミドル級タイトルマッチ
昨年10月に元世界ミドル級チャンピオンのバーナード・ホプキンス(米)とノンタイトル戦を行い12回判定負け、これが再起戦となるパブリック 【(C)NAOKI FUKUDA】
パブリックは35戦34勝(30KO)1敗という高いKO率を誇るが、一発の強打で沈めるタイプではなく執拗(しつよう)なコンビネーションで仕留める連打型の選手といえる。自身の被弾も少なくなく、そのあたりが課題であると同時にこの選手の魅力でもある。常にスリルに富んだ試合をする点が人気を呼んでいるのだ。今回は地元での凱旋(がいせん)防衛戦ということもあって、前売りチケットは20分で5000枚が売り切れたと伝えられる。
そんなチャンピオンの地元に乗り込むルビオは「毒」という物騒な異名を持つ28歳の強打者。長いことS・ウェルター級で戦ってきたが06年11月からミドル級に転向。以来、敗北とは縁が切れ9連勝(7KO)と好調だ。昨年10月にはパブリック対ホプキンスの前座に登場、WBC2位のエンリケ・オルネラス(メキシコ)に2対1の判定勝ちを収めて今回の指名挑戦権を手にした。48戦43勝(37KO)4敗1分と、こちらも高いKO率をマークしている。185センチの長身から繰り出すパンチには切れがあるが、自身も耐久力に課題を抱えている。
賭け率は8対1で開催地出身のチャンピオン有利と出ているが、これは期待度も含めた数字とみるべきだろう。初黒星後の再起戦であること、ルビオが強打者であることなどを考えると、パブリックにそこまでの大きなアドバンテージがあるとは思えない。ルビオが臆せずに序盤から思い切った攻撃を仕掛けて出ると、番狂わせの可能性は膨らむのではないだろうか。
パブリック86パーセント、ルビオ77パーセント。ともに高いKO率を誇るだけに、ジャッジの手を煩わせることなく試合が終わることだけは保証できそうだ。
<ミドル級トップ戦線の現状>
WBA:フェリックス・シュトルム(ドイツ)
WBC:ケリー・パブリック(米)
IBF:アルツール・アブラハム(アルメニア/ドイツ)
WBO:ケリー・パブリック(米)
一時はパブリックの評価が群を抜いていたが、ホプキンスに完敗を喫したことで変化が生じた。パブリックの株が下落したのと反比例して上昇したのがIBF王座を8度防衛中のアブラハムだ。まだのるかそるかの大勝負を経験してはいないが、この豪腕王者に対する評価はパブリックに肉薄してきている。米国への本格進出が計画されているが、そのときがなんとも待ち遠しいものだ。
シュトルムは4月に佐藤幸治(帝拳)との防衛戦が決定している。竹原慎二以来14年ぶりにアジアにミドル級の覇権がもたらされるのか、こちらも興味深いものがある。
若手ではジョン・ダディ(アイルランド)に注目したい。実力的にはまだまだ安定してはいないが、人気はすでにチャンピオン級だ。
WBO世界ウェルター級王座決定戦 ミゲール・コット対マイケル・ジェニングス
つい8カ月ほど前までコットは誰もが認めるウェルター級の主役だったコット 【(C)NAOKI FUKUDA】
再起戦が英国の伏兵との王座決定戦
つい8カ月ほど前までコットは誰もが認めるウェルター級の主役だった。ところがアントニオ・マルガリート(メキシコ)にパワーで捻(ね)じ伏せられ、栄光の座から陥落。と思ったら、そのマルガリートもシェーン・モズリー(米)の前に完敗。ウェルター級トップ戦線は混沌(こんとん)とし、コットはあっという間に元チャンピオンという肩書に変わってしまった。
マルガリート戦での敗北がコットにとって大きな痛手となったのは間違いない。「試合から8週間(約2カ月)は何もやる気が起こらず、精神的にも肉体的にもキツかった」とコット自身が明かしているほどだ。そんな矢先にWBOチャンピオンだったポール・ウィリアムス(米)が上のクラスに転向。コットには空位の王座決定戦の話が舞い込んだ。「気持ちを切り替えてリングに戻る決意をした」とコットは話す。
マルガリート戦を見るかぎり、コットのボクシングそのものに衰えや不足していたものは感じられなかった。あの試合に関しては相手がその上を行ったということで片付けるしかあるまい。不安があるとすれば、再起戦が即世界戦という点か。本人がいうような心身のダメージをどこまで払拭(ふっしょく)しているか、そのあたりが最大のカギのように思える。
対戦相手のジェニングスはコットより3歳年長の31歳。これが初の海外遠征だ。兄ふたりが病気や事故で亡くなり、親友も事故で亡くすなど悲劇の体験も多いらしく、それをパワーに昇華させて番狂わせを起こすと意気込んでいる。アマチュアで57戦(52勝5敗)を経験後99年5月にプロデビューし、これまで35戦34勝(16KO)1敗というレコードを残している。「スピードと頭をつかったボクシングには自信がある」とジェニングス自身は話す。身長はコットを4センチ上回る177センチ。
仮にスピードとテクニックは五分としても、パワーや大舞台の経験、駆け引き、スタミナ、耐久力などでコットが勝っていることは誰もが認めるところだ。総合力の差は決して小さくないとみる。15対1の賭け率ほどではないにしても、コット有利は動かしがたい。自身の調子をみながらペースを上げていくと想定すると、中盤あたりでヤマがくる可能性が高い。
ミドル級4回戦 マット・コロボフ対コーリー・ジョーンズ
「明日のチャンピオン」の強打に注目
北京オリンピックこそ不覚の2回戦敗退だったが、アマチュア時代のコロボフの世界的評価は実に高いものだった。欧州選手権、世界選手権(2度)、ワールド・カップ、世界軍人選手権……獲得したタイトルは数え切れないほど多い。オリンピックで敗退した際も、2回戦であるにもかかわらずAP通信が番狂わせとして「コロボフ敗れる」のニュースを打電したほどである。
オリンピックの3カ月後にトップランク社と契約してプロデビュー。テクニックと左右の強打を武器に、これまで3連続KO勝ちを収めている。1月にはアントニオ・マルガリート対シェーン・モズリーの前座に出場して強打を披露するなど、早くも注目される存在となっている。
くしくも今回の対戦相手ジョーンズも豊富なアマ経験を持っている。特に96年、世界ジュニア選手権に出場した実績が光る。このときは1回戦で現WBC世界ライト・ヘビー級チャンピオンのアドリアン・ディアコヌ(ルーマニア)に敗れているが、その後も04年のアテネ・オリンピック米国予選に出場するなど、長いことトップアマとして活躍していた。アマ戦績は218戦198勝20敗。コロボフの310戦300勝10敗にはおよばないものの、見事な戦績だ。05年に27歳でプロ転向してからは9戦4勝(1KO)4敗1無効試合と不振だが、地力はあると思われる。
早くも「明日のチャンピオン」として期待を集めるコロボフ。その強打に注目だ。
■WOWOW「エキサイトマッチ」
万能型の強打者コット、注目の再起戦!
<放映日時>
191ch:3月30日(月)よる8:00
(再)191ch:4月3日(金)午前5:00、193ch:4月3日(金)午前11:15
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ